おおよそ感想文

猫煮

はじめに

 文字が目の前にある。


 大抵の場合、文字の集まったモノはなにがしかの意図を伝えようとしてくるものだ。これは全くの経験則なのではあるが、辺りを見回してみれば、けだし正鵠を射ているようである。ただし、意図を伝えようとするものがこの文字の集合体で尽きている訳でもなさそうである。こちらは経験則ではなく、例えばサイレント映画が反例としてすぐに見つかる。


 さて、感想文と言ったとき、大抵の場合はある意図に触れた心の動きを文字の集まりで表す作業の成果物だ。実のところ、この随筆を書き始めた時分には、読書感想文と題して文字が集まりに集まった「文書」の感想文を書こうと思っていた。文字の集まりが私を通して、少しだけ変わったような文字の集まりに変化する様子を考えると、対称性の良さも相まってなんとも小気味の良いものである。しかし、いざ何を書こうかと考えてみれば、始まりを文書に限る必要性というのも無いように思える。どうせ、表現をするために使えるのはたかだか数万字(2byte)だ。それならば、文字を超えて耳目にしたモノあれこれを文字に落とし込んでやるのもそれはそれで楽しそうである。


 そんなわけで、特に媒体の別なく感想文を書いていこうと思うのだ。ただし、あんまりに特殊なものを書いても本人しか面白くないように思われる。隣の家から外を覗いている白猫が今日は背中を向けていたという話は感想文向きではない。全く感想文向きではない。よって、とりあえずインターネット環境と常識的な資金があれば到達できるコンテンツに限っておこうと思う。資金の上限は二万円程度で良いだろう。2024年5月時点では、上海までの旅券が片道一万円から少し足が出る程度なので、少なくとも海外旅行の感想文は書けそうにないことを考えると妥当なラインと思われる。


 最も、感想文ごときで販促をやるつもりないし、そもそも規約で営利活動は禁止されている。なので、絶版になった希少本を持ってきて、相場は一万八千円だからなどと言うつもりはない。要するに、お小遣い程度のお金があればネット小売を経由して買える程度のものしか扱うつもりはない。


 ついでに言っておくと、この随筆は全く評論ではない。作品について論ずるつもりはないし、良いだの悪いだのと押し付けるつもりもない。本当に、なんとなく面白かったから、あるいは心に残ったから書き留めておくという以上のことはない。この点については留意していただきたい。


 取り上げる対象の識別についてだが、奥付を丸写しするのが面倒というのもあるため、タイトルや著者とISO準拠の標準番号(つまり、ISBNやDOI、ISANなど)あたりで勘弁してもらいたい。


 それでは、思いついたものの内、人になんとなく話したくなったような作品の「感想文」を置いていくことにしよう。

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