この辛く苦しい世界で ボーナスゲームを
わたぬい
エピローグ
エピローグの先
「あーあ、こんなつもりじゃなかったのに。」
いつの間にか降っていた大雨の中、苦笑しつつ見る両手は鮮血でべったりと汚れている。
「あの場に何人いたっけ、ちょうど会議中だったからなぁ」
向かう先は1、2年ほど前まで使っていたセーフハウス。ギャングになる前に使っていた家を、念の為残して置いたもの。
本当に使うことになるなんてね、と独り言を落としながら、懐かしい帰路を歩いて、歩いて……ほんの少しして。
はて、かつての家は滅多に人が寄り付かないから買って、手間なのにそのまま残しておいたのではなかったかと考える。自他組織のシマではなく、旨みもないから誰も取らない場所。そういう吐き溜めのような路地に積まれたゴミに紛れて、誰かがしゃがみこんでいる。
「君、ここにいるのは危ないよ?多分堅気の人でしょう。」
話しかけても返事どころか下を向いて動くこと気配もなく、くせ毛のある長髪がじっとりと雨に濡れている。
仕方なくしゃがみ、無理やり顎を掴んで目線を合わせれば、ハイライトのない濁った瞳が、不思議そうに此方を見ていた。
「声は聞こえてる?……駄目そうだね、顔が可愛いから裏の人達にクスリでも飲まされて放置されちゃったかな」
「……」
僕が言った内容をようやく理解したのか、こてんと首を傾げ、その後ゆっくりと横に首を振る。
「あれ、違うの?でもどう見ても堅気でしょう。もしかしてクスリって表でも流通し始めた?物騒な世の中だね」
「おにーさんも、血まみれなのに?」
「僕のは返り血だからねぇ。早く帰ってシャワー浴びたいもん」
興味があるのかないのか、ふうんと生返事だけ残して、目の前の少女はまたぼんやりとし始める。
こんな所にいて、焦点のない目でしゃがみこんでいるということは迷子では無いだろう。他組織の人間では無いと本人に否定された。クスリを飲んだにしてはこっちの言ってる事を理解しすぎている気もする。本人の言葉を全部鵜呑みにする気はなくとも、とりあえず信じた上で引っ掛かりを覚え、質問する。
「……もしかしてさぁ、市販の頭痛薬とか大量に飲んだりした?」
僕の問いに、少女はあっさりとうなづいた。
「なんでそんなことしちゃうかなぁ……いやいいんだよ?僕赤の他人だし。だからってこんな危ない所にふらふらきちゃだめだよ。誰かに食べられても文句言えないし。」
軽くお説教をしつつ、本当に他の人間に何もされていないのかが気になり、宥めるように体をさすったり、頬に張り付いた髪を取ってあげても痛がるような反応はなく、子犬のように無意識的に擦り寄ってくるだけで終わった。
ただ、その割には目に光が無さすぎる。
「君、名前は?」
「ん……
「雹月……知らない苗字だから、完全に堅気の人か。」
自殺行為に等しいオーバードーズの上で、こんな所にいるということは家出だろう。
そして、何も知らない堅気の人間だとしてもこんなところには近よらない。つまりは、
「死にたいから、ここにいる?」
「うん。」
あまりにもあっさりとでた答えを咀嚼しながら、着ていた返り血まみれのジャケットを着せ、抱きかかえる。
「さて、だいぶ濡れちゃったし帰ろうかな。」
「……おにーさんが、私を殺してくれるの?」
「そんな人に見える?」
「うん」
そんな即答なことある?と言いかけたが、返り血まみれで初対面の少女を汚れた手のまま触り、血まみれにしたのは僕か……と納得し、違うよと否定をする。
思ってもいなかっただろう回答に困惑した顔へ、笑顔で返してみせる。
「そんなに捨てたい人生なら、僕がそれ全部もらっていいわけだ」
「…………え」
「だってそういうことでしょ?だからこんなところに逃げてきたんだもんね?ごめんね?助けてあげられなくて」
