第50話 オッサン齢53歳にして兄貴と呼ばれる。

「いきなりどうしたんだ?」


「あいつらの言った事鵜呑みにして貴方の事を誤解してました」

 いきなり態度変わりすぎて引く。


「俺はなんて言われてたんだ?」


「実力も無いくせに、偶然手に入れたチートアイテムでモンスター狩って粋がってるオッサン。

 安全に倒すために他の探索者を囮にして、自分は安全な所から一発いれるだけの卑怯者。

 アイテムさえ手に入れれば誰でも同じ事出来るから、何とかダンジョンで奪って欲しいと頼まれました。

 ですが、実際はあれほどの攻撃を1人で受けて1人で戦ってる。

 その姿に“漢”を見ました!」

 なるほど、アイテム頼りで戦ってるって話たのがこんな風に伝わってるのか。


「うーん、装備自体は普通に売ってるものなんだよね」

 俺の戦闘の仕組みを一通り説明した。


「長命のクロスで増やしたHP上限で、奪命の指輪と乾坤一擲使って俺のスキル回復をダメージに変えて、連撃の鉢巻でダメージ上昇させる。

 だから、俺以外じゃ装備奪っても意味ないし、欲しいならいくらでも通販で買えるよ」


「はーすごい!よくこんな事思いつきましたね!」

 真正面から褒められると照れるなぁ。


「あれっすね、今回の件はあいつら剣崎さんが何かチートアイテム手に入れてて、それさえ手に入れば自分たちでも下層で戦えるって勘違いしたのが原因って事っすね」

 近くで聞いていた笹かまが簡潔にまとめた。


「あいつはズルしてる。

 そんな奴だから、酷い目に遭わせたって構わない何したって良いんだってなったんだな。

 最近のネットで寄ってたかってバッシングするのと同じような現象起き感じだな」

 うーん、これは面倒くさいな。

 そういう奴は自分が信じたい事以外は信じないし、自分が正しくて相手が悪者っていう考えを変えないからなぁ。


「どうする?」

 俺は笹かまの方を見ながら半ば独り言のように口に出していた。


「しゃーないっすね、無視で!どうせ言っても話し聞かないっすし、なんかやってきたらやり返すくらいしか出来ないっすよ」


「そうだなぁ、しょうがないよな」


「俺の方でもできるだけ、あいつらに言ってみます」


「いや、装備の話とか、剣崎さんにとっては割とキモなんで言いふらなさない方が良いんで、なんもしない方向でよろしくっす」

 唐辛子の言葉を笹かまが否定した。


「俺のやってる事説明した方があいつらも諦めてくれるんじゃないか?」


「剣崎さんは自分の事になると、なんか鈍くなるっすけど、悪意ある相手に手の内晒すのはダメっすよ。

 今回はたまたま上手くいった感じっすけど、次からは気をつけないと、マジ足元すくわれるっす」


「そ、そうなのか?分かった次から気をつける」


「マジでお願いしますよ!剣崎さんの攻撃方法ってめちゃくちゃ強いけど、欠点もめちゃくちゃあるんすから」


「あ、うん、気をつける」

 出来れば欠点のレクチャーもして欲しい。

 自分でもあんまり把握出来てないし。


「とりあえず、先進むっすよ」


「あぁ、そうだな、出来るだけ進まないとな」


 ボスティラノも処理して、さらに進む。


 笹かまが抗生剤も用意しておいてくれたので、スカラベまで降りて来れた。


 ここまで、レアドロップは全部出ている。

 8人増えたおかげで、32%もドロップ率が上がってる。

 8割超えだと結構安定するな。


「さて、ここから下に下がるかどうかなんだけど…」


「ここまでレアエリアばっかりっすからね、ここのダンジョンってレアエリアばっか出るかもしれないっす。

 それなら降りる1択っすよ。

 どっちにしろ確認するためにも降りた方が良いっす」


「ちなみに何ならレアエリアなの?」


「次だとドラゴンっすね」


「いや、流石にドラゴンには勝てないだろ」


「あー、ドラゴンっていってもレッサーだから大丈夫っすよ。

 空飛べないし、ブレス吐かないし、それでもドラゴンっすからね!当たりが出ればボロいっすよ」


「それは期待するな!」

 俺たちは、期待に胸を膨らませて降りるた。


「あ!ドラゴンっすね」


「やったな!」


「あー、あれレッサーじゃないなぁ…」


「え?」


「レア中のレア引いちゃったっすね、エンシェントレッサードラゴンっす」


「なんだそれ?」


「一言で言うと、レッサーでもやべぇレッサーっす」


「やべぇの?」


「やべぇっす」

 エンシェントレッサードラゴンと目があった。


「…逃げろぉ!」

 俺たちは全力で今来た道を走り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る