宮廷をクビになった植物魔導師はスローライフを謳歌する〜のんびり世界樹を育てたら、最強領地ができました〜

蛙田アメコ

1章

第1話 どうやら、ハメられたらしい。

 古の宮廷魔導師たちが残した研究成果という名のガラクタの山。

 開かずの資料室と呼ばれる倉庫で、ガラクタをかき分けていたときに、あるものを見つけた。

 透明な硝子瓶に保存されている、親指の爪ほどの種子だった。


 植物は好きだ。

 というか、専門。

 この世界の植物の種子には、そこそこ詳しいつもりだ。

 種子を見ればある程度はどんな植物のものかは推測できるくらいには。


「……なんだ、これ?」


 それなのに、その種子はさっぱり正体がわからなかった。

 なにせ銀色で、仄かに青く光っている。

 とても特徴的で、とても美しい。

 持ち前の好奇心が疼いた。いいぞ、新種かもしれない。


「いいね、これは研究対象に──」


 そのときだった。

 バタン、と資料室の扉が乱暴に開け放たれる。

 なだれ込んできたのは、近衛兵団。


「その場を動くな、手を挙げろ!」


 なるほど。


 宮廷魔導師リィト・リカルトは悟った。



 ──どうやら、ハメられたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る