白蝋を汚す
長眼 照
蝋燭を穢す、罪悪。
あまり気に入った仕事では無かった。
偶然合格した第二志望の大学を卒業し、何となく採用された建築会社に入社。頭の悪い後輩の育成に追われながら上司からの無茶ぶりに応え、顧客と下請業者からの板挟み。営業の仕事は嫌いではないが、望んだようには進まず昇進の話もされた事がない。
好きでも嫌いでも無い仕事を続けることは、嫌いな事をやるよりも正直苦痛なのではと自問する。
「先輩ー、ここの計算式壊しちゃったんですけど助けてくださいー」
「あぁ、ちょっと待って」
丁度一区切りついたので一服休憩に行こうとしたが後輩に呼び止められ休憩は叶わなかった。
予想以上に酷く壊れてしまった書式を修復するのにかなり時間を取られてしまい、気がついたらすっかり定時は過ぎてしまっていた。
フレックスタイム制で元々人の出入りが疎らな事務所だが残っているのは俺と後輩2人きり。
納期が明日に迫った資料はやっと完成を迎えた。
「やーっと終わりましたね!先輩!ありがとうございました!助かりましたあ!」
「うん、何とかなって良かった。後は提出すれば何とかなるだろう。俺の方からも上司に伝えておくよ」
「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
「気にしないでいい」
深深と頭を下げる後輩を他所に帰宅準備を始める。
簡単に明日の資料をまとめ、現場に行く準備をして俺は会社を出た。
もう外はすっかり暗くなっていて肌寒い。
秋なんて一瞬だ、もうすぐ冬が来る。薄いカーディガンを羽織ってきたのが間違えだったと気がつくのには遅すぎた。ビル内と外の寒暖差で身体がブルっと震える。
帰路を急ごうと早足で駅までの道を歩いていると、帰宅ラッシュで湧くサラリーマンの群れの中に違和感。年端もいかない少年が1人、立ち尽くしているのだ。何事かと思ったが、ここは都内だし幼い子が電車通学している場面はそれほど珍しくは無いはず。
しかし挙動がおかしいというか、同じ場所をずっと右往左往しているのだ、道に迷ったのか?そう思った俺は周りの目を気にしつつ少年に声をかけることにした。
「大丈夫?道、分かる?」
俺の声に反応した男の子は見たところ10歳くらいだろうか、健康的な肌、真っ黒な髪と純黒の双眼で俺を見上げる姿がなんだか…
「道、迷っちゃった…怖くてどうしようってなってたんだよ」
「おうちはどこ?最寄り駅言える?」
「駅はね、田園府庁なの」
田園府庁なら、新宿から目黒まで山手線。そこから乗り換えて東急目黒線に乗り換え30分くらいのコースだ。
「あー、送って…行こうか?」
ダメだ。
「ママが知らない人には着いていくなって言ってた。お兄さんは怖い人じゃない?」
「うん、怖くないよ。ちゃんとおうちまで帰れるよ」
なんて嘘を言う。帰すわけがない。
見てしまったのだ。彼の足を。白蝋のような肌、傷1つない細くて造形の良い足、きっと大事にされて育っているのだろう。
学校の制服なのか、キチッとしたブレザーを羽織り、下はハーフパンツにガーターベルトソックス。ベルトと素肌の境界には柔らかそうな若い脂肪がぷっくりと乗っている。そんなもの、そんな絶対領域でしかない。触りたい、触れてみたいと思うのは男の性と言うやつなのか、俺の少年趣味のせいなのか。
「お兄さん、いい人なの?」
「いい人…ではない、かな?」
彼は潤った瞳で俺を見上げて不安そうに凝視する。
この小さな男の子は都会の喧騒に怯え、母親が待つ家に帰る為に不足した警戒心で悪い大人を選んだわけだ。
素直に帰せるなら帰したかった。
「いい人じゃないの?ちょっと俺怖い…」
「冗談だよ、大人って悪い冗談が好きなんだ」
「変なのー!」
不安そうにしていた彼の顔は少し綻び、肩の力が抜けるのを確認した。
「じゃあ、行こうか。まずは山手線のホームに…その前にトイレ行っておく?」
「うん!ありがとうお兄さん!」
