「…何から何までありがとうございました」

 なぜ早く合格したことを言わなかったのかとしばらくの間は問い詰められたが、その後は2人からの祝福コールが鳴りやまず、半日中もてなされ続けた。

「いいんだって」

「そうそうっ。急なこと過ぎてこれ位しか俺たちにできなかったけど。東京楽しめた?」

「はい!めっちゃ楽しかったです!しょー君運転ありがとうね」

「どういたしまして」

 車の荷台からキャリーケースを下ろしてくれたしょー君だが…

「…しょー君手。その手は?」

 渡してくれたはいいものの、一向に手を放そうとしない。何なら自分の方に戻していく。

「お前を1人で帰すのが心配なんだけど」

「俺も心配。ねぇ向こうまで着いていったらダメ?」

 東京の中でも人の行き来が少ない場所を選んで下ろしてもらった。とはいえ東京。いつだれが私たちの会話を聞いているか分からない状況で長話はできないし、ましては一緒に新幹線に乗るなんて行動をしたらネットで騒がれてしまうかもしれない。

「大丈夫ですからっ。ご心配ありがとうございます!流石に家の近くまで来てもらう訳にはいかないので、今日はここで大丈夫です!はいっ、しれっとふーがさんもつかまない!」

 いつの間にか私のキャリーケースを使う手が1本増えていた。

「また会ってくれる?」

「え?」

「約束してくれるなら離すよ」

「ふふっ、もちろんです!むしろ私の方からお願いしたいです。連絡も早く返すように頑張りますので…」

 そういうと手は放してくれたものの、頭をなで繰り回された。

「おーい俺居るの忘れてない?」

「忘れてない忘れてないよ!しょー君3日間ありがとうね、楽しかった」

「俺も楽しかったよ?まぁ、あんまり無理をしないように。気を付けてな」


 2人に見送られながら改札をくぐり、新幹線の乗り場を目指す。

「…いや多すぎ」

 お土産と言って2人がくれた紙袋には大量の食べ物や私の好きなキャラクターのグッズなどが入っていた。

 …これは本当に、ふーがさんがしょー君化してきているな。ついでに貢癖も。


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