参加作品
01:雨の日はバスが遅い
ザー、ザー、ザー!
ビューン。
ザーザー!
バッシャン!
ザジザジ、ジャバジャバ、ジャバ。
あーあ、雨のふりかたが強くなってきちゃった。
どうろを走る車は、バスのていりゅうじょで待っているボクたちに水がはねるのも気にしないで、ビュンビュンと通り過ぎていくんだもの。いやだなあ。
お母さんが用意してくれた雨ガッパのおかげで服は濡れてないし、ランドセルもだいじょうぶ。
だけど、車が通るたびに傘がとばされないようにしっかりとカサの持ち手をにぎっている両手は、ぬれて冷たくなってくる。くっちょん!
やっぱり、お母さんの言うとおりに駅まで車で送ってもらえば良かったかな? 私立の小学校に通う子供は皆んなそうしてる、って言ってたけど。
ううん、ダメだよ、ここで負けちゃ。ボクだって男だ。雨の日だって、ちゃんと駅までバスでいけるもん。
それに、だって、約束したもん。
バスのうんてんしゅのお姉さんに。
まいあさ、バスにのるときにする、朝の『おはようございます』。
お姉さんはボクの時だけ、ボクにしかわからないように、にっこりと笑ってくれるんだ。笑ったときの、お姉さんの目にできるシワ、ボクは大好き。
バスがくる時刻、だいぶすぎちゃったけど、来ないなぁ。雨の日って、バスはいつも遅れるからいやんなっちゃう。雨の日は、バスしか走っちゃダメにすれば良いのに。
だいじょうぶかなあ、ちゃんと来るかなあ、お姉さんのバス。
どこかで、じゅうたい、に巻き込まれちゃった?
それとも、バスにのる人が多くて、入り口でおしくらまんじゅう、してる?
早くこいこい、お姉さんのバス。
もう──、信号機なんかぜんぶ無視して、前の車も抜いちゃって、待ってるお客さんも乗せないで、早く、早く、ボクが待ってる停留所に、こーい!
あ!
見えてきた。
雨がザーザーふっている、そのむこうから。
いつもボクがのってる市営バスのシルエットだ。
バスのワイパーがギュンギュンとすごいいきおいでフロントガラスにおちてくるあまつぶをふいてる。
フロントガラスのむこうには、いつものお姉さんの、りりしいバスの運転手さんの時の顔が見える。
どきん。
やっとお姉さんにあえる。
雨にぬれたりょうてのつめたさなんか、もうどこかへ飛んでった。雨がっぱの中のボクのカラダは、なぜだかわからないけど、ドキドキがとまらない。
お姉さんのバスは、ボクの目の前にキキっと音を立てて止まった。きっといそいできてくれたんだ、ボクのために。
プッシュー。
バスのトビラが開く。
ボクは傘をとじると、すごいスピードでバスに入って定期券をタッチする。
運転手のお姉さんは、ぬれているボクを見て心配そうに、赤いべにをぬった小さな口で声をかけようとする。
ボクはそんなお姉さんの心配をふきとばすように、ドキドキで顔を赤くしながら、大きな声であいさつする。
「おはようございます!」
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