第2話 詐欺師の気持ち Heart of the Sludge

 俺は、恵まれない女に甘い夢を見させてやることを生業なりわいとしている。世間では『結婚詐欺』だなんて言われるが、詐欺なんかじゃない。実際、俺のようないい男が幸せいっぱいのデートをしてやっているんだし、脳みそがとろけるような甘い言葉を耳元で囁いてやったりもする。そうやって多くの女たちを夢見心地にしてやった。求められれば身体だって重ねてやったし、クスリを食わせて本物の天国を味わせてやったりもした。女も同意の上でだ。それが悪い事かい?

 ただ、世の中どんなコトにだって金はかかる。俺は自他共に認める最高の男だ。俺のチート級の美貌は、きっと神が授けてくれたモノだ。そんな最高の男が一時的にでもをしてくれるんだ。俺だってボランティアじゃない。好みじゃない女と寝るのは、結構苦痛なんだぜ?


 だから、その料金をいただいているってワケ。


 金の切れ目が縁の切れ目って言うし、料金の回収を限界までしてやって、これ以上の回収は無理だと感じたら、俺のサービスはそこで終わり。泣きつかれても困るから、いただけるものを全部いただいてドロンさ。こういう関係は後腐れなくやらないとな。もちろん思い出だって残さない。写真やSNSは禁止で、連絡はメールだけ。なんだからしょうがないよね。くくくっ。


 俺と別れたのが寂しすぎて、思わず呼吸を止めて死んじゃったウサギみたいな子もいた気がする。よく覚えてねぇけど、まぁ俺に全財産をお布施できたんだ。もう現世に未練はないはず。頑張って転生して、また俺と出会えるといいな。本当にそう思ってる。


 もちろん、金は用意しておけよ。


 あぁ、また空腹が襲ってくる。世の女どもよ、その身と金を捧げて、早く俺を満たしてくれ……



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