男の子の手を引いて多目的トイレに入る。周りから見れば自分の子をトイレに連れていく親、普遍的な光景だ。誰も警戒などしない。
「後ろ向いてるから、しちゃっていいよ」
「うん!」
ガサガサとズボンを下げる音がする、暫くすると放尿の音が聞こえてきた。
チラッと視線を移すと自分のものより遥かに小さい性器から尿が一筋放出されている。
勢いを失い流動を止めた尿を男の子は振り落とし、ズボンを履こうとした手を止めた。
やってしまった…と思った。非常にマズイ。が、しかしもう己の理性を留めておくことは出来なかった。
「お兄さん?どうしたの?」
「そのまま仕舞っちゃダメなんだよ?」
「なんで?」
「病気になる確率が高くなるんだよ、キチンと綺麗にしないとダメなんだ」
「…どうしたらいいの?」
「やり方教えてあげる、ここに跨って」
強引な方法で下半身が露出したままの彼を膝の上に乗せることに成功する。
小さなソレを人差し指で軽く揺らすと中に残っていた尿がピュピュと漏れて、指を濡らす。
指に掛かった尿を舐めると無味だがどこか若々しいビタミンの風味がした。
「お兄さん、なんでこれ…俺の触るの?」
「ん、今のは君が病気になってないか調べたんだよ。俺ね、お医者さんだから」
全くの虚言である。俺はしがない建設会社に務める営業マンだ。
膝に載せた少年の体温が俺の中心を熱くする。興奮仕切ったソレは少年が動く度に刺激で膨張するため違和感に気がついたのか、少年は不安そうに俺の顔を見ている。何事も無いような顔を取り繕って視線を返すが、どうしても少年の視線は俺の中心に向かっている。膨張した大人の性器を見るのは初めてなのだろうか。俺はズボンのジッパーを降ろし、窮屈な布を避ける。露になった大人の性器をまん丸の目で凝視する少年は蒸気が沸くのでは無いかと心配になるくらい赤面している。
「俺、俺の…ちんちんは、大丈夫かな?」
「ん…うん、ちゃんと消毒すれば何の問題もないよ。消毒する?」
「痛い?」
「痛くないよ、気持ちよくなるだけ」
俺はその言葉を皮切りに少年の小さな口に口付けをする。締まりきってしまったその唇を強引な舌でこじ開け、無理やり深いキスをする。
クチュクチュと直接的な音がお互いの耳を支配する中、少年は息も絶え絶えに俺のキスを受け入れようとしていた。いじらしい。
口を離してやると「はぁ、はぁ、」と短い呼吸を繰り返しながら先程よりも更に赤くなった顔、涙で潤んだ目が熱に蕩けているを確認した。
年齢の割に快感だということは理解しているらしい。もう止める理由もなくなった俺は、少年の上着を脱がせ、いじらしく小さい胸板の2つの突起の片方を口に含み、もう片方は指でコロコロと転がしてやる。
ビクッと身体が跳ねたが逃げるような様子もなく、未知の快感に身を悶えさせているようだった。
「…んッ、お兄さんっ…これ、なんか、ヒリヒリするよう…」
「大丈夫、ここも触診してるだけ。気持ち良い?最初はヒリヒリするかもだけど、少しずつ気持ちよくなるから安心して」
「………ンッ、ア、なんか、やだよう」
その後も指や舌で突起をコロコロと遊ばせてやるが身体がビクビクと跳ね、小さな声を漏らしながら少年は必死に俺にしがみついてくる。
いつの間にか俺のズボンは少年の我慢汁でビチャビチャになっていた。我慢汁がもうどちらのものが分からなくなったタイミングで挿入を試みる。
白蝋のような太ももに触れる。大人の手のひらで包込めてしまうような細くてしなやかな脚。想像していたより肉質は柔らかく、肌質はサラサラ。撫でている手から子供体温が伝わってきて血流が1箇所に集まるのが分かる。
「ちょっと、前にきて」
「…フェ?今度はなにするの…?俺、もう帰りたいよ…」
「ここに、俺の入れたら終わるよ」
我慢汁でビチャビチャになった後門に触れ、指を1本挿入すると、意外とすんなり入ったが少年は痛そうに顔を歪め固まってしまった。
目の端には涙を溜めている。やりすぎたか?
