第11話


 あれから時は少し流れ……


 どうも、先日5歳になりました。燈矢です。


 いやぁ、長かった。長かったね本当。やっと身体に遠慮をしないで魔法を使えるよ。マジで大変だったんだ。魔力酔いで気持ち悪くなるし、何故か筋肉痛みたいになったりで本っ当に大変だった。

 それに母ちゃんが想像以上にスパルタだった。勿論5歳未満だから危険が無いように遠慮してくれていたんだろうが、ギリギリを攻めてくるもんだからついていくのがやっとだったよ。これから更に厳しくなる事を考えたら大変だね。いやまぁ、自分から言い出したことだし、魔法は楽しいからやめる気なんかさらさらない。


 それに母ちゃんが厳しいお陰で、魔法だけなら世界最強の5歳児になったと思う。


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名:緋野 燈矢(ひの とうや)5歳


職:緋野家の5歳児


Lv:1

経験:0


生命力:70


力:15


魔力:5128/5129


適性:火、水、生、死


スキル:魔導の神髄


装備:良質な子供服(1)、子供用の胸当て(30)


G:0


14:53

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 これが俺の今のステータスだ。

 まず生命力と力が少し上がった。おそらく成長したぶんでついた筋肉などのおかげだろう。

 そして、魔力。コレはすげー上がった。最初の頃は2桁だったのに、3歳と少しの頃には4桁になっていた。確かに俺は毎日魔力をギリギリまで使ったら、母ちゃんから貰い、またギリギリまで使いということを繰り返していた。それが原因でここまで増えたのだろう。

 塵も積もれば山となるって事よ。


 それと、なんと私。早くもスキルを覚えました!やったね。

 効果は……


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魔導の神髄

複数の魔法適性を同時発動する事が可能。

 魔法を自在に操れる。

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 このスキル、元々魔法を同時に撃てたりしないかなぁと色々と思考錯誤してる時期が一時期あって、それを繰り返していたらいきなりこのスキルが使えるようになっていた。


 使えるようになった時、最初微妙なハズレスキルかと思ったが実はかなり有能なのだ。


 まずこの世界の魔法は、複数の適性を同時に扱えないらしい。まぁ、スキルとしてこうなると言う事はそうなんだろうと思ったが、この同時に発動出来るか出来ないかで大分状況が変わるのだ。

 基本的にこの世界は詠唱によって魔法を使う。俺や母ちゃん父ちゃんは別としても、そこそこの文量を読まないと魔法を扱えないのだ。つまりタダでさえ普通の人より手数の多い俺が、更に多くの魔法を使う事ができるのだ。

 簡単に言うと、生の魔法で自分を強化して、死の魔法で相手を弱体化、火の魔法で相手を丸焼きにする。これらを全部同時に発動できる。

 それに父ちゃんや母ちゃんのような無詠唱が使える人も時間差で魔法を撃てても、同時に撃つことはできない。つまりその分もこっちにアドバンテージがある事になる。


 そしてもう1つの効果の魔法を自在に操れる。これが物凄くチートだった。

 俺は出来ても追尾だとか、発動が楽になるとかそんなんだと思っていたら、全然違う。実はこれ、遠距離発動が出来るのだ。つまり相手を中心として挟み撃ちができるし、なんなら相手自身から魔法を発動させられる。普通に使うと飛んでくため、全身を火の魔法で燃やしたり、水につけて窒息させたり、生の魔法を直接触れていなくても他人の治療をする事が出来る。

 生の魔法は回復の際、対象に触れていないと発動しない。バフは離れていても問題無いのだが、回復となると何故か発動しない。その為に生の適性を持つ人はあっちへこっちへと常に動き回るのが基本らしい。俺の魔力酔いを治す時も、母ちゃんは必ず俺に触れていたしね。

 それが無くなると言うのは本当に楽だ。離れていても関係なしに味方の回復ができる為、自分は固定砲台としての役割に集中する事が出来る。


 更に、自在にと言うのは魔法の形も変えられるらしく、動物の形にして噛みつかせたり、高い壁を作ったりと色々出来るのだ。


 もちろん視界に入る限り追尾もできるし、発動も干渉力が強化されているのか大分楽になった。

 うん。俺のスキルも充分チートだね。まだ戦闘を経験していないから、自分がどのくらい強いのか分からない。けど母ちゃん曰く、「そこら辺にいるチンピラや盗賊くらいなら簡単に潰せると思うわよ」との事だ。5歳児が大人を簡単に潰せることは相当凄いことだろう。

 まさか、俺が伝説の「俺TUEEEE」をすることになるとは…… 人生何が起こるか分からんね。


 そして5歳になるまでに俺はこの世界についても勉強をした。


 結論から言うと、この世界はおそらく異世界じゃない可能が高い。


 その根拠は、まずこの国が日本と呼ばれ、地図を見るとまんま日本の形をしていたからだ。前世のように日本中に人が住んでいる訳では無いようだが、主な人の住んでいる街の名前が、陸奥、信濃、武蔵、大和、出雲、長門、となっていて全て旧日本国名になっていたからだ。まぁ、少し広かったり、少し位置がズレていたりするがおおよそ同じ位置と広さになっていた。あと、北海道と四国、九州より下は地図に乗っていたが、無人の様だ。その理由はちゃんとあるが、後で説明する。

