幼馴染に振られてからメガネ女子の様子がおかしいんだが
Haru
失恋
「
そんな声が聞こえてきて教室の外を見てみる。そこにはクリクリっとした大きな目に鼻筋の通った鼻、栗色の綺麗な髪を肩上まで伸ばして誰もが2度見するような美少女が立っていた。
幼馴染の
「…おう」
海純はこの学校ではちょっとした有名人だ。どういうことかと言うと…
「今日も可愛いなぁー、朔原さんは」
「だよなー。付き合いてー」
「てかなんであんな冴えないやつと一緒に帰ってるんだ?」
「なんか幼馴染らしいぜ?」
「いいなー」
まぁ今の会話を聞いてもらったら分かる通り海純は学校中でモテている。サッカー部のエース、学校一のイケメン、お金持ちのおぼっちゃま。そんな奴らにも告白されたらしい。
だが海純はその全てを断った。理由を聞いたところ「んー、なんか恋愛ってわかんないんだよねー」と言われてしまった。まぁ海純くらいになると焦らなくても何時でも恋人くらい出来るか…あわよくばそれが俺であって欲しいと思ってしまう。
何を隠そう幼馴染の俺も海純に恋心を抱いている。だが当の本人があの様子なので告白する勇気が出ない。…幼馴染補正とかで海純も俺の事を好きだとかそんなこと…ないか。
俺はいわゆる陰キャと言うやつだ。友達もいないし何か特技があるわけでもない。…でも友達と呼んでいいのか分からないが話すやつは一人だけいる。まぁ向こうは俺の事なんてなんとも思っていないだろうが。
「蒼彼ー、はやくー」
全く…人の気も知らないで呑気なもんだ。
「はいはい、ただいま」
そう言って俺は荷物をまとめ席を立った。
「ねぇ、今日も蒼彼の家行っていい?」
帰り道、海純がそんなことを聞いてきた。海純はよく俺の家に来て漫画やゲームをしている。
「…なぁ」
「何?」
海純は不思議そうにこちらを見てきた。
「前々からおもってたんだけどさ、その、大丈夫なのか?」
「何が?」
「いや、なんて言うか…」
「なーにー」
俺の煮え切らない答えに痺れを切らしたのか海純が頬を膨らましながらそう聞いてきた。
「海純ってさ、モテるだろ」
「え?まぁ、うん」
「そんな奴が男の家に行ってるなんて知られたら…都合悪んじゃないのか?」
表面上は海純のことを心配しているようなことを言っているが本心では全く違うことを考えている。俺の事を少しでも男として意識してくれているのならそんな簡単に俺の家に行きたいなんて言わない、俺はそう思っている。だがら海純の口から聞きたいのかもしれない。俺の家に来ているのは幼馴染なんかじゃなくて俺が特別な存在だから…
「えー、なにそれー。私たちただの幼馴染でしょ?そんなの気にしなくて大丈夫だよー」
海純は可笑しそうに笑いながらそう言った。
そう、だよな。俺の事なんて男として見てるわけないよな。俺は根暗で友達もいない。それに比べて海純は明るくてどんな人とでもすぐ友達になれる。そんな海純の周りにはいつも人が集まってくる。幼馴染という繋がりがなければ俺と海純は話すこともなかっただろう。だが俺は幼馴染という立場を偶然にも手にしている。きっと俺はどんなやつにも敵わない。でも俺には他の奴らにはない海純と過ごしてきた時間がある。多少なりとも海純の特別になれてるんじゃないか?
そう思った俺は切り出してみた。
「…俺が海純のことを好きでもか?」
「え?」
俺がそう言うと海純は動きを止めた。
「な、なにそれー。もー、そんな冗談よしてよー」
冗談だと思っているのか海純は笑いながらそう言う。
「…」
だが俺はそんな海純から目を離すことをしなかった。
「え、ほ、本気なの?」
「冗談でそんなこと言わない」
そう言うと海純の瞳が揺れた。
「…」
「…」
沈黙が二人を包む。周りの騒音がいやに大きく聞こえる。たった数秒の時間が何十時間にも感じられる。
しばらくして海純が口を開いた。
「…い、いやー、この前も言ったけどさ、私恋愛とかよくわかんないからさー」
海純は俺から目を逸らして笑いながらそう言った。
「…そうか。変なこと言って悪かったな」
「ううん、気にしないで?」
海純はそう言うがそんなのは無理だ。俺にとっては今までの想いを覚悟を持ってぶつけたのだから。
「…」
「…」
また沈黙が二人を包む。あぁ、俺のせいだ。俺が余計なことを言ったから海純との関係がおかしくなってしまった。
「わ、私、今日は先に帰るね。また明日」
「…あぁ」
そう言うと海純は勢いよく走り出した。俺は遠くなっていくその背中をただ見ていることしか出来なかった。
雲ひとつない晴天が憎らしかった。
あとがき
面白い、もっと読みたいと感じた人は評価お願いします!今日は2話上げます!
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