視線
休みが明けた。今は学校に登校している途中なのだが…周りからの視線が気になる。
何故か先程からチラチラと俺の事を見ている人達がいる。その大半が女子でたまに目が合うと「キャー!」と悲鳴を上げながら逃げてしまう。
え?そんなに俺の顔って醜いのか?こ、こんなことなら髪なんて切らないほうが良かったんじゃ…い、いや、弱気になるな。俺は変わると決めたんだ。例え容姿が優れていなくとも性格は変えられるはずだ。
そう自分を震え立たせながら学校へ向かう。
やはりというか学校の中でも俺はかなりの注目を集めていた。
「だ、誰だあいつ?」
「あんなやつ学校にいたか?」
「え、何あれ…ちょータイプなんですけど…」
「モデルやってる人?」
「かっこよすぎでしょ…」
かなり居心地が悪い…なんてことを考えていたら後ろから声がかけられた。
「蒼彼ー」
聞き馴染みのある声に呼ばれた俺は後ろを振り返る。そこには幼馴染の海純がいた。
「海純」
「お、髪切ったの?似合ってるよ」
海純は笑いながらそう言ってくれた。
「は?あいつ朔原さんの幼馴染?」
「あの陰キャ?」
「やば…隠れた逸材じゃん…」
「あたし狙っちゃおうかな…」
「ありがとう」
俺は海純にそうお礼を言って言葉を続けた。
「海純…俺なんか変か?やたら皆見てくる気がするんだが…」
すると海純はどこか困ったように口を開いた。
「そ、そう?皆普通じゃない?」
「そ、そうか?」
俺の自意識過剰だったのか?まぁ皆俺になんか興味ないよな。
そりゃそうだ、と思い居心地の悪さは無くなった。
「それじゃ俺は教室に行くよ」
「あ、う、うん」
そう言って俺は海純と別れた。
教室に向かって歩いていると前か見知った顔が歩いてきた。俺はその相手に軽く挨拶する。
「おはよう、並柳」
「…」
だが並柳から挨拶は帰ってこなかった。どこかぽけーと俺の顔を見ている。
「な、並柳?」
「…はっ!?」
もう一度声をかけると並柳は我に返った。
「お、おはよう蒼彼君!」
「え?」
俺は戸惑ってしまった。並柳ってこんなキャラだったか?もっと冷静沈着でクールな感じだと思うんだが…それに俺の事名前で呼んでたか?
「大丈夫か並柳?体調でも悪いのか?」
そう並柳に問いかける。
「いいえ?特にそういうことは無いわ」
あれ?いつも通りの並柳だ。さっきのは一体なんだったんだ?
「そ、そうか」
「えぇ。髪を切ったのね。よく似合ってるわ」
並柳は淡々とそう告げた。
「ありがとう。並柳に言われると自信になるよ」
並柳なお世辞なんか言わなそうだから自信になるな。
「そ、そう」
並柳は顔をぷいっと背けながらそう言う。あれ?俺なんかまずいことでも言ったか?
「そ、それじゃあ私は行くわね」
「あぁ、じゃあな」
そう言って並柳と別れ再び教室に向かい歩き出した。
蒼彼は知らなかった。丸メガネの少女の素が一瞬出てしまっていたことに。
あとがき
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