返り血だらけの顔で笑みを向ければ、少女は震えると予想していたのに。本人は、平然と納得した顔をしている。
「驚かないんだ。」
「ここがそういう場所なのは分かってた、から……来た時の記憶ないけど。まぁ、頭痛薬と睡眠薬をシャッフルして飲んだのが不味かったなぁとは思ってるのはあるけど、もうお兄さんの腕の中だし」
逃げられないし、と呟いた声に少しだけ面白くないなと思いつつ、もう一度笑みを向けて、理解の早い少女の頭を撫でる。
「そっか。ここで暴れられてたら帰った瞬間に躾ないとだったし良かったよ。さすがにシャワー浴びたい」
「突っ込まないよ……?というか、なんでお兄さんはこんな大雨の日に傘もなく血まみれで歩いてたの?せめて走りなよ。裏の人ってみんなそんな感じ?」
「ふーん……足音の聞き分けできるんだ?こんな大雨の中で。あと僕はもう堅気だよ。……組織の下の人間皆殺しにしちゃったけど」
うわぁ……となんとも言えない視線を無視して、やっと着いた元セーフハウス現我が家へ足を踏み入れる。
「(セキュリティそのままにしといて良かったな。)」
さすがに埃を被っている床を見て鼻と口を抑えているのを横目に着せていた上着を脱がし、そのまま元々着ていたワンピースに手をかける。
「……いや、自分で脱げるよ。私の体なんてお兄さん興味無いでしょ。」
「え?今から一緒にはいるのに?」
僕の言葉に固まり、は?と声を出した少女の服をゆっくりと脱がしていく。
「お兄さん待って、ほんとに待って……!!」
「僕はちゃんと言ったじゃない。全部もらっていいんだねって。」
やっと人間らしく迫る手を押したり引いたりして抵抗し出したのも関係なく、細い腕を掴み、もう一度にっこりと微笑んで、
「いらっしゃい、ゆっくり楽しんでね。綿凪ちゃん。」
低く甘い声で、少女の名を呼んだ。
・補足
とんでもない人に捕まってしまった可哀想な娘
雹月 綿凪(はくげつ わたな)
(15歳くらいのはず)
本当に運がなかったし、今まで自傷行為になること全て耐えていたのにとあることが原因で少量の睡眠薬と大量の頭痛薬を飲み、混濁した意識で家出してしまった。
拾われた時は死ねないのかー、そっかー、と思っていたけれど、服を脱がされたあたりで状況を理解した。本当に私を食べる気なの?正気??お兄さん一回りは年の差ない??と思っている。
APP18の美少女。小柄。胸はD辺り。
(この前提条件がないと話が書けなかったため苦肉の作で綿凪はしてしまっていますが、現実では絶対にやめましょう。
どんな事情があろうとも、現実でそんなことをする理由にはなりません。)
古巣を半壊させて少女を拾った青年
夜鵺 眞(よや まこと)
(27〜29歳のイメージだったけどもうちょい若いのかも)
本当に運が良かった。組織の拠点にボスと部下(7人程度)しかいなかったため、部下を1人アサシンキルして、他は乱闘で勝った。ボスだけは峰打ちにしたつもりらしい。(幹部格は偶々外出中)
本当に衝動でやってしまったため後をどうするとか何も考えてなかった。思わぬ拾い物をしてしまったのでほくほく顔でお家()に帰る。
初日で何かするとかは考えていなくて、言うことを聞くように躾てからかなと思っていた。嬉しい誤算。
APP18の美青年。身長180くらい。偶に20代前半くらいだと思われる。
(こんな怪しい人について行ってはいけません。本当にガチで。返り血まみれの人間がその辺彷徨いてるのがそもそもおかしいんですが。)
ーー書きたいシーンがあるので頑張って続けます。たぶん
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