小学生から人生をやり直す!

冬織神 歌檻

第1話 目が覚めたら小学生

 『柿本かきもと 夜鷹よだか』は目を覚ますと、視点が低くなっていることに違和感をおぼえた。


 それだけではない、あたりを見回すと自分の部屋であることは確かだが、置いてあるはずのものが消えていたり、置いていないはずのものが増えていたりしていて状況を整理するのにしばらくかかった。


 夜鷹は壁にかかった時計に目を向ける。『二〇一三年。四月八日。月曜日。四時十五分』時計を見た瞬間に自分の頭が一気に冴えていくのを実感した。


 目が覚める前まで、自分は確かに高校三年生だったはずだと振り返るが、目の前の時計と明らかに低くなっている視点の高さから、夜鷹は自分がタイムリープしたのだという結論を導き出す。


 夜鷹にしてみれば、このタイムリープは悪いことではない、今までの人生に思い入れがないため異世界に行けるのなら行きたいと思っていたほどだ。


 夜鷹はふと、自分は今何歳なのか?幼稚園児なのか?小学生なのか?という疑問を抱いた。それもそうだろう、西暦を見てそのころ自分が何歳だったのかを答えられる人はそんなにいないはずだ。


 「小学校入学前だとうれしいが、どうだろうな」


 部屋から出た湊はリビングのカレンダーを確認する。カレンダーの位置は昔から変わらないのだ。


 「うわっ、小学校の入学式当日じゃん」


 いや、入学した後にタイムリープするよりはいいか、入学前なら交流関係をタイムリープしてきた俺の考えで組み立てられる。とりあえずは、後々クラスの中心になる奴らに話しかけることにしよう。


 それに、せっかく時間の有り余っている小学生のころにタイムリープしたんだから、いろんなことに挑戦したい。動画投稿をしたり、楽器も弾けるようになりたい。もちろん勉強も頑張って、体力作りもしておきたいし、彼女や親友も欲しい。


 「やりたいことが、多すぎる!」


 やばい、テンションが上がってきた。これからの日々に期待と興奮が収まらない。そういえば、このころの俺はいつも目が覚めるのが早くて朝の散歩をしていた。一旦落ち着くために散歩しながら今後の計画を練るか。


 そうして、繰り返す日常にうんざりしていた元高校三年生の夜鷹はこれからの日々に思いをはせながら久しく堪能することを忘れていた朝の街を楽しんだ。

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