遠吠え

@yozakura014

滲む月


「……あたたかい……」


手首の傷から生あたたかい鮮血がぽた、ぽたと滴っていく。視界がぐらぐら揺れて、見上げた月が滲んでいく。



さみしくて、さみしくて、さみしくて。



私は遠吠えみたいに声を上げて泣いた。



片手に持っていた缶チューハイのしずくが傷口につたって、痛いんだか冷たいんだかあたたかいんだか恋しいんだか愛しいんだか切ないんだか嬉しいんだか哀しいんだか分からなくなって、境界が全部消えてさみしいという概念になったようで


こんなに強い気持ちなら、何もかも巻き込んでしまうような力で、


月にだって行けるのに、


と思った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遠吠え @yozakura014

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画