ひきこもり天使の外出計画

夏芽椎

第1話 ご近所天使はひきこもり

 近所にはとても可愛い少女が住んでいる。

噂の彼女は綺麗な白髪の美少女

男の描く理想の女の子などと言われているらしい


僕、緋椰ひやあおい高校2年

ご近所付き合いが上手い親によりめんどうな役目を

押し付けられたかわいそうな男だ。

今日も学校終わりに寄らなければならないところがある

それが樋ヶ島ひがじまさんの家だ。

樋ヶ島さんの家には天使と噂されるほど可愛らしい

女の子がいる。

あれが天使なんて...。


ピンポーン


インターホンを鳴らす


「は~い」


樋ヶ島さんのお母さんの声と共に勢いよく扉が開く


「一応今日も呼びに来ました」


「いつもありがとうね」


リビングへと戻る樋ヶ島さんのお母さんに続き家へ上がる


「お邪魔しま~す」


「はいこれ、それじゃ今日もお願いね」


「はい、頑張ります」


グッとこぶしを握り締め、二階に上がる

樋ヶ島さんの部屋の前に立ち、頂いた合鍵で部屋を開ける


「入るぞ~起きてるか?」


部屋に入ると、枕や化粧品やらを投げつけてくる


「危ないからやめなさい」


「じゃあ勝手に入ってこないで!」


「それは無理だ雅姫みやびのお母さんの頼みだし」


「前から思ってたけど!なんで合鍵持ってるの!」


僕は頂いた鍵を見せ笑みを浮かべ


「ん?これマスターキー」


「──最低」


「僕に言うなよ、雅姫のお母さんに言って」


そういい僕は散らかった床を片付けながら窓へと向かっていく。

カーテンに手をかけると


「開けないで!」


布団をかぶり、そう叫ぶ


「私太陽食らうと...その!死んじゃうの」


「いつ吸血鬼になったんだ?」


そう言う雅姫を無視してカーテンを開け、丸くなった布団をはぎ取ると

ボールのようにコロコロと転がりベッドから落ちた。


「イッたい」


「どうだ夕方の太陽、死にそうか?」


「悪魔!!」


頭にできた小さなたんこぶを押さえながらそう言う雅姫

白髪でぼさぼさな髪、部屋から出ていないからか

異常な程白い肌、そして整った顔

たんこぶ込みで普通に可愛い。


「今日さ~焼肉にしようかと思うんだけど、どう?」


僕はいつも通り適当な用件で外へと誘う


「嫌だ、行かない!外には出ない!!」


そう言い、取られた布団を取り返し包まり始める

じっとこちらを睨む雅姫、今日もまぁでないよねと

諦めをつけ早めに帰りの支度を始める


「じゃあ今日は帰る、肉食べに行きたいから」


「ダメ...」


そう小さくつぶやく雅姫を無視し部屋を出ようとする


「羨ましいから!!行かせない!!!」


そう言うと僕の腕をつかみ引き留めようとする

樋ヶ島ひがじま雅姫みやび彼女は

4年ひきこもっていて外に出ることもない

体力もそこまでないだろう

なのになぜ僕は力負けしているんだ・・・。


「離せぇ!僕は!!肉を!食べるんだ」


「行かせない!絶対に!羨ましいから!!」


「なら!お前も!!来れば!いいじゃん」


「・・・」


急に離されたからか、勢いよく壁にぶつかる

痛い鼻をつまみながら、雅姫の方を向く


「急に離すなよ!」


僕がそう言うと雅姫がクローゼットをあさっていた


「私も行く」


「「・・・」」


大きな音で気になった雅姫のお母さんが開いたドアの前で

僕と同じく固まっていた。


「雅姫が...外に!?」


雅姫のお母さんがうそでしょ言わんばかりに声を上げる

雅姫のお母さんの声で僕が目を覚ます

1年...来る日も来る日も何を誘っても一度も外に出なかった雅姫が...

外に出る?


「え、どうしたいきなり熱でもあるんじゃ」


「ないから、お肉...食べたいだけ羨ましいし」


ボソッとそう言うとボサボサの長い髪をまとめようとする

数年やってないからか全く上手くまとまらずバッと弾けるように

髪が出てくる


「お母さんがやってあげる」


隣の部屋を開けそう言った

何も言わずに駆け足で隣の部屋に連れて行くと

雅姫のお母さんが


「男の子は一階で待ってなさい」


そういい隣の部屋へ入っていった

数分が過ぎただろうか

途中水の音がした気がしたが、二階の部屋からそんな音がするわけないと

気にしないことにした。

そこから数分経ち部屋の扉が開く


「おまたせ碧君!」


ウキウキな雅姫のお母さん、後ろでジッとこちらを見つめる雅姫が居た

三つ編みのツインテール色白の肌、恥じらい

隠れている雅姫はまさに噂の天使だ


「髪よくなったね」


「うん...」


恥ずかしいのかそっけない返事が返ってきた

髪の質感が違う気もするが二階の一室にそんな...ね?

旅館なのかここ

疑問が増えるばかりの僕もとりあえずと


「じゃ行くか」


そう言い雅姫の手を取った、玄関へ向かう途中震えていたが

靴を履き終えると収まっていた。扉を開ける、夕暮れの太陽の光が雅姫を照らす

白いパーカーにジーパン、赤く照らされ目を瞑る雅姫はとても可愛く

天使そのものに見えた。


「どうしたの?」


見惚れて立ち尽くしている僕に雅姫がそう言った


「なんもない、とりあえず行こうか」


僕がそう言い歩き始めると雅姫はフードを深くかぶり外へと出た。





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