旅
瀬名郁生
第1話
男はため息をついた。
自分の中の何とも言い難い息苦しさから逃れるために。
男は思った。
「そうだ、逃げよう」と。
男は大学2年の20歳。
現役で行きたかった大学に届かず、なんとなく受かった大学で2人程の友人と数人の知人と共に程々の生活をしていた。
両親はやりたいことを尊重してくれるし兄弟とも仲が良い。
それでも漠然と生きづらかった。
休学に値する理由もなく、加えて休学によってこの環境が延びるのも嫌だった。
男は思った。
このまま何もかも捨てて逃げてしまいたいと。
恵まれた環境に甘えだとはわかっている。
だがなんとなくすべてが嫌になった。
一旦考えるのをやめよう。
男は口座から今まで貯めた全財産およそ50万円を引き出して旅に出ることにした。
全財産を使い切りたくはない、だが充実した旅がしたい。
そう思った男は3泊4日の函館旅行を決意した。
函館を選んだ理由は
「暑すぎず、新幹線で行けるから」である。
男は体力がない上に高所恐怖症で飛行機が苦手だった。
数年前、高校の修学旅行で訪れた沖縄に行くことも考えたが今は夏休み。
せっかくの機会だからと行ったことがなくて涼しい北海道、中でも新幹線で行ける函館に行くことにした。
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