第30話 オッサン齢53歳にして物欲センサー発動する。
「頼む!あと1回!あと1回だけで良いから!」
「それ何回言ってんすか、もう帰るっすよ」
「いや、しかしだなぁ、納得いかないじゃ無いか!」
当たりが出ない。
もうこの際レアドロップなんて贅沢言わない。
せめて武器が出てくれ!
防具でも全身鎧一式や盾なんかだとまだお金になるが、右手だけとか、肩の部分とか、しまいにはくるぶしだけってなんじゃい!
こういった防具の一部は鋳潰して材料にするのだが、使える部分、使えない部分を分けるなど作業が煩雑になる割に使える部分が少ないため、安い。
そして、さっきからずっと、そんな部分しか出ない。
物欲センサーって本当にあるんだな。
「あー剣崎さんってギャンブルで破産するタイプっすね、逢真さん絶対剣崎さんにギャンブルやらせたらダメっすよ」
なんだ、人を中毒者みたいに言いおって!
千紗も大きく頷くんで無い!
「分かった、次の1回で本当に帰る!約束する!」
「もう!ラストっすよ、これ以上やるならマジで置いて帰るっすからね!」
「分かった!本当に約束する!」
「千紗、出来るだけ数の多い奴頼む」
千紗にそっと耳打ちした。
半笑いでこっちを見てるが、きっと千紗のことだからちゃんとしてくれる。
なんと、6匹もの団体さんだ!
え?流石に多すぎない?
「こりゃ、逢真さんに全力でジャベリン撃ってもらって、殴られる覚悟で剣崎さんバッシュかまして、一気に数減らさないと詰むっすね」
ゴクリ
思わず唾を飲む。
「嫌なら帰っていいんすよ」
「いや、やる!こういう戦闘もして実践の経験も積んでいかないと将来的に自分のためにならない」
「で、本音は?」
「出る確率6倍じゃねぇか」
千紗が思わず吹き出す。
「流石欲に目が眩んだ人は違うっすね、よっしゃ戦闘行きましょ!作戦は命はそこそこ大事にっす!」
千紗のジャベリンを合図に戦闘が始まった。
俺も言われた通りカウンター気味に相手にバッシュをかける。
流石に全く防御捨てるほどの度胸はないので、盾も使いがちだが積極的にバッシュを撃つ事を意識した。
そうすると、思ってたより攻撃を受けない。
攻撃は最大の防御って思ったより信ぴょう性あるな。
あとは、なんだかんだで笹かまが良いところでサポートしてくれている。
こっちを攻撃する気配の相手を上手い具合に牽制してくれて、俺が反撃する隙を作ってくれる。
程なくして相手を全滅させる。
そして遂に待望の武器のドロップだ。
…
…
…
「棍棒っすね、何十種類もある武器のなかで唯一売れない武器っす」
「くっそー物欲センサーの奴めぇ!」
俺は棍棒を地面に叩きつけた。
受付に戻ってきて精算を行う。
「8000円とドロップ品の換金の半分の3200円を2人で分けるから、1600円づつっすね」
「次はどうする?」
「とりあえず、バンシー用のアイテム届くのに1週間はかかるんで、その間はフリーっすね」
「分かった、その間はリビングデッドでレベル上げしておく」
「了解っす、さっきの戦闘見てたら2人でも4匹までなら余裕っすね、それより多いのはまだやめといた方が良いっすよ」
「分かったありがとう」
笹かまの見立ては信用できる。
4体を上限に戦闘を行うようにしよう。
翌日からリビングデッド狩りが始まった。
どうでも良いが、物欲センサーが優秀すぎる、3日間で出たのが錆びたナイフが1本。
ゴブリンのレアドロップと一緒だ。
4日目
「いやー出ないな」
「出ないですね」
手斧が一応出たが、木製部分が腐っており、2000円程度でしか売れなかった。
5日目
遂に今までとまったく違うものがドロップした。
「なんだこれ?」
「ネックレスですかね?」
真珠のネックレスのような形状で、先に卵形飾り?のようなものがついている。
そして特徴的なのが、真っ赤なのである。
「とりあえず鑑定してみるよ」
一応鑑定スキルを使用する。
レベルが低すぎて名前しかわからないんだけど、何もわからないよりはマシって事で。
こまめに使ってはいるんだけど、まったく成長する気配がない。
『朱殷のロザリオ』
「ロザリオッて十字架付いてるもんなんじゃなかったっけ?
朱殷のロザリオッて出たんだけど?」
「朱殷ってなんですかね?」
「さぁ?帰ったら検索してみよう、あ、その前に笹かまに聞いてみるか」
「そうですね、協会なら何か情報あるかもしれませんし」
「じゃあ、一旦戻ろうか?」
「はい!」
俺たちは受付に戻って、早速笹かまに見せてみた。
「朱殷のロザリオッて鑑定したら出たんだけど、なんだか分かるか?」
「なんすかこれ?」
「なんだろうね?福引場でドロップした」
「リビングデッドを福引って呼びようになったら、まぁまぁヤバいっすよ。
とりあえず、呪いは無いか検査してみるっすね」
そう言うと何やら、空港の危険物調べる虫眼鏡の大きいやつみたいな器具にそっくりなやつをロザリオに当て出した。
「呪いは無いっぽいっすね。
でも、魔力の反応あるんでマジックアイテムではあるみたいっす」
「売れそうか?」
「いやー無理じゃ無いっすか?
なんか、この赤いのも気持ち悪いっすし」
「え?綺麗な色じゃ無いか?」
あれ?俺と意見が違う。
「なんか見てるとゾワゾワしないっすか?」
え?そうなの?
思わず千紗を見る。
千紗も小刻みにウンウンって頷いてる。
あっれー?
「全然、むしろ綺麗だし装備品ならつけたいくらいなんだが?」
「あれっすかね、マジックアイテムだと相性とか耐性とかで受ける印象変わるんで、剣崎さん着けてみたらどうっすか?」
「大丈夫かな?」
「呪い判定出てないから大丈夫じゃ無いっすか?」
「じゃあ着けてみるかな」
せっかくだから着けてみる。
マジックアイテムだっていうし。
「あー呪われてなくてもマイナス効果だったり取れなくなったりってあるんで注意必要っすよ」
「それを先に言え!もう着けちゃったじゃねぇか!」
「まぁ、大丈夫っすよ!実際どうっすか?何かあったっすか?」
「いや、何も変わった様子ないな」
「これは要検証っすね、しばらく着けて試すのよろしくっす」
「いくらか出るのか?」
「効果判明したら、なんぼか出ますっす」
まぁ、俺も気になるしなぁ。
「効果分かったら連絡するよ」
それだけ言って俺たちは自宅へと帰った。
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