(一)-3

 五〇人収容可能なハコは、満杯だった。野太いアンコールの中のステージに、再度マキたちが躍り出ると、その声援は建物全体を振動させてしまうほど声援が大きくなった。

 ステージに残されていた三本のマイクスタンドの前にそれぞれマキたちが戻ってくると、うって変わって観客席は静寂に包まれた。マキたちの登場とともに狂ったように振られていた光る棒の動きも大人しくなる。

 マキがマイクを掴む。マイクの頭を叩く。マイクの音がスピーカーから聞こえる。

 そして暗い空間を左から右へと視線を送って確認すると、マキはマイクに向かって口を開け、一言だけ言った。

「『恋するシュークリーム』!」


(続く)

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