明けぬ獄夜に縋る糸~少女の愛が届かない 異世界繋がる現代暗躍復讐譚~

三十三太郎

1章 蠢く山と烈剣姫

慟哭

 失った。もう誰もいない。


 男が少女の頭を抱え、うめく。

 

 黒牢は破られ陽は登れども、隣に皆がいない限り約束は果たされず、夜は明けない。


 「この子がこんな目に遭っていいわけがない! あんな終わり方があっていいはずがない! 皆が奪われていいハズがない!」


 認められない。許せない。

 俺から皆を奪った世界も、誇りを捨てて悪逆に逃げたあいつらも。


 「奪い返してやる。死から!世界から! 奪い返してやる奪い返してやるっ奪い返してやるっっ!!」

 

 誓う。簒奪さんだつへの復讐を。

 たとえどんな手を使っても。

 あいつらと同じ場所に堕ちてもいい。

 

 いやきっと、俺はもう地獄に落ちているんだ。

 この子が信じてくれた善性こそが、自身をヒトたらしめる最後のよすがであったのだから。


 「皆と約束したんだ。全員で朝日を見ると……必ず生きて帰ると。その約束を果たす為に。その為だけに」


 男の、祈りすがるように暗闇を走る、夜が始まったのだった。


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