 そして、首都は大和で、前世で言う京都、奈良、大阪、兵庫の4つが合体している様で、城は京都の位置にあるようだ。前世でも大昔の1869年までは京都が首都だったようだし、そういう部分にも共通点がある。

 あと俺が住んでいるのは武蔵、前世でいう東京、神奈川、埼玉、千葉、山梨の5つが合体している場所らしい。


 次の理由は、平仮名、漢字、カタカナ、ローマ字の4種類が存在するのだ。普通有り得ないだろう。異世界で、まったく日本や地球と関わりがないのにこの4つの言語がそろうことは中々ない。この世界を作った神様が日本人だと言うなら納得出来るが、そんな事あるんだろうか。いや、俺が転生してるんだ。この国の文明を作る時代に転生した日本人が、この文化を伝えた可能性が無くはない。

 まぁそこら辺は考えても分からないからスルーだ。


 次は、古代文明とやらが既に発見されている事が理由だ。発見されたのは謎の物体で、どのように扱われていたかが不明な物な為、現在は歴史的遺産として国に管理されているらしい。

 母ちゃんは、展示されている実物を1度だけ見た事があるらしく、どんな形なのかを紙に書いてもらった。それを見た俺は直ぐにピンときた。


 ── これ、自動掃除機やん。


 と、一目見た瞬間にわかった。何故なら、俺が生きていた前世でかなり売れていたメーカーの商品だったからだ。もちろん、誰にも教えていない。俺は面倒事はごめんだから、この事は墓場まで持っていくつもりだ。

 ちなみに発見されたのは、ダンジョンと呼ばれる地下空間らしい。それを知った時はダンジョンなんてあるのかよと驚いてしまった。


 流石にここまで揃えば異世界は有り得んだろうと俺は思っている。その為にここは異世界では無く、日本だと思っている。


 けど、疑問もある。一体何が起こって文明は崩壊したのだろうかと言う事だ。

 前世は化け物になったりと物騒な事があったが、基本は安定していた。治安も悪く無かったし、いや、その化け物が手に負えなくなった可能性もある、と言うか最後の理由からしてその可能性が高い。


 さて、そんな最後の理由だが、俺がみたこの世界の魔物の姿が、テレビで観た熊の化け物とそっくりだったのだ。

 去年の俺がまだ4歳の頃、街の付近に魔物が大量発生した為、父ちゃんとこの家にいる警備隊の皆が討伐に行ったのだ。その際に倒した魔物の1匹を持ち帰って来たんだが、その時にその熊に似た魔物を見た。

 本当にまんまだったのだ。ほかの魔物をまだ見た事が無いから確信は持てないが、普通あんなに似てることは無いだろう。


 以上の理由で俺はこの世界が異世界じゃなく、一度滅んだ地球だと思っている。


 あと、俺がさっき北海道や四国、九州に人が居ないと言った理由だが、どうやら魔物と魔人のせいらしい。

 先程から魔物の存在は触れているのでいるのは分かっているだろうが、どうやら魔人とやらもいるそうだ。現在の歴史学者達は、古代文明時代に魔人と人間の戦争があり、そこで敗北した為に、北海道や九州、四国の陸続きでない場所に住めなくなったんだとか。そしてその際に今の日本のような世界になったと言われている。

 実際今人の住める場所は日本の国土としては相当少なく、街と街の間に村などは存在するが、魔物の影響で危険と隣り合わせな生活だそうだ。

 そして、魔人が占領したと思われる北海道と四国、九州には立ち入る事が難しくある状況で、現在も立ち入れないらしい。


 それではこの国以外はどうなのかと言うと、よく分かって居ないらしい。

 何でも、先の魔人と人の戦争はこの国だけではなく、世界中で起こっていたと言われている。その為、日本が敗北した後はどうなっているか不明なんだそうだ。まぁ文明が滅ぶレベルの戦争だもんな、そうなって当然だ。

 なら、現在どこまで把握出来ているのかと言うと、前世で言う韓国や朝鮮の辺りまで立ち入る事が出来たらしい。それでも、魔物が多く、現地に住んでいる人も発見出来なかったそうだ。

 多分だけど、アメリカやロシア、中国、インド、フランス周辺やブラジル周辺等の、人口が多い所や発展していた所には人がいる気がする。もしかしたら何処かは勝利して平和な生活をしてるかもしれないが……

 まぁ、よっぽどの事がない限り海外なんて行く事はないだろうから考えなくていいかな。もし行く事があるならその時に考えよう。


 ちなみに、国名が古代文明時代の日本から変わっていないのは、現在の王族達は古代文明を生き残り統治をした為、それが変更になること無く使われ続けて来たそうだ。

 それなら現在の王族は、当時何が起こったのか記録なり、話なりが伝わっていそうだが、当時の記録も伝えられた話も何も無いそうだ。


 5歳になるまではそんな事を勉強しつつ、母ちゃんに魔法を教わる生活をしていました。


 さて、そろそろ現実逃避をしないで、現実を見なきゃなぁ……


「燈矢、こいつが今回の模擬戦の相手だ。全力で戦いなさい」

 

 そう、俺は何故かいま、模擬戦をすることになっていました。





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