第82話 オッサン齢53歳にして袋だたきをする。

 しばらく見ていると、劣勢と思われたトリケラトプス部隊が徐々に挽回してきた。


 ボス個体が強いのと、周囲から結構な数のトリケラトプスが集まったおかげだ。

「皮肉なもんだな、漁夫の利を取るつもりはないって思って行動した時に限って、絶好の漁夫の利チャンスなんだからな」


「折角なんで、掻っ攫うっす」


「そうだな、まだゴールまで長いしな」


 トリケラトプスとレイクワームを交互に攻撃して数を調整する。

 敵対する相手が居る間はこちらにヘイトが向かうのを防げるからだ。


 最後にボストリケラトプスを袋叩きにして倒した時、プス子が光出した。


「なんだ?」

「多分、進化かなんかじゃ無いっすか」

 試しに鑑定を使ってみた。

 相変わらず名前しか分からないポンコツ仕様だ。

『赤觭龍』と出た。


 言われてみれば、心なしかツノの辺りが赤い。


「なんかスキルとか生えてるのか?」

 そう村重に聞く。


「乗騎、突進、炎熱化、人龍一体ってスキルあります!」


「これはちょっと検証した方が良いな」

 おそらく下の階は空っぽだろうという話になったので、ここに集まりきって無かったトリケラトプスを探して検証することにした。


 それで分かったのは、炎熱化しても騎乗している者はダメージを受けない。

 アスパラ関羽がプス子に乗って相手を一撃で倒すと、五関六将斬の効果が発揮される。

 誰も乗っていない時より、誰かが騎乗して攻撃した方がプス子の攻撃力が上がる。


「これは、美髯菜を乗せるのが最良っぽいな、関羽の赤兎馬の代わりかな?」

「どういう理由か分からないっすけど、騎乗してるやつの攻撃力も加算されてるっぽいっすしねぇ」


「それにしても随分都合よく進化したな」

「やっぱ、パーソナルスキルだからじゃ無いっすか?

 本人は気にして無いっすけど、一切攻撃しないで使役してるっすからね」

 …本当だ!


「そういえばそうだな!前に見せてもらったテイムの説明でも相手を屈服させって書いてあったな!」

「そうっす、やっぱパーソナルスキルって特別なんだと思うっすよ、今回進化したのも、たまたま進化したっていうよりスキルの影響で進化しやすくなってたって方がしっくりくるっす」


「そうそう、使役させる時1番小さいのを選んだのも違和感あったんだよな。

 普通選ぶなら1番デカい奴だと思ったんだよ」


「多分、今自分たちに1番適した進化先を持ってる奴を選べる能力あるんじゃ無いっすかね」

「予想でしか無いが、言われると確かにって納得出来るな」

「基礎能力も成長値もあれほど低いの見た事ないっす、それなのに物凄いニッチな能力と他のスキル取れないっていう制限スキル、使役の能力がどんなにぶっ飛んでても俺は驚かないっすよ」


 ー46階ー

 予想通り、モンスターは空っぽだった。

 この階から湿度が上がる。

 そこら中に貯水池くらいのサイズの池があるからだ。


 47階も少ない。

 ここに突入する時に遭遇したアメンボウがこの階の住人だったらしい。


 散発的にアメンボウに遭遇するが数が少ない。


「あれだよな、氾濫ってダンジョンの中のモンスターが一斉に出てくるイメージだったんだが、どっちかっていうと各層で争いあって残った者が上に上がってくるような感じだよな」


「そっすね、俺は蠱毒っぽいなって思ってるっす。

 だから、何かの条件が合わさった時はもっととんでもないの出てきそうで、なんか嫌っすね」


 48階では、ゲンゴロウとゲンゴロウが空中戦を繰り広げていた。

 よくみると水中でも激しい戦闘をしているようだ。


「仲間割れか?」

「ゲンゴロウ同士が争ってるっすね」

「よく見たまえ、片方は甲羅に縦線が入っているからゲンゴロウモドキだな」

 テレビ局のプロデューサーが急に話に入ってきた。


「うおう!いきなりでびっくりした!ゲンゴロウモドキって事はゲンゴロウじゃ無いんですか?」

「いや、ゲンゴロウだね」


「え?でもゲンゴロウモドキって、モドキだから本物じゃ無いんじゃなくて?」

「ゲンゴロウもゲンゴロウモドキも、どちらもゲンゴロウ亜科の昆虫で属が違うだけだな。

 だいぶ乱暴な分け方だが、南の種はゲンゴロウ、北の種はゲンゴロウモドキと思って貰うとなんとなく想像がつくかな?」


「随分詳しいですね」

「番組の特集でしばらく扱っててね、愛着湧いて個人的にも飼育してた時期があるんだ」


「ゲンゴロウは漢字で“竜蝨”っす!これっす!俺がここのダンジョンで狙ってたモンスターはこれっす!」


「村重さん、どっちが使役出来そうだい?」

「どっちも出来るみたいです」


「じゃあ、見た目で選ぶしかないかぁ…どれもあんまり変わらないな、適当に好きなの選んじゃおうか」

 そんな話をしている時に1匹が光出した。


「あ、進化っすね」


 そのゲンゴロウは金属に近いような光沢と鮮やかな金色に近い黄色の縁取りがされていた。

「あのゲンゴロウを使役しようか」

「あれはゲンゴロウモドキの方だね」

 どっちでも使役できれば良いんじゃい!

 声には出さないけど!


 使役された途端、周りのゲンゴロウ達をその個体は捕食しだした。

 かなり強力な顎を持ってるようで、すごい勢いでムシャムシャ食ってる。


「虫を…食ってる…」

 なんだろうこれで、何かしら器官を取り込んで活動限界が無くなるんだろうか?


「村重さんてアニメ好き?」

「好きですよ」

「残酷な天使の奴は?」

「あ、ファンです!パチンコもパチスロもそればっかりやってます」


 これはやっぱり、パーソナルスキル的な何かが発動してるのかなぁ?

 笹かまの言ってることが何となく分かってきた気がする。


【後書き】

お読み頂き、ありがとうございます。

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よろしくお願いします。


なろうから転載しました。

こちらもよろしくお願いします。

【伝説のうさぎ使いって何!?】

https://kakuyomu.jp/works/16818093080362263550

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