山猫は無罪

@gilun6pc

第1話

「チュー!」

森林地帯の中に響き渡るネズミの断末魔。

その悲鳴の主は今、まさにオオヤマネコの口にくわえられていた。

やがてネズミは息を引き取った。

ゴクン。

オオヤマネコはそのネズミの遺体を食った。

このオオヤマネコはこのようにすみかとしているこの森林の中でとれたものしか口にしなかった。

が・・・。

ガサッ。

すぐ傍らに茂っていた草むらが音ともに揺れ、中から猟銃を手にした人間が現れた。

「むむ、うちの羊の子を獲っていったのはお前だな!」

と、こういう疑いを掛けられることがあった。

チャキッ。

彼は携帯していた猟銃の銃口をオオヤマネコの方へと向けた。

ズドン!

一発撃った。

銃弾は命中したが運良く命取りにはならず、オオヤマネコは跳んで逃げた。

「待て!」

人間は追いかけてきた。

ヤマネコが逃げた先には野犬がいた。

野犬の前には死んだ子羊の遺体があった。

ザザッ。

傍らにあった草むらが揺れた。

すると野犬が跳んで逃げていった。

と、そこへあの人間が追ってきた。

「そこか!」

そしてあの羊の死骸を発見し、

「む、やはりお前がやったのか」

と言って猟銃の銃口をヤマネコに向けた。

が、さっきのことでもうそれが危ないものであることを知っていたヤマネコは跳んで逃げた。

ズドン!

撃ったが当たる訳がなかった。

再度追いかけたが見いだせず、諦めて帰った。

帰った先はその林の中にあった小屋。

そこには妻が居た。

「どうだった?」

妻が訊いてきた。

「犯人はいたが逃げられた」

彼は応じた。

「早く仕留めてね、あの子羊は私がかわいがっていたんだから」

「ああ、判っている。任せとけ」


彼は猟犬を連れてきてあの子羊の遺体の匂いを嗅がせた。

「ほら、この匂いの主を探せ」

「ワンワン!」

猟犬は吠えつつ走って行き、彼はその後を猟銃を手に追いかけた。

 「ワンワン!」

猟犬が駆けて行った先はあの野犬のところだった。

「ガウガウッ」

二疋の犬は戦い、そして野犬は猟犬を殺した。

「おや、犬の吠え声が聞こえなくなったぞ?」

彼が駆けつけたときには猟犬は殺され、野犬は立ち去った後だった。

「おのれ、ヤマネコめ。大事な俺の犬を殺したな!」

ヤマネコはまた一つ濡れ衣を着せられた。

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