大文字伝子が行く282
クライングフリーマン
試食会
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課警部補。愛宕の相棒。EITOの『片づけ隊』も手伝う。
中津敬一警部・・・元警視庁捜査一課刑事。現在は警視庁テロ対策室勤務。興信所を開いている、弟の中津健二に調査依頼をすることが多い。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
久保田嘉三管理官・・・EITO元司令官。柴田管理官と交替で人質交渉人を勤めることもある。警視庁テロ対策室とEITOの橋渡しを行う。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
財前直巳一曹・・・空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・海自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
原田正三警部・・・元新宿風俗担当。警視庁からのEITO出向。
須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
天童晃(ひかる)・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。EITO東京本部武術顧問。
矢田浩一郎・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。
本庄尚子・・・本庄病院院長の姪。弁護士。
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
※他に、エマージェンシーガールズ、EITOガーディアンズ。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
== EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズの後方支援部隊である。==
午前0時過ぎ。伝子のマンション。
たまたま起きていた高遠は、何気なくBase bookを起動した。
「白状する。ちょっと、苦しい。EITOの諸君。次のお題だ。」
そう言って、ピースクラッカーが出したフリップには、「破滅頃が泣くのよ」と書いてあった。
伝子が近寄り、自分のパンティーを高遠の頭に被せた。
「もう。雰囲気ぶち壊し。朝まで無制限って言っただろう?」「伝子が勝手にルール作ったんじゃないの。」「何を。生意気、婿養子。」「言葉と態度が違うんだけど。アナグラムは明日、じっくり考えるよ。」
高遠は、自分のPCを閉じて、伝子に引かれるまま、寝室に向かった。
どうやら、伝子は『2人目』が欲しいらしい。池上院長にも指摘されたことだ。
前線の指揮は、今なぎさが執っている。伝子は『総司令』の、言わばデスクワークだから、体力が余っている。
それでも、高遠は思う。『授かり物』だから、計画生産など出来ない、と。
翌日。午前9時。EITO東京本部。会議室。
「変な、日本語。」口を滑らしたのは、大空だった。
「私も、そう思う。」と、財前が言った。
「やっぱり、アナグラムなんですか?警視正。」と、仁礼が質問した。
「本人が苦しいって認めているんだから、アナグラムを置き換えれば、何らかの意味があるんだろう。高遠君は?」と、夏目は伝子に尋ねた。
「ちょっと時間が欲しいって言ってました。ひかる君も青木君も旅行に行ってるし。ちょっと・・・寝不足もあって、時間がかかりそうって・・・。」
「寝不足?」と、原田がつい言ってしまった。
「原田くぅん、後で報告書、持って来るように。」と、伝子は原田を睨み付けた。
原田は、深く後悔した。
「理事官が記者会見に行っているから、おさらいをしておく。」
夏目警視正がそう言った時、マルチディスプレイに久保田管理官が映った。
「お邪魔かな?」「いや、これからです。」「まず、枝だった大上だが、彼は天童さん達のお仲間の墓参りをした墓地を管理する寺の住職だった。」
「じゃ、あの時のお通夜の・・・。」と伝子が言いかけると、「いや、それは大上の弟だ。あの寺は、檀家が多い。大上と大上の弟と、それぞれの息子で仏事法事葬儀の読経をこなしている。何故、ダークレインボーに入ったかどうかまでは、まだ聞き出せないが、闘いのことを直前に家人に話し、仏事等は、宗派同門の寺から応援に来るように手配していた。一佐や大文字君のカンの通り、ピースクラッカーは美術品等を傷つけたくない性格らしい。大上はピースクラッカーと気が合うから、枝として信頼を置かれていたようだ。何故負け戦かも知れないのに闘いに臨んだのかと尋ねたら、『約束だから』と応えた。負け戦だろうと見当を付けていたのは、強くて賢いからだ、と一佐を褒めていた。そして、そのバックアップをしている大文字君もだ。」
「管理官。ライフルマンの賊はやはりピスミラでしょう?」
「うむ。筒井君がハンカチをねじ込んだから自殺はされなかったが、こちらは口が堅い。一筋縄じゃいかんな。」と、管理官は筒井に応えた。
「ああ。そうだ。天童さんの狙撃を通報したのは大上だった。檀家に『てんどうさん』がいて、間違われたことにすぐ気がついたそうだ。こちらは、天の道と書く天道さんだ。違う道から帰ったんだ。間違い殺人事件になるところだった。」
「大文字君が迅速に手配してくれたから、天童さんと須藤先生の結婚式が出来て良かったです。2人とも感謝しているそうです。」と、夏目は管理官に報告した。
「披露宴のビデオ、観たよ。とても幸せそうだった。こう言っては何だが、須藤先生、綺麗だったね。アナグラム、解けたら、こっちにも連絡して欲しい。」
画面から管理官は消えた。
「おねえさま。大上は、山下みたいに味方になってくれるかしら?」なぎさの言葉に伝子は、「さあ、どうかな。可能性はあるとは思うが。あつこは、どう思う?」と、振り返って、あつこに尋ねた。
「なってくれると有り難いわ、おねえさま。。少しでも情報は多い方がいいし。」
「おねえさま。当面、師範はお休みですよね。稽古を録画して、観て貰っていいですか?」と、田坂が尋ねた。
「いいですか?もう決めているんだろう?反対する理由はないよ。」
田坂、安藤、浜田は喜んだ。
「そう言えば、ピスミラは、誰を狙ったんだろう?というか、極秘の結婚式なのに。」
伝子が呟くと、「警視庁にスパイがいる、いや、警察官に成り済ました那珂国の奴がいる、と噂されているが、なかなか尻尾が見えてこない。ひょっとしたら、1人ではないのかも知れないな。」と、理事官が入って来て言った。
「アリバイ作りが、あるってことですか。」と筒井が言った。
「あるいはな。我々は、目の前のことに集中しよう。いつもの通り、一旦解散。進展があれば招集だ。」
時刻は、午前10時になっていた。
「おねえさま。池上病院に様子を観に行ってきます。結城と新町、連れて行っていいですか?」「ああ。頼む。」
午前11時。池上病院。天童の病室。
「警視。あの時、直前に、女の悲鳴を聞いたんだよ。それで、一瞬、気を取られて油断した。矢田さんは、違う道から帰ったし。油断した。」
「どうぞ、ご自分を責めないで下さい。不可抗力です。そうですよね、須藤先生。」
「ああ、そうだ、ひかるの悪いところは微塵もない。包帯が取れるまで、まだリハビリは無理だ。大文字に、そう伝えておいてくれ。」「了解しました。」
「師範。田坂達が、稽古の録画を観て欲しいそうです。時々持参すると思いますので、よろしくお願いいたします。」と、結城は頭を下げた。
午後1時。
Base bookに投稿があった。ピースクラッカーは、相変わらずポーカーフェイスだ。
「ごめーん。やっぱり苦しいから、変えるよ。タイムリーじゃないし。」ピースクラッカーの投稿は、笑っていはいない。
『寄れば 破滅無きさ』と書いてあるフリップ(リップボード)を持っている。
「それはそうと、大変だったねえ。剣道師範が襲われるなんて。でも、結婚出来て良かったじゃない。50年越しだって?辛抱強いにも程があるよ。日本人の『特質』?やはり、武道家は忍耐力が違うのかな?僕も出たかったけど、行ったことがないんだ。式服も持っていないし。スーツも実は苦手だし。でも、ご馳走は上手いんだろうなあ。明日、食べようかな?」
午後3時。EITO東京本部。会議室。
マルチディスプレイに高遠が映っている。
「やっと、分かりました。先ず、夜中に上がった投稿『破滅頃が泣くのよ』の解ですが、『6月後の花嫁』になります。ちょっと変ですよね。ピースクラッカー自身が苦しいって言ってるし。それで、改めて出して来たアナグラムのお題ですが、『寄れば 破滅無きさ』。この解は、『五月晴花嫁(さつきばれはなよめ)』となります。ジューンブライドには少し早いなと思っていたんです。須藤先生に引っかけて、5月決行にしたんでしょう。ヨーダ、いや、依田に調べて貰ったら、明日2件、都内の有名な式場で試食会があります。前のアナグラムも、『スーツが苦手』も『ご馳走』もヒントだと考えました。明日は上天気、明後日からまた崩れます。あ。依田のホテルにも試食会はありますが、狙われた直後に狙われる筈もない、と思い外しました。失礼な、って依田は怒っていましたが。」
