二十五 R1
グリーゼ歴、二八一五年、十一月七日。
オリオン渦状腕深淵部、グリーズ星系、主惑星グリーゼ、北半球北部。
グリーゼ国家連邦共和国、ノラッド、カンパニー、地下五階、研究ユニット。
〈SD〉のコントロールポッドの4D映像で、惑星ダイナスからの攻撃がやんだ。
グリーゼ艦隊は攻撃を停止した。グリーゼ艦隊は自力でデロス帝国の戦力を潰滅したと思っているらしく、しばらくすると、赤みを帯びた青白いチェレンコフ光を発して、惑星ダイナスの宙域から消えた。
「グリーゼ艦隊が、グリーゼの惑星ラグランジュポイントに来るよ!」
Lが5D座標を見て伝えた。
「皇帝を調べるよ!
PD。あたしとLのモーザPePeをオータホル城へスキップしてね。
DとKと大佐のモーザPePeは、〈グリーゼ〉を監視してね。
じゃあ、みんな!ヘルメットを被ってね!」
Jの指示で、〈SD〉のコントロールポッドに居る全員がヘルメットを被った。
精神空間思考が可能なら、〈SD〉のコントロールポッド内から、スキップドローンとしてのPePeたちとリンクして、精神と意識、思考をシンクロできる。精神空間思考が不得手でも、改良したヘルメットを着用すれば、確実にシンクロできる。
PDが伝える。
「わかりました。モーザPePeを二体、オータホル城の破壊されていない所へスキップします。R1(オータホル城のアンドロイドR1、オリジナルユピトルの部下)に、状況を報告させましょう。
他のモーザPePeを戦艦〈グリーゼ〉の外殻外壁へスキップします」
その直後、モーザたちにすりかわって惑星ダイナス宙域に留まっていたモーザPePeたちが青白いスキップ光を発して、惑星ダイナスの宙域から消えた。
オータホル城の待機の間から謁見の間へ通路を歩きながら、R1が二体のモーザPePeに精神空間思考で伝える。
『ユピテルから、時空間転移伝播で指示を受けています。ここでは精神空間思考で話してください』
『わかったさ。皇帝はどうしたんさ?』
LのモーザPePeがR1の左横の空間に浮かびながら、R1とともに移動している。
JのモーザPePeはR1の右横にいる。
『記録をごらんください』
R1はJとLのモーザPePeの精神空間思考域に4D映像を送った。
リブラン王国からの攻撃で〈オータホル〉のレプリカユピテルを破壊された時点で、オータホル城は、修復とコントロール機能を無くした。メテオライトのスキップ攻撃と多弾頭多方向ミサイル・ヘッジホッグの攻撃で、スキップドライブを破壊されたホイヘンス艦隊とオータホル艦隊は、亜空間スキップも大きな反撃もできずに残骸と化し、グリーゼ艦隊の攻撃を待たずして、オータホル城は陥落状態にあった。反撃できるのは地上防衛拠点のマニュアルによる攻撃だけだった。
『このような状況下で、皇帝はオータホル城の兵士全員を集めました』
R1は謁見の間の自動ドアを破壊して開いた。
『なに、これ?』
Jは驚いた。謁見の間に、砂のような固まりがいくつもあった。なかには人のような形もある。
『ごらんください』
R1がJとLのモーザPePeに、クラリックスキャンを伴った4D映像を送った。
謁見の間に、赤橙光に発光するディノスの兵士が集まると、白色に発光する皇帝が玉座に座った。同時に、多数のモーザが謁見の間に現れてディノスの兵士を囲み、皇帝と兵士に白色光を放って、皇帝の白色光と兵士の赤橙色を吸いとった。皇帝と兵士の身体は砂のようになってフロアに倒れた。
大変だ!とっても大変だ!ホイヘンスが精神と意識だけになって逃げた!
そう思いながら、Jは自分をおちつかせて伝えた。
『ありがとう。R1。もうすぐユピトルが戻ってくるよ。待っててね』
『ありがとう。J。プロミナス様も、戻ってきますね?』
『もちろんだよ。そうだよね。PD・・・』とJ。
『J。R1にはユピトルが説明しますから、ご安心を』
PDがJに伝えてきた。
『わかりました。J様、またお会いしましょう』とR1。
『じゃあ、あたしたちは行くね』
『はい』
『いろいろありがとう!』
JはR1にそう伝えて、PDに指示した。
『PD。あたしとLのモーザPePeを、〈グリーゼ〉の外殻外壁へスキップしてね!』
『わかりました』
JとLのモーザPePeは、グリーゼ艦隊の旗艦〈グリーゼ〉の艦体外殻の外壁へ時空間スキップして、DとKとカール大佐のPePeと合流した。
JとLは、〈SD〉のコクピットのコントロールポッドで、ヘルメットを外した。
ヘルメットを外したDとKとカール大佐が、JとLの説明を待っている。
「モーザが、皇帝と兵士の精神と意識を時空間スキップさせたさ。行き先はグリーゼ艦隊だベ!」
Lの鼻息は荒い。Jは状況を説明して、〈グリーゼ〉を探査する方針を話した。
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