それぞれの白さを誇るスズランとユリと真珠とあなたの骨と
睡密堂 蓮
ユリと真珠とあなたの骨と
白い花黄色い花に紫の花、花、あなた、わかれの朝に
やわらかく淡くやさしいさくら色最後の紅をひいた唇
抜け落ちた髪 潔く散ることがよいことなんてもう思わない
いつか死ぬことを誰もが知っていて言わない 物語は続くから
老いていく置いていく愛するものを愛した事実だけをのこして
住み慣れた土地を離れるさびしさを割りきるために割る鳩サブレー
写真には年下のきみ擦り切れたイカスミ色は銀幕のよう
髪を切り華やぐ笑顔シャッターを切って額縁に飾りましょう
飛行機の距離でも飛べば会えるのに手を触れているあなたは不在
ひざまずくように覗き込むひつぎの時を巻き戻せるものならば
いま一度名前を呼んでくれないかこめた願いの数だけどうか
盃を小さくかかげ目を伏せてなのにホタテの水煮が美味い
それぞれの白さを誇るスズランとユリと真珠とあなたの骨と
ひと粒のなみだで飾るさようならいつかまたねは約束じゃない
かなしみは生まれた時に吸い込んだ空気にそっと含まれている
ロウソクの芯がジジジと鳴る音はいのちの声か小さき炎
託されたバトンのようなみどりごのあくび尊し葬送の午後
はちみつを入れた紅茶は愛された記憶のように甘く染み入る
愛されて育つポトスが蔓延った家にさし込むひかりは希望
北の春一斉に咲くライラック命に満ちた街路のひかり
それぞれの白さを誇るスズランとユリと真珠とあなたの骨と 睡密堂 蓮 @suimitudou
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