第62話 同性だから言い合えること
9月9日月曜日。夏休み明けとは思えない濃すぎる1週間が終わった。
担任によれば色々と騒ぎになった楓は家庭の事情ということでしばらく休みになるらしい。
そしてそれは桜も同じ。ここしばらく燈が心配そうにしていたが詳細は全てが解決した後で話そうということになった。
そんな昼休み。俺は好本とふたりで教室で昼食をとることになっていた。
「大丈夫かな姫崎さん……」
「まぁ……殴り合いにまではいかないだろ。きっと」
本来なら俺はいつも通り生徒会室を占拠して昼飯の予定だった。好本も姫崎と食べるそうだったのだが、栞によって姫崎は生徒会室まで連行され、今まさにバチバチのバトルが繰り広げられていることだろう。
「で、実際どうなんだ姫崎とは」
「ヴッ……それは…………」
弁当をつつきながら姫崎との関係を聞いてみる。あれ以来ベタベタされてるから何かしら進展がないのかと気になってた。
「実は…………土曜日……遊びに行ったんだけど……」
「え、マジ?」
俺の反応に好本は照れながらも首を縦に振った。でも表情自体はあまり良くない。もしかして失敗したのかと思っていると、好本は小声で俺に相談してきた。
「…………ホテル……連れてかれて…」
「……おう」
進展が早すぎるだろエロゲか。あ、エロゲだ。
「………………井伏くんには、分かんないかもしれないけど……」
「…………おぅ」
「……勃たなくて…………」
「おぅふ…………」
辛いな。それは辛い。分かるぞ。分かる。俺には分かるよ。
「姫崎さんはすごい魅力的で………付き合ってもないのに……僕なんかがって…………思ったらもう無理で……」
「…………とりあえず一歩ずつだな。こればっかりは仕方ない」
「…………だから井伏くん。いや師匠。僕にテクニックを……教えてください………」
テクニックと言われても……井伏零央ならともかく俺にはそんなもんはないからな。結局は話し合いだ。最初なんてどんだけ燈に痛い思いをさせてしまったことか。
それに…………
「俺の話になると必然的に七海とリンクするけど……耐えられるか?」
「っ………………ごめん耐えられない……」
「……じゃあやめとこ。俺から言えるのは話し合いだ。それしかない」
「はい…………師匠……」
こういう話はやっぱ男だけじゃないと出来ない。七海や姫崎が居ない今がチャンスというわけだ。
ちなみに七海は乃愛にどこかに連れてかれた。燈も会いに来る気配がない。なんやかんや皆それぞれの青春を送っているのだろう。良いことだ。
――――――
昼休み。生徒会室がお取り込み中だったので、零央センパイの教室に突撃しようとしたら七海センパイを連れていた水上先輩に捕まってしまった。
そのまま屋上に連れていかれ、3人で昼食を食べることになってしまった。
「単刀直入に聞くんだけど……」
気まずい空気のまましばらく過ごしていると、水上先輩がようやく決心したのか、顔を赤らめながら尋ねてきた。
「…………井伏くんとのエッチって気持ちいいの?」
「「ブフッ……!!」」
あまりに直球な質問にボク達は揃って咳き込んでしまった。水上先輩は申し訳なさそうにしながらも、グイグイと更に質問してきた。
「いやほら………ふたりとも…付き合ってるわけじゃん?私も彼氏とそういうこと何回かはしたんだけど…全然気持ち良くなくて……ふたりはどうなんだろって…やっぱ違うのかなぁって……」
「ちょっと待ってくださいね先輩!一度会議挟みますんで!!」
ボクは七海センパイを連れて少し離れ、緊急会議を開いた。
「センパイ……ボクすっっっごい嫌な予感するんですけど…………」
「私も………ふたりともこんな気持ちだったんだね…」
「そんなことより…あのふたりって接点あるんですか?」
「無いはずなんだけど………だって夏休み前は話してなかったし……」
「じゃあなんで……」
「…………興味本意とか?」
「ぐぬぬ………」
確かにそういう話もしたい年頃なのは分かる。ボク達だってたまにしてるし。
でもなんか胸騒ぎがする!明らかにただならぬ気配が漂ってる!!
しかもまたおっぱいだし!!ボク以外胸がおっきすぎる!!なんで!!!
「…………ここはボクに任せてください。良い感じに乗りきってみせます」
「燈ちゃんがそう言うなら…お願いします」
会議の末、適度な感じで誤魔化すということになり、ボク達は水上先輩の元へと戻った。
「えー…こほん。ま、まぁ…気持ちいいですけど………優しいだけっていうか…きっと水上先輩の思ってるような事じゃないですよ!普通です普通!!」
「へー……そっか。優しいんだ…ふーん」
あっれーー???すっごい満面の笑みなんだけどぉ???
「ちょっと燈ちゃん……すごい好感度上がってそうな顔してるんだけど……」
「いやだって……優しいくらい普通じゃないですか………先輩も彼氏いたことあるって言うし……」
「私もそう思うけどさぁ……」
「…………そう言うなら七海センパイが答えてくださいよ」
「……任せて」
こそこそ話を済ませ、今度は七海センパイが質問に答えることにしてくれた。
「わ、私は………初めてはすっごい痛かったけど……少しずつ…………慣らしてくれて…えへへ…………」
なんか惚気始めたんだけどぉ!!?
「そ、それで!?」
こっちもなんか食いついてるし!!!
助けて栞さん!!!敵が増えてるよぉ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます