(三)-8

 男と二人は楽屋中央のテーブルを挟んで対峙する。

 男はまっすぐ伸ばした右腕を自分の胸の高さまで上げた包丁の先をアンナに向けた。

「お前のせいだ! お前は僕がマキちゃんと一緒になれるって言ったじゃないか! でもやっぱりそうじゃなかった! 嘘つき女!」

 マキの心臓の鼓動が早くなっていた。目の前にいる男性は、自分のファンだと言っている。しかし、憎悪の対象は自分ではなく、なぜかアンナだった。しかもアンナがこの男になにか言ったのであろうか。


(続く)

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