魔王と勇者の日本アイドル生活~転生したら可愛くなったので、アイドルしてみるか~
深月
第一章 夏芽と秋菜
第1話 これが走馬灯なわけないだろうが
ここは、魔王城。かつて多くの勇者や人間が散っていった場所だ。
「魔王様!サンライズ・サマーチェが現れました!」
「ゴホッ……通せ。せめて最期くらい、奴と話す機会をくれんか。俺も、奴とは今まで一度もろくに話したことすらなかったからな」
俺の住む世界では、人間の寿命は二百歳だったり、魔族や獣族など、俗に言う人外が少なからずいたりする。そしてその、魔族だとかを統べる王がこの俺、魔王アンラウス・ラヴェスタだ。……今はもう死ぬ寸前なのだがな。死因は何か?まぁ、簡単に言うと病だ。如何せん、俺の国ではまだ医療が言うほど発達していないためにもう俺は死ぬ運命を受け入れるしかないのだ。
そして、奥から金髪の男が歩いてきた。この男は、サンライズ・サマーチェ。今は剣こそ携えていないが、勇者だ。俺と五十年近い因縁を持つ、な。
「……随分と弱ってるな、魔王」
「仕方がないだろう。この国は医療技術の発達が遅すぎるからな。そして今このタイミングで俺も死ぬと来た。もうこの国に未来は無いと言っても過言ではないだろう。もう好きに滅ぼせ」
「生憎と、それは僕の流儀に反するからな。勝つまでは滅ぼしたりはしないさ。……撤収だ、引き返そう。……次来るまでには回復しといてね、魔王」
「フン、どこまでも腹が立つ奴だ……ゴホッ。だが、今日はお前の情に感謝をしよう」
とことん気に食わない男だ。敵にまで情けをかけるとはな。だが、おかげで猶予を得た。そうだな、最後にまた本でも読むとしようか。
……それから二日後。俺の様態はみるみる悪化していき、もって今日明日までになった。……いや、今日はもう寝るからあと一日か。そうだな……明日、最期に何をして逝こうか。
……いや、明日なんてなかったな。体が感じとったのだ。もう、迎えが来たのだと。そして、俺の目は次第に閉ざされていき、開くことができなくなった。
…………
「みんなー!!!今日は来てくれてありがとー!!私達と一緒に、最高の時間を楽しもうねー!!!」
目を閉じた次の瞬間、大きな声が聞こえてきて、何故かまだ開けれる目を開ける。
……な、なんだこれは!?こ、これが俺……なのか!?この歌って踊ってる女が、俺!?
いやいやいやいやないないないない。この女は俺では無い。
これは何かの夢だ。そうだ、夢だ……いや違う!夢ではない!そうだ、俺は死んだのだ!
にしても……夢ではないならなんなのだ、一体……走馬灯か?いや、よくよく考えてみろ。走馬灯とは、過去の記憶が流れ込んでくる現象を指すものだ。俺の記憶にこんなものは一切ないぞ!?
「みんなー!!愛してるよー!!」
これが……
「これからも、応援よろしくねー!!」
走馬灯なわけ……
「それじゃあ一曲目、あげてくよ!「ニジノカナタ!」」
「ないだろうがぁぁぁぁ!!!!」
……ん?なぜだ、なぜ俺は声が出せる?なぜ体の感覚がある?……確か俺は死んだはずでは?
……あ、目も開けた。
「どこだ、ここは……?幽界……では無さそうだな。」
今は夜なのだろう、辺りがとても暗くて見えやしない。だが、うっすらと謎の光が照らして、辺りに生えている木々や俺が今よくわかんない場所に座っている事は見えた。……何故俺は座っているのだ?何を待っているのだ?
「ん?誰か来るな?」
遠くの方から、少しづつ足音が聞こえてきた。誰か来たのだろう。話しかけてくるか……はたまた普通にスルーされるか。スルーしてくれたほうが助かるのだが……。
「あれ?こんな所に女の人がいる。珍しいな、こんな辺鄙なところに。……君、どうしたの?」
足音はだんだんと近づいてきて、やがてうっすらと、女の顔が見えた。
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