「うぅ、ううう…痛いよう…」
「大丈夫、痛いのは今だけだから。肩に顔乗せて力抜いて。気持ちよくなれるよ」
「うん…」
完全に自分に寄りかからせる体制を取らせ、挿入する本数を増やす。2本になったところで前立腺を見つけ軽く押して刺激してやる。
先程よりも強く身体が跳ね、肩を握る手に力がはいる。
「力抜くんだよー、痛くないからね」
「ふっ、ん……あ、なにコレ、怖いよう」
「大丈夫、深呼吸して…ね?」
少年が深呼吸して深く息を吐いたその瞬間を狙い、己の欲望を彼の中に一気に挿入する。
背筋に電撃が走ったように少年は体を跳ねらせ、濁点まじりの声で訴える。
「い"た、痛いよう…お兄さん、これ、怖いっ」
「大丈夫、大丈夫、ゆっくり動くよ?」
下から突き上げるように腰を動かしてやると軽いおかげで着地する度に深く刺さる。
苦しそうな声をあげながら、その顔は恍惚の表情を浮かべている。快楽を理解しているらしかった。
「んっ、、あ、」
「どう?まだ痛い?」
「んゃっ、変!変だよ!怖いよ!」
しばらく緩い律動を繰り返し、甘い声が止まらなくなったところで激しく腰を打ち付けてやると少年は涙を流しながら声もなく痙攣して少量の精を吐き出した。ピクピクと余韻で跳ねる身体が落ち着くのを待ち、少年の後穴から俺の欲を抜く。
同時に溢れ出てきた精液は少年の白い肌と赤く充血した後穴に映えた。
(完全に…やってしまった…)
これは確実に警察案件だ。
この少年が口外したら俺の人生はもう終わり、会社を辞めた後はどうしようかなどと愚行を悔いていた所、少年の小さな手が俺の頬に添えられた。
「俺、これで綺麗になったかな?」
「う…うん、綺麗になったよ完璧だよ」
「また、お兄さんに消毒してもらったらずっと綺麗になる?」
「えっ」
「僕病気になりたくないもん…」
「あ、あぁ。そうだね、もしまた会えたらね…」
俺は逃げるように身支度を整え、少年の後処理を済ませる。まだ惚けた表情の少年を誘導しながら電車へ乗り、最寄りの駅で「バイバイ」と軽い挨拶をして別れた。
罪悪感と背徳感が入り交じった俺の心情はひどく不安定でまたあの快楽を得たい、自分のものにしたいと思いながらも“犯罪者”としてのレッテルが恐ろしい。
今回は奇跡が起きたと思えばいい、もう二度とこんな経験をすることはない。
明日からまた、クソみたいな会社で仕事をするだけの人生だ。
俺は丁度到着した帰りの電車に飛び乗り今日のことはもう忘れようと爆音でお気に入りの曲を聞きながら帰宅した。
(もう、忘れよう…)
-
数日後
今日も残業で遅くなった俺は今にも死にそうな顔をしながら帰りの電車を待っていた。
サラリーマンで溢れかえるホーム、そこに不自然に立っている10歳くらいの男の子。
(迷子かな…?)
そう思った刹那、少年がこちらに気が付き駆け寄ってくる。
「お兄さんっ!」
「あ…、え?」
「俺、道に迷っちゃったんです…だから、おうちまで送ってくれませんか?」
「…………いいよ」
これが、俺たちの合図になった。
白蝋を汚す 長眼 照 @ozz3325
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