握る手に次の春もと残花おつ
握る手に次の春もと
※季語は残花。咲き残りの桜のことです。
「この公園でみる桜も、さすがに最後かな」
三回目の公園。
さすがにもう花見ではなくて、散歩になっている。
でも、一緒に最後の桜がみられたのは、よかったな。
桜。少しだけど、まだ残ってくれていた。
「うん、でも、今年は最後、でしょ」
あ、そうか。そうだね。
「……う、うん。そう。来年も、また、来ようね」
「ね」
そう、そうだよ。
今年は、最後の桜。
また、次の春も、君と。
「……もう少し、遠くも歩いてみようか」
「うん!」
僕が差し出した手を、嬉しそうに握り返してくれる、君。
僕はまだ、こんなふうにしか、手もつなげないけど。
もう少しだけ。
こうして、二人で歩かせてほしい。
そして、また、来年も、その次も、ずっと。
僕の隣で桜をみてくれているのが、君でありますように。
※おつ、には落つ、墜つ、乙を掛けております。
小さめのビニールシート、今日はお留守番です。
きれいにされて、干されたあとで、また来年、活躍してくれるのでしょうか。
最後の桜を、少しだけ……のつもりでしたが、遠回りをして公園を巡る、その間。
つないだ手は、離れないみたいです。
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