第9話 オッサン齢53歳にして履習する。

 ボス戦の翌日。


「ふぅ、思ったより大変だな」

 戦闘自体はそうでもないが、獲物を探してダンジョン内を移動するのが、オッサンには体力的にきつい。


 俺はダンジョンでオークを相手にしていた。


 講習の予約が取れたのは取れたが、来週の週末まで埋まっていたそうだ。


 で、その間にレベル6まで上げるようにアドバイスされた。


 ボスモンスターは討伐失敗した場合その日1日は徘徊するらしいが、1日経ったので元の場所に戻っているそうだ。


「色々面倒な事になるんで、ここ以外のダンジョンで勝てるか分からないボス挑むのは辞めた方が良いっすよ。

 ここなら、誰もいないんで気にしないでいいっすけど」

 と、言われた。


 その時に、ボスにさえ挑まなければ充分戦えるだろうから、出来るだけレベル上げといた方が良いという話になった。


 だったら、いっそ10レベルまで上げてしまえば良いと思ったのだが、そうは上手くいかないらしい。


 レベルアップに必要な討伐数が、レベルと同じ階層のモンスター100匹で、階層が違えば倍、もしくは半分になるらしい。


 レベル1が1階で100匹、2階で50匹、3階で25匹、4階で13匹、5階で7匹で2に上がる。

 レベル5が5階で6になるのに100匹、7で200匹、8で400匹、9で800匹、10で1600匹。

 なのでレベル5までは割とすぐなれるが、10になろうとしたら、そこから3100匹倒さないとならない。


 これはモンスターの差は無く階層が同じであればどのダンジョンでも同じ数だそうだ。


 ドロップ品で報酬に差は出るが、それも低階層ならたかが知れてるので、ボスの出る5、10、15、20のモンスターが弱いダンジョンの方が人気があるそうだ。


 そりゃそうだ、最低でも中層で活動しないと一般職以下の稼ぎにしかならない。


 俺はソロだからまだなんとかなる金額だが、これが5人パーティになれば、いっきに収入が落ちる。


 浅層で1番稼げるモンスターのオークもボスの出る5階じゃなく、6階以降で出てくれた方が儲かるし楽だ。


 とはいえ、自分で見つけたダンジョンだし、近いし、他の探索者が来ないのも気楽で良いし、このままここで活動したいと思ってる。


 そんな事を考えながら次に獲物を探す。


「2体かぁ」


 見つけた相手が複数の時は見つからないようにそっとその場を離れるようにしている。


 笹かまから、複数の相手はするなと言われたからだ。


「シールドバッシュ覚えるまで2体相手とか、何かあった時にリカバリーきかないっす。

 マジ辞めておいた方が良いっすよ」

 との事だ。


 なんとかなりそうという自分の判断よりも、慎重な笹かまの判断を信じることのした。


 経験者の意見は大事だ。


 そのせいで、単体のオークを探すためにダンジョンを徘徊する事になっているが、ボス戦で反省した俺は慎重に行動する事にした。


 幸い他の探索者が居ないので、見つけたオークを誰かに取られるという事も無い。


 それから2日ほどでレベル5まで上がった。


 剣崎鉄也 レベル5

 クラス 堪忍者

 クラス解説 ▽


 強さ 11 物理的攻撃力

 器用 12 命中率

 素早さ 7回避率、移動速度

 知性  9 魔法的攻撃力

 耐久力43 物理防御

 賢さ 25 魔法防御

 HP 430

 MP 250

 パーソナルスキル 堪忍

         HP50%以下の時に発動、戦闘中敵に攻撃した時にHPを1回復


 能力上昇値 5レベル毎 強さ5 器用5 素早さ3 知性4 耐久力23 賢さ10


「レベルも上がったし、そろそろ2体相手にしてもよくないだろうか?」

 受け付けまで戻ってきて、笹かまに相談する。


「うーん、スリングショットが接近戦にクソ弱いんすよねぇ」

 俺のステータスを確認しながら、なんとも言えない顔をしてる。


「正直、1体だけのを探して歩くのが億劫になっている。

 2体までならいけると思うんだが」

 変に格好をつけないで本音を正直にいう事にした。


「あー気持ちはわかるんすけど、うーん、じゃあ、なんか靴下とかで良いから石入れて簡易の接近武器持つってのどうっすか?」


「そんな装備で大丈夫か?」

 思わず聞いてしまった。


「大丈夫、問題ないっす。

 2枚盾やるの決まってるのに他の武器揃えても意味ないし、どんなチャチな武器でも当たればスキル発動すりゃ問題ないんすから。

 あ、でも、2体までっすよ、

 3体以上は絶対ダメっす」


「ああ、分かった約束する」


 そのまま、講習の当日まで順調に探索を行った。


 レベルも無事6に上がり、もう少しで7になりそうなくらいまでモンスターを倒していた。


 その中でパチンコの接近戦での使い勝手の悪さを痛感した。


 あと、どうやら1体に効果が発動してる時に別のモンスターに攻撃が当たっても、効果が発動しないようだ。


 誤差と言えば誤差なんだが、頭の隅には置いておこう。


 講習の日の当日、笹かまも所に寄って挨拶してから行く事にした。


「じゃあ、行ってくるよ」


「いってらっしゃいっす、あ!多分スキル売ってると思うんすけど、買っちゃダメっすよ。

 あ、買っても良いけど、使っちゃダメっすよ。

 盾術なんて使ってりゃ生えてくるんで、5くらいまでなって伸びなくなってから使う方が良いっすから」


「そうか分かった、ありがとう!」


 俺はまだレンタル期限の残っているレンタカーに乗って、講習会場へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る