第2回短歌・俳句コンテスト【俳句】一句部門『花』

豆ははこ

花筵ちかしことこそ嬉しけれ

花筵はなむしろ ちかしことこそ 嬉しけれ


季語は花筵。花見の筵のことですが、現在はビニールシートにも用いられている季語です。

筵は、藁や竹などを編んだ敷物のことです。(コンテスト参加作品なので、念のため)



「……ごめん、このビニールシート、狭かったね」

コンビニフードと飲みものと、僕と……君。明らかに定員オーバーなビニールシート。

袋には一人から二人用、って書いてあったけど、子ども用だったのかな。


「お花見日和だもんね、今日」


そうだよね、と頷きながら、僕は思う。


……そもそも、どうして、こうなった?


「花見、行こうかな」

休講で暇になったから、の、単なる思いつきだったんだ。

ひとりごとの声は、確かに大きかったかも知れない。


でも。

「一緒に行っていい?」


必修科目のクラスみんなの、憧れの君に聞かれていたなんて!


「いい、けど……」

「あそこの公園だよね。コンビニ行こう!」


大学に近い、あそこ。お花見スポットの公園の、そのまたすぐ近くのコンビニ。


ビニールシートは、ほぼ売り切れだった。


逆に、ホットスナックとか色々、食べものはよりどりみどりだったけど。


だからこそ、なんだよね。

たくさんの食べもの、飲みもの、僕たち。


……近いよね。ごめん。


「僕が立てば、なんとかなるかな」

「なら、私が立つよ! お花見、無理についてきたの、私だし」


「それはだめだよ」

「なら、このままでいいって」


いいの?

近いよ、この距離。

嬉しいよ、嬉しいけど。大丈夫なの?


いや、いくらなんでも。

もしかして、とか、思ったりは……してないよ?



※ちかし、には、近し、と親し、を掛けております。



……嬉しいのは、二人とも一緒です。


どうか、よいお花見を。


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