救国のエフィーリア【元:召喚された神子姫は王太子の子を望まれる】

アナマチア

プロローグ(CM風)


 あたしの名前はいずみ 美澪みれい


 本好きの高校二年生。


 大学進学へ向けて勉強中の普通の女子高生。……だったはずだったんだけど……。



 ある日の夕暮れ、図書委員の美澪は、図書室で一冊の本を拾った。


「何これ?」


 古びたボロボロの本を開いてみると、内容は、不思議な言語と挿絵で埋め尽くされていた。しかし――



「ゼスフォティーウ様」



 突如、頭に浮かんだ名前を口にした瞬間。


 足元に空いた、暗く大きな穴の中に、吸い込まれてしまった。


 そうして気がつけば、美澪は異世界に召喚されていた――



 異世界に召喚されたことをきっかけに、さまざまな人物に出会う美澪。



神の愛し子エフィーリア様。初めてお目にかかります。私はここ、ブロネロー神殿の神官長を努めております、リヴァースと申します」



 写し鏡の世界で出会ったのは、神だと名乗る少年ヴァル。



「ボクの名はヴァートゥルナ。ペダグラルファ建国に携わった神々の中の一柱ひとはしらで、今は水の国ヒュドゥーテルの守護を司っているよ。気軽に『ヴァル』って呼んでね!」



 ヒュドゥーテルに召喚された美澪は、メアリーと名乗る女性と出会い、つかの間の休息を得る。



「お初にお目にかかります。わたくしは、メアリー・ド・ラウィーニアと申します。メアリーとお呼びください。本日、神官長様より、エフィーリア様の専属侍女長に任命されました。御用の際は、なんなりとお申し付け下さいませ」



 そして、神殿の聖なる泉の畔で再会したヴァルは、身体が成長していて――



「あなた……ヴァル、なの?」


「言ったでしょ、迎えに行くって。だから迎えに来たんだ。――あとこの姿は地上での仮の姿ってやつ。どう? ボクかっこいい?」



 ヒュドゥーテルで過ごしたのはたったの五日間。



「エフィーリア様。ご武運を祈っておりまする」


「はい! 行ってきます!」



 美澪は輿入れする為に、火の国エクリオへ赴くことに。



 新たな地で出会ったのは、褐色の肌に銀糸の髪をもつ、琥珀色の瞳が美しい男性だった。



「私はエクリオの王太子、イリオス・フォン・ゼスフォティーウ・エクリオと申します。……あなたの夫となる者です」



 

 しかし、エクリオに来てから、ヴァルの様子がおかしくなってきて――



「……あいつ、美澪のこと利用するつもりだ」



 ついには、消滅した筈の女神ヴァートゥルナに身体を乗っ取られてしまう。



「嫌、嫌よ。もっと愛して……。わたくしのことを愛してるって言ってくれたではないの。永遠に愛していると言ったではないの……!」



 美澪の夢の中にまで現れるようになった、ヴァートゥルナ。



「ゼス……フォティーウ、さま……」



 異常なまでにゼスフォティーウ神に執着する彼女は、いったい何を求めているのか。



 眠る美澪にヴァルは語りかける。



「美澪。キミは特別なんだよ? だから、こんなくだらない使命なんてさっさと辞めて、ボクと一緒に神域に帰ろう? そしたらずーっと一緒だよ」



 仄暗い表情を浮かべるヴァル。そして、



「ひどい、酷いわ! 何故あなたから口づけたの。今朝、わたくしに愛していると告げた唇で!」


「グレイス……」



 エクリオの王妃とイリオスの関係は……?




「国王陛下――いえ、父上。これは一体……」


「元老院の狸爺共が、グレイスを廃位させるつもりがないなら、儂も一緒に王位を退けなどと言ってきた」



 様々な想いが交錯する中、美澪は幸せを掴めるのか?





「ああ……そろそろお別れの時間みたいだね」


「――い、いやっ! いやよ、ヴァルッ! あたしっ、行きたくないっ! お願い! 元の世界に帰してっ!」


「ごめんね」


「ヴァル! ヴァル! ――っ、ヴァルーーッ!」





「――ボクが永遠に愛してあげる」





 救国のエフィーリア。


 開幕。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る