第45話 エロゲ主人公は取り戻したい
9月2日月曜日。今日からまた学校に通う日々が始まる。1学期の後半はあの男のせいで何も楽しくなかった。だが今はどうだ。良い彼女もいるし、燈や栞達ともまた話すことが出来るだろう。あわよくばあの男がまた学校に来なくなってくれていればそれが一番いい。てかなんで未だに退学になってないんだ。
……まぁもうアイツのことはどうでもいい。とりあえずは七海と仲良くなるとしよう。初めて七海と図書室で話した時は目茶苦茶盛り上がった。それ以来会話したことはないが、七海が話している男子なんてクラスの陰キャ以外に見たことがない。それなのに俺と初対面で話した時はあれだけ嬉しそうだったということはきっとそういうことだ。
それに燈のインスタに上がっていた水着の写真的にかなりデカイ。もし乃愛と別れてしまった時の保険としては最適だろう。チョロそうだし乃愛よりも色んな事をアッサリOKしてくれそうだ。
「……なぁ乃愛。今日は?」
「…………バイト」
七海との行為を想像してしまい、ムラっときてしまった俺は隣を歩いていた乃愛に午後の予定を確認した。だが乃愛の反応は冷たく、スマホを見ながら返事をされてしまった。
「またバイトかよ…シフト入りすぎじゃね?」
「お金欲しいの。どっかの誰かがホテルホテルうるさいから」
「……だって家だと桜が居るからヤりにくいだろ?」
「ヤんなきゃいいだけじゃん」
とかなんとか言っているが俺も最初の頃より上達してきてはいる。乃愛も喘ぐようになったし、きっと照れ隠しだろう。
「……………昔はもっと優しかったのに」
「ん?なんか言ったか?」
「なんにも。バイト頑張ろって」
朝から少し不機嫌そうな乃愛。バイトがそれほど大変なのだろう。乃愛ばかりに負担を強いるのも良くないし、俺も簡単なバイトでも探そうかな。乃愛と同じ飲食は大変だろうから論外として……このご時世ちょっと探せば簡単なのは沢山あるはずだ。
そうして乃愛と話しながら学校まで歩いていると、始業式の日だというのに校門の前で栞が挨拶活動をしていた。
「おはよう」
「おはようございます。朝から頑張ってますね」
「……あ、あぁ。残り少ない期間でやれることはやろうと思ってな」
栞とはあの日以来話せてなかったから久しぶりに話せて良かった。井伏のせいで下がってしまった好感度をあげるためにもこういう細かい所で声をかけてアピールしておかなくては。
「……楓。話してないで早く行こ?」
俺と栞が話しているのに乃愛は嫉妬したのか、俺の手を強引に引っ張った。なんだかんだ言いつつやっぱり俺のこと好きなんだろうな。
そうして俺達が教室へ向かうと、クラスの女子が集まっていて盛り上がっていた。その輪の中心に居るのは………え?…あんな美人うちにいたか?
「……あれ誰だと思う?」
「木下さんじゃない?イメチェンしてるけど雰囲気一緒だし」
乃愛に確認してみると七海ではないかという答えが返ってきた。確かによくよく見てみると胸がデカいし、沢山の女子に囲まれておどおどしてる様子が七海っぽい。今のところ周りに男子はいない。チラチラと見ている奴もいるが恐らくは勇気が出せないのだろう。件の陰キャ男子は…………
「あのさ、推しって…誰?」
「………結局セリア」
「………………セリヨミ?」
「……ヨミセリだろ」
「っ!!……なるほどね?」スッ……
「……分かってんじゃねぇか」グッ……
教室の端っこで井伏と意味の分からない会話をしながら握手まで交わしている。ていうかさも当たり前のように教室に井伏がいやがる。しかも髪を黒くしてるし。今更そんなので真面目ぶっても変わるかよ。
だが敵ともいえるこのふたりが側に居ないのは好都合だ。少しだけ混ざるとしよう。
「おはよう皆。朝から何話してんの?」
「あ、おはよう!いやさ!木下さんめっっちゃ可愛くない??」
まずは周りにいたクラスメイトに声をかけ、あたかも七海目当てではないことを演出する。
「えへへへ………」
女子に囲まれて褒められまくっている七海は顔中の筋肉が緩みに緩んでデレッデレだった。やっぱりチョロそうだ。俺も流れに乗らせてもらうとしよう。
「え、マジで!?木下さんなの!?すっげぇ可愛いじゃん!」
「えへへへへ……そんなことないよぉ…」
「いやホントにビックリした!イメチェン?」
「…………ちょっとね。色々とあって…」
俺からの質問に意味深な表情で答える七海。色々とは何かと聞こうとすると、俺よりも早く周りの女子が説明してくれた。
「ダメだよ宮野くんナンパしちゃ。木下さん彼氏出来たらしいから!それでイメチェンしたんだってさ!」
「…………ぇ?」
「いやぁ…………えへへ……」
彼……氏?七海に?イメチェン後ならともかくあの冴えないイメチェン前に?
……そうかあの陰キャだろどうせ。趣味が合うから流れで付き合ってるとかそんなのだ。運が良いな。蓋を開けてみればこんな美人だったんだから。
だけど相手が陰キャならやりようはいくらでもある。明らかに俺の方がイケメンだし、アニメの話くらい適当に調べれば合わせられるだろ。となればまずは情報収集だな。
「…マジかそいつめっちゃ羨ましいわ。え、彼氏ってうちの学校とか?」
「えっと…………うん」
「「「「お~~~!!」」」」
恥ずかしそうに頷く七海にギャラリーは大盛り上がり。後は流れに任せておけば自然と話してくれるはずだ。
「え、え、どこが好きなん!?イケメン!?」
「…………趣味が合って、すごく優しいとこ。…………イケメンだし」
「「「「おおおお!!!」」」」
案の定クラスメイトが七海へと質問を開始し、七海も照れながらその質問に答えてくれた。「趣味が合って優しい」なんて他に言うところがないだけだろう。こりゃあの陰キャで決まりだな。にしてもあれがイケメンねぇ…きっと男慣れしてないんだな。
「はーい席に着けー」
ここからが本番だというのに教室に担任がやってきてしまった。もう少し聞きたかったが仕方ない。チャンスなんていくらでもある。ゆっくりと距離を縮めるとしよう。
1学期の反省点をあげるとすれば俺に積極性がなかったことにある。俺がもっと彼女達と接していれば井伏なんかに入り込まれなかった。実際乃愛に告白したら成功したわけだし、この調子でやっていけばもしかしてハーレムみたいになるんじゃ……想像しただけでも最高だ。
そうと決まれば後は……
邪魔者に消えてもらうだけだな。
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