5月25日。午前10時。新宿区高田馬場。サンタ・アンドリー聖堂。
無料試食会が行われていた。ここには、中津敬一警部と本庄尚子弁護士が来ていた。
沢山入れる筈なのに、何故か2人の席と、もう1人の席しか用意されていない。ドタキャンが続いたと言う。この頃は、『いたずら予約』もあるから、気にしていない、とここの管理責任者は言った。
午前10時。豊島区池袋。かね古式ホテル。
5つの披露宴会場の内、1つで無料試食会が行われていた。ショーがついている、との話だったが、何故かそれは中止になった。ここには、伝子1人が来ていた。本当は、筒井と来ていた伝子だが、廊下で待機してくれ、と頼んだ。何故か胸騒ぎがしたからである。
1つテーブルを挟んで、紳士が1人座っていた。
「お一人ですか?」少し離れているが、紳士は話しかけてきた。
「ええ。3人で、身内の式の候補を探しているんですが、1人遅れてまして。食事を遅らせて頂くのも気の毒だから、と私だけ頂くことにしましたの。あなたは?」「似たようなものです。昨今は約束を守れない方が多いですねえ。」
3品目を食べた後、デザートがやけに遅い。確認をしに行こうとして、伝子は席を立った。
すると、紳士は急に苦しみ出した。伝子はDDバッジを強く押した。DDバッジとは、伝子の仲間達が誘拐に遭い易いので、仲間達全員に配られている、そして、エマージェンシーガールズが携帯しているバッジである。
以前はエリア特定で,本人が押した時にピンポイントで位置情報が分かる仕組みだったが、今は携帯しているだけでピンポイントの位置情報が本部に伝わり、何らかの合図を送る際にも本部に通信が送れる。本部から連絡を受け、すぐに筒井が中に飛び込んだ。
「もう、遅い。大文字伝子。」伝子に、そう言って、紳士は息絶えた。
伝子は振り返って、間にあったテーブルを見た。本部に連絡をしようとした筒井は、勘づいてテーブルを調べ、隠しカメラを見付けた。
伝子は、イヤリングでホテルの外にいる、なぎさに確認した。
敵の集団と闘っているが、制圧は時間の問題だと返答してきた。
イヤリングも簡易通信機で、近くに待機しているオスプレイを通じて、エマージェンシーガールズのインカムに通じる。
筒井が、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た笛で人間の可聴音聞こえない音で、簡易通信をする。
犬笛とは、犬などの動物の訓練に用いられる笛で、人間の可聴音よりも高い周波数の音を出し、目的の動物だけに聞かせることができるもので、比喩的に、政治家が特定の支持層だけに分かる言い回しを用いて、思考や行動を操作することに「犬笛」を例えに用いることがあるが、本来は『聞こえない音』を出す笛のことである。
筒井が長波ホイッスルを吹いた時、伝子のスマホが鳴動した。
中津警部だった。伝子はスピーカーをオンにした。
「たった2組はおかしいと思って、鎌をかけて会話している内に、目が泳いだので、隠しカメラを発見しました。逮捕しようとした時、自殺されてしまいました。自殺はピスミラの専売特許じゃないようですね。食事は悪くないけど、やはり、依田さんのホテルでクーポン出して貰います。あつこ警視から、終ったから引き揚げると連絡がありました。」
「会議の材料は、色々ありそうだな、大文字。」と、筒井が言うと、「ああ。今日はマンションの前に、池上病院に送ってくれ。」
「人使いの荒い元カノだな。」「気のいい元カレが頼りだ。」
警官隊と、愛宕警部と橋爪警部補が入って来た。
「向こうは、引き揚げました、先輩。」「お疲れさま。愛宕、私はまた有名人になったらしい。」愛宕と橋爪は首を傾げた。
―完―
大文字伝子が行く282 クライングフリーマン @dansan01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
下品!!/クライングフリーマン
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます