第16話 オッサン齢53歳にしてキョどる。

「あ、いや、あ、えっと全然構わないんだけど、ほら、俺も男だしね、あ、いや、その、あ、嫌じゃないんだよ、でも、ほら、万が一って事もあるし、ね!」

 一体なにが、ね!なんだろうか?

 自分で言ってて恥ずかしくなる。


「私なら、大丈夫ですよ!大人の女ですから」


「あっと、その気持ちは非常に嬉しんだけど、おじさんだから、年齢がね、思ってるほど頑張れないっていうか、多分だけど、薬のお世話にならないと元気になってこないっていうか、いや、決して千紗さんが魅力的じゃないってわけじゃなく、年齢的な、身体的な、その、親子ほど離れてるし、ね!」

 一体なにが、ね!なんだろうか?

 自分で言ってて恥ずかしくなる。


 そうすると、千紗さんが俯いてしまった。


 そして部屋の畳にポタっと雫が落ちる。


「え!あの、本当にそういう事言ってくれて嬉しいんだよ!決して嫌なわけじゃなく!」


「最低ですよね」


「あーいやいや、誤解しないでくれ!その、やましい気持ちも無いとは言わないが、決して行動しようとか、そんなつもりは無く、あ、いや、そう思われたなら、私が悪かった!すまん!」


「違うんです、私なんです!最低なの。

 パーティを解散されるのが怖くて、身体を使って、剣崎さんを繋ぎ止めようってして…」


「え?あれ?どうしてそんな事考えたの?むしろ解散してくれって言われるのは俺のほうだよ」


「だって、私、戦闘で何も役に立ってないし…」


「何言ってるの、今スキルとレベル上げてる最中なんだし、初日だよ!それに相手の数多い時に牽制したりしてくれて凄い助かったよ!」


「でも、すぐ独り立ち出来るねとか、他のパーティで戦う時は後方が良いかもねとか、ゴブリンのナイフ渡された時も、接近戦も覚えておいた方がソロでやる時いいと思うよって…

 もう、早く解散したいのかなって…」


 しまったーーーーーーー!

 褒めてるつもりだったのが裏目に出た!


 なんか帰り急に大人しくなったなって思ったけど、こんな事考えていたのか。


「違うんだ!違うんだよ!君があまりにも優秀過ぎて、俺なんかじゃ釣り合い取れなくてなるから、むしろ、俺の方が捨てられるって思ってたから、自分に言い聞かせるっていうか、心の準備みたいな気持ちがあって!

 優秀だねってつもりで、言ってたんだ!

 誤解させてすまない!」


「え!じゃあ、お互い誤解してたって事ですか?」


「そういう事だね!

 断じて俺の方からパーティ解散してくれと言うことはない!

 それは約束する!」


「良かったー、不束者ですがよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


「それはそれとして、今日ここで寝ちゃダメですか?」


「あ、いやぁ、俺も男だしね、いやらしい気持ちを抑えていられるか自信がない」


「良いですよ、その覚悟はしたんだし、それに私って結構エッチなんです。

 戦闘の興奮が残っているせいなのか、なんか抑えきれてなくて。

 そういう女の子っていやですか?」


「いえいえいえ、大好きなんだけど、いかんせん歳なんで、おそらく頑張れないんじゃ無いかと」


「あ、でも探索者になってステータス上がるとそっちも元気になりやすいって聞いた事ありますよ

 試してみて大丈夫そうだったらお願いしていいですか?」


「それこそ、こっちこそお願いしますだけど」

 俺は夢を見てるのか?


 え?ここから怖いお兄さん出てきて脅される?


 鍵はかったよな?


 周りに人の気配もないし、え?こんな展開ってあるの?


「待ってくれ、君みたいな可愛い子がこんなオッサンとこんな事するのが信じられなくて、どうしてしてくれるんだ?

 あ、もちろん嬉しいし、ぜひしたいけど、どうにも疑問で」


「嬉しかったんです。

 このクラスとって、ステータスとスキル確認すると本当に誰もパーティ組んでくれなくて、試しに1人でダンジョンに潜ったんですけど、すぐにやられてしまって。

 なけなしのお金で買った装備もダメにしてしまって、武器も落としてしまって。

 怖くて1人で入れなくて、どこかパーティ組めないかお願いした時に、せめて盾使えれば囮くらいは出来るのにって言われて…。

 それで盾の講座に出てたんです。

 そんな時に一緒にパーティ組んでくれるってなって嬉しかったんです。

 それで、どうしても解散されたく無くて、既成事実で別れられなくしようって思って。

 そんな私を怒るでもなく、優しくしてくれて。

 だから、私の身体で喜んでくれるなら、喜んで欲しいんです」


 あーダメだ。

 この瞳で見つめられながら、こんな事言われたら、断るとか無理だよ。


 きっと親子ほど違うのにみっともないって言われる。


 周りから気持ち悪いとか言われるに違いない。


 でも無理だ。


 彼女の気持ちに応えるって大義名分があるのに、欲望を抑えることができるのか?

 いや、出来ない。


「分かった、ありがとう、その気持ちに応えたいって思う。

 ただ、本当に使いものになるかどうか分からないんだよね」


「じゃあ、試してみます?」


「お、お、あ、うん」

 リアルな発言に思わず、変な反応してしまった。


 ー翌朝ー


 探索者って、身体的能力上がるんだなぁ。


 そんな俺の横で全裸で寝ている彼女を揺り起こす。


「もうそろそろ、ダンジョン向かうけど、俺は君の事を彼女って思って良いのかな?」


「うーん、私ちょっとMっ気あって、出来れば俺の女って言われたいかな?」

 ちょっとはにかんだ顔でこちらを眺める。


 体制的に下から上目遣いでこちらを見る感じになる。


 たまらなく可愛い。


「じゃあ、誰かにどんな関係か聞かれたら、俺の女の千紗だって言うね」

 彼女なコクンと頷く。


 我慢できずに出発が1時間ほど遅れてしまった。


「笹かまおはよう」


「おはようっす…

 …

 …

 なんで、すでにちょっと疲れてるんっすか?

 昨日どころか、さっきまでお楽しみでしたねってやつっすか?」


「あー俺の女の千紗だ」


「さっさとダンジョン入ってオークにボッコボコにされれば良いっすよ!」


 俺たちは、そそくさとダンジョンに潜った。

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