第2話 ライバルの演技
三番目に呼ばれたのは
フリーは『リバーダンス』に乗せて滑っているときに、緑色が基調となっている衣装を滑っていることが多いんだよね。
リバーダンスを踊る姿はとても楽しそうで飛び跳ねるようにジャンプを成功させていくんだ。
途中で転倒とかもあったけれど、すぐに立ち上がってプログラムを続けていくんだ。
リズミカルなステップシークエンスはリバーダンスのステップを組み込んでいるみたいだ。
ラストのスピンまで勢いに乗っていたのが、とても気持ちが良かった。
「うわあぁ~。暫定三位になっちゃったよ! 台落ちするわ」
隣の席に座っている
四番目は同じ
最初はリズミカルで楽しそうな曲だけど、どちらもスウィングジャズから選んでいるみたいだ。
陽気な歌声が聞こえてくる中で手拍子が起きて、みんなも楽しそうな演技をしている。
そして、後半のスピンを終えてからは彩瑛ちゃんの独壇場になった。
アップテンポなアレンジされている『シング・シング・シング』でエンジン全開なプログラムが始まっている。
クイックステップやジャズダンスに近いステップを踏みながら、ジャンプを跳んだりしているのが見える。
衣装はパキッとした明るめのオレンジ色の衣装を着ているんだけど、イメージは彩瑛ちゃんが憧れていた吹奏楽部が着ているユニフォームらしい。
「あれ、オレンジの悪魔だよね。イメージがさ」
「そうだよね。わかる」
「彩瑛ちゃん。すごいノリノリで滑ってるね」
彩瑛ちゃんの演技は元気いっぱいでも、確実に得点を取るみたいだったんだ。
点数はアクアカップのときよりも高くて、笑顔でガッツポーズを取っているのが見えた。
「うわ、抜かされた!」
伶菜ちゃんの声が聞こえてきてすでに台乗りは絶望的だと考えているみたいだ。
しばらく演技が続いて第一グループの最終滑走がやってきた。
『六番、
そのアナウンスが聞こえてきたときに、大歓声が全日本並みに聞こえたような気がする。
普通の東原スケートセンターが揺れているような感じがする。
そのときに白から水色のグラデーションの衣装を着た清華ちゃんが、リンクの中央に立ってポーズを取ろうとしていた。
流れてきたのは『戦場のメリークリスマス』のメインテーマである『Merry Christmas Mr. Lawrence』が流れてきた。
ピアノのメロディーが空から降ってくるようなイメージで見上げてから、ターンをしながら氷を一蹴り、また一蹴りスピードに乗って行く。
貸切練習のときに曲を検索してみたら、2001年にリリースされているバージョンだった。
振付はお父さんである
そのなかで天から舞い降りた精霊のように優雅なスケーティングを見せてくれる。
心臓がドキドキと緊張感が漂ってくるけど、難しい入り方をしながら滑っていく。
最初のジャンプは四回転サルコウを踏み切ってから、きれいに着氷させていることが見えたの。
「降りた! すごいよ!」
「ヤバ。清華ちゃん」
歓声が聞こえてくることが見えて、四回転ループもきれいに決めているのがわかった。
でも、清華ちゃんにかかる負担はとても大きいかもしれない。
トリプルアクセル+シングルオイラー+トリプルサルコウも、きれいに決めてからは単独のトリプルサルコウを成功させている。
「ひぇぇぇ……清華ちゃんのプログラム鬼構成だわ」
「男子の構成に近いもんなぁ」
そこから息をつく間もなくスピンもきれいな状態で入っているけれど、少しまだ自分のものになっていないような感じだ。
体に叩きこまれているのはわかるけど、まだ清華ちゃんらしい表現が見られていない気がする。
そこからトリプルルッツ+トリプルループとトリプルフリップ+トリプルトウループを入れてきている。
「これって8トリプル目指しているよね」
「確かにね……清華ちゃん、足の負担を考えて、トウループを仕方なく入れてるらしいし」
それを聞いたときに優雅にステップシークエンスを踏み始めているのがわかる。
徐々に盛り上がりへと向かっていくなかで、手拍子に乗せて氷の上で踊っているのがわかる。
体力がきつい状態でのコレオシークエンスが終わって、ダブルアクセルはなんとか決めている。
最後のスピンも終えてから曲と同じタイミングでポーズを取った直後に、大歓声と拍手が聞こえてきた。
立って拍手している人も多くて、ノーミスの演技で終えたばかりの彼女がふらふらしながらリンクサイドへと戻っていった。
清華ちゃんはコーチの
「これはかなりきつそうだな……」
「マジで滑りきってるの、奇跡過ぎるよ。毎回、ノーミスでできてないしね」
「これ、160点行くんじゃない?」
『星宮さんの得点、160.20。現在の順位は第一位です』
その絶望的な点数を聞いて会場内は歓声と悲鳴に近い声が聞こえてきた。
もはや同じ関係者席に座っているみんなは引いている表情で、
「あれ、俺が四回転ルッツにしたらあんな感じだぞ?」
「信じられねぇや」
シニア男子で参加予定の
最終グループでは
オペラ『蝶々夫人』が流れてきて優雅な芸者の仕草をしながらトリプルルッツのコンビネーションジャンプを成功させた。
トリプルアクセルを跳ばなくても、基礎点に加点の多いジャンプを成功させていく作戦だ。
ステップとスピンもレベルを取りこぼすことなく、ノーミスで滑りきることができていたんだ。
みんながスタオをしていて歓声がとても大きいく聞こえてくる。
その得点が暫定二位になっているのを見て、自分の順位が下がったのがわかった。
次に滑っているのは
流れてきたのはバレエ音楽『ドン・キホーテ』が流れてきて、赤い衣装を着た栞奈ちゃんが満面の笑みを浮かべて滑り出す。
最初のトリプルルッツ+トリプルトウループを跳んでいるけど、バレエの振付を忠実に表現しているのがわかる。
特にコレオシークエンスではバレエのアラベスクに似たスパイラルが、とてもきれいで拍手が起きているんだ。
後半でジャンプの転倒とかが多かったけど、表現面で加点を伸ばしていることが多い。
最終グループの演技が終わってから表彰式が始まろうとしているのがわかった。
一位には清華ちゃんが立っていて、二位が大技なしにパーフェクトな演技をした美樹ちゃん、三位がわたしという結果になっていたんだ。
「悔しいなぁ~。美樹ちゃんに僅差で負けるなんて」
「でも、友香ちゃんもよくノーミスで行ったね。レベル取りこぼしてないんでしょ? 大したもんだよ」
「ありがとう。清華ちゃんはレベチすぎだったな」
「それ、言わないでよ。四回転二本構成はかなりきついからね」
苦そうな表情をしている清華ちゃんはカメラ撮影が終わってから、みんなが話していることが多いみたいだった。
でも、本人も将来的にロシア選手と戦うための構成を考えているようだった。
ミラノ・コルティナオリンピックでは参加するかは、まだわからないのであえてプレシーズンの今シーズンに挑戦しているみたいだ。
「それにしても、あっという間に四回転二本跳べるようになっちゃったのか~。もううちも大学四年になるわなぁ。またミラノ合宿で会おうね」
「バイバイ」
「またね!」
そう言ってわたしたちも更衣室に行くことにした。
美樹ちゃんに会うのはミラノ・コルティナオリンピックに向け、イタリア北部で事前合宿を行う。
わたしと清華ちゃんも参加する予定の初めての海外合宿だ。
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