不器量なエルフ賢者、転生し努力の大切さに気付く

千代子 あめ

一章 旅立ち前

第1話 永眠

 彼―賢者と呼ばれる者は、いつものように塔の中で研究をしていた。


 賢者は、綺麗な白銀の長髪に明るい夜のような青の目をした青年と言った容姿で、身体の大きさに合わない、大きなローブを着ていた。


 彼の目は真剣そのもの。動かないローブを身に付けた賢者は、物音一つしない静寂な塔と完全に同化していた。


「――っ」


 賢者が端整な顔が苦悶の表情を浮かべた。


「何だっ、この気持ち悪い、まるで時――――」


 賢者の持っていたガラス瓶が、重力に従い落ちる。賢者の言いかけの言葉と、ガラス瓶が割れた音が塔に木霊した。


 ――賢者はこの世から消え去った。

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