二十四 攻撃と潜入
グリーゼ歴、二八一五年、十一月七日。
オリオン渦状腕深淵部、リブライト星系、リブラン小惑星帯。
小天体ケクレ近傍、戦艦〈プロミナス。〉
PDから、グリーゼ国家連邦共和国がデロス帝国に宣戦布告した、と連絡を受けて、リブラン王国はデロス帝国へ攻撃を開始した。
「小天体を時空間スキップ攻撃しろ!」
〈プロミナス〉のブリッジに現れている4D映像で、ディアナがリブラン小惑星帯の小天体を、惑星ダイナスに留まっているデロス帝国の発進前のホイヘンス艦隊とオータホル艦隊のスキップドライブへスキップ攻撃している。
「ミサイルを放て!」
プロミナスがディアナたちと指揮官たちに指示した。
「了解!」
各戦艦の指揮官たちと各戦艦AIは〈プロミナス〉のコントロールポッドに居る。指揮官とAIたちは各戦艦に指示を与えて、ホイヘンス艦隊とオータホル艦隊のスキップドライブを多弾頭多方向ミサイル・ヘッジホッグで攻撃した。
デロス艦隊の〈オータホル〉のAIレプリカユピテルはディアナのサブユニットだ。ディアナと部分的にリンクしてシンクロしている。〈オータホル〉が破壊すればレプリカユピテルが破壊して、レプリカユピテルとオリジナルユピテルの人格も破壊し、プロミナス艦隊のディアナたちAIの人格も破壊する。
だが、デロス艦隊の〈オータホル〉が破壊しても、プロミナス艦隊の〈プロミナス〉、〈オミネント〉、〈リブロット〉、〈ディラック〉の四戦艦のコントロールユニットとAIは消滅しない。新たなプロミナス艦隊として、新たなディアナとサブユニットの人格が復活する。破壊から復活まで一時間ほどだが、人工知能には膨大な時間だ。
プロミナスが伝える。
「ディアナ!デロスの艦隊のスキップドライブを破壊した!
マスタープロミドンに、
『レプリカユピテルを破壊する』
と伝えてくれ!」
「プロミナス様、了解しました。
マスタープロミドン!ディアナです。レプリカのユピテルを破壊します!」
「プロミドンディアナ。了解した。作戦を続行します」
PDのアバターがコントロールデッキに現れて承諾した。
ただちにディアナはAIたちに連絡する。
「ユピテル。リブロット。ディラック。みな、覚悟はいいですね!」
「覚悟しました」
ディアナの呼びかけに、AIたちが納得の意志を4D映像で伝えた。
「デロス艦隊に、電磁パルス魚雷とメテオライト、多弾頭多方向ミサイル・ヘッジホッグをスキップしました!
レプリカユピテルが破壊しました・・・・」
ディアナの言葉がしだいに、単なる音声合成の平坦な口調に変ってゆく・・・。
ディアナに代ってPDが指示した。
「デロス艦隊に攻撃を続行する!
地上部隊の拠点に電磁パルス魚雷とメテオライトとヘッジホッグをスキップする!」
5D座標上で、惑星ダイナスの地上にスキップ光が閃光し、地上に降り注ぐメテオライトと電磁パルス魚雷とミサイルが4D映像に現れた。
プロミナス艦隊のスキップによる電磁パルス魚雷攻撃で完全にコントロール機能を無くしたデロス帝国の艦隊と惑星ダイナスの地上部隊に、グリーゼ艦隊がさらに電磁パルス魚雷と粒子ビームパルスとミサイル攻撃した。
プロミナスは、5D座標と4D映像を見た。5D座標上の惑星ダイナス宙域に、グリーゼ艦隊を示す緑の輝点の周囲に、戦闘機より小さな緑の輝点が多数ある。モーザPePeだ。
「モーザPePeか?」とカムトン。
デロス帝国の皇帝ホイヘウスは、惑星ダイナスがグリーゼ艦隊から攻撃されていると思っているはずだ・・・。プロミナスはそう判断した。
4D映像で惑星ダイナスからの攻撃がやんだ。グリーゼ艦隊が攻撃を停止した。
グリーゼ艦隊は自力でデロス帝国の戦力を潰滅したと思っている・・・。
しばらくすると、赤みを帯びた青白いチェレンコフ光を発して、グリーゼ艦隊が惑星ダイナスの宙域から消えた。
その直後、グリーゼ艦隊を追って、モーザPePeが青白いスキップ光を発して惑星ダイナスの宙域から消えた。
「グリーゼ艦隊が主惑星グリーゼへ向った。非常事態だぞ!」
5D座標を見て、カムトンが叫んだ。
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