第一話

「おはよう」

 今日も教室の中では挨拶が飛び交う。憂鬱な一日の始まりだ。おれは今日も気だるそうに机に向かう。その途中、ある人物に声を掛けられる。数少ない友人の斎藤だ。こいつはクラスでもカースト上位だがこんな僕ともかかわっているやつだ。入学してから知り合ったがなかなか気が合うため一緒に昼食べたり放課後斎藤の部活が無い時は遊んだりしている。いいやつだ。

「今日も死にそうだな!おはよう!」「おはよう齋藤。相変わらず元気だな」

 こいつは小学生からサッカー部でかれこれ6年はやっているらしい。実際、1年生で数少ないスタメンだ。まぁ2、3年が少ないからというのもあるらしいが。そんなこいつとは対照的に僕は運動があまり得意ではない。いわばインドア派というやつだ。苦手なわけではないが好き好んではやらない。

「朝からそんなだと彼女の一人もできないぞ~」

 うっせ余計なお世話だ。そんなことをいうこいつには彼女がいる。結構かわいい一歳上の先輩だ。ちなみに俺は年齢=彼女無し歴だ。別にいいだろ。

「だけどおまえめっちゃかわいい幼馴染いるんもんな!うらやましいわ~」「うっせ、HR始まるぞ」

 そういうと自分の席に戻っていく。かわいい彼女がいる斎藤がめっちゃかわいいとまで言うやつが俺の幼馴染である。ちなみにおれもそう思う。

「おはよ!今日も元気なさそうだけど元気そうだね!」

 話をすればなんとやらだ。幼馴染の椎名はいつものように話しかけてくる。こいつとは幼稚園からの縁だ。両親も仲が良くそこそこの頻度でご飯をたべたり、出かけたりなど家族ぐるみで仲が良い。おれもなんやかんや嫌いじゃない。椎名は学年でもかなり上のほうで容姿がいいため入学したては嫉妬の目がくるが、いつの日からか気にしなくなった。それに俺と椎名の関係性を見てほとんどのやつが諦めたらしい。

 こいつにもいつか彼氏ができるのかと思っていたが、気づいたら高校1年生になった。まだ一度もできたことが無いらしい。もしかした俺のせいでもあるのかな。すまん。担任が教室に入ってきた。HRの時間だ。こうして今日も一日がはじまる。

 三限、体育だ。好きではないが嫌いでもない。ここ2、3週間は男女ともにバレー。おれはレシーブで必死なためスパイクなんてものはとてもじゃないが無理だ。椎名と斎藤はあれよあれよと打っている。なんだあいつらは。ずるい。おれがこんなに必死になってレシーブをしているというのに。気づいたら試合が終わった。うちのチームのスパイクを打つやつがなかなかうまい。ナイスプレー。 僕が水筒を飲んでいるとスパイクを決めていたやつが声をかけてきた。

「佐藤意外とやるじゃん!またチーム組もうな!」

 そういって元のグループに戻っていった。意外とは失礼だが褒められたのは嬉しい。そこは素直に受け取っておこう。そこに

「私のスパイクみてた!?」

 そういって椎名が肩を思いっきり叩いてきた。いまは男女ともにゲームの時間で特にやることのない生徒は自由に話したり練習したりしているため、椎名がやってきたのだ。というかめちゃくちゃ痛い。

「何本も決めてたなーあとで教えてくれよ打ち方。」「まかせて!放課後久しぶりにあの公園いこ!」

 ああ。今日は土日買ってきた本を見ようと思っていたのに…続きが気になってしょうがない

「明日はだめか…?」「明日も体育あるでしょ!今日よ今日!」

 まずい選択肢をミスった。しかしもう遅い。しかたない、今日は練習に付き合うとするか…。

 こうして放課後公園に来た。

「さあやるわよ!」

 あいかわらず元気そうなやつめ。こっちとら本の続きが気になってしょうがないというのに。

「スパイクはね…こうしてここをこう意識して…」

 おおそう打つのか。なんか面白くなってきたなこれ、こうしてまんまと椎名の練習にはまってしまった俺はこのあと夜の11時ころまで熱中してしまうのだった。

もうこんな時間か。だいぶ練習したな。へとへとだ、椎名も疲れが見え始めている。

 この公園は近くに交番もあり、照明も比較的多くついているため夜も安全ではあるがそろそろ終わりだな。そう思った瞬間

「今日はここまでね、今日はたくさん教えてあげたし早く帰って椎名のご飯たべたいね!」

 おい。終わるのはちょうどいいがどうしておれが飯をつくる前提なんだ。と一瞬おもうが、まあ一人よりは誰かと食べたほうがおいしいからな。それに教えてもらったし今日はおれが作るとしよう。こうして二人並んで帰路に着く。途中コンビニでホットスナックを買いそうになるが、俺が椎名を頑張って抑え、飲み物だけにした。

 椎名と僕は一人暮らしだ。実家から高校までが、何時間もあるためこうして近くに部屋を借りている。特に反対はされなかった。椎名と隣の部屋だからな。どちらの両親も納得していた。二人なら大丈夫とのこと。まあ実際、家事やらは二人で一緒に行っているからかなんやかんやで普通に生活できている。俺一人だったらいろいろやばかったな。

 基本は、おれの部屋に椎名がきて一緒に部屋の部屋で過ごしている。椎名が俺の部屋で泊まることもしばしばだ。ちなみに、おれが椎名の部屋に入ることは何度かあるが泊まったことはない。さすがに女の子の部屋に泊まりに行く勇気はなかった。いつか泊まってみたいと思っているが。

「ただいまー。疲れたしお腹減ったー今日はなにつくるの?」

 特に決めてなかったな。冷蔵庫を開ける。豚肉に玉ねぎ。卵。ごはんは朝炊いたものがある。今日は他人丼かな。すぐ作れるしうまい。さっそく料理にとりかかる。おれもお腹減ったし。いつもはもうちょっと凝ったものをつくるが、今日は早く食べたいため簡単なものにした。玉ねぎ、豚肉に火を通し、しょうゆ、砂糖で味付け。最後にたまごで閉じたら完成だ。うむ、いい匂い。我ながら上出来だ。早速ごはんに盛ろうとしたら、椎名がせっせと丼ぶりにご飯をよそっていた。ナイス椎名!椎名からどんぶりを受け取りよそっていく。近くで椎名がつまみ食いしそうになっているが、抑えるひまはない。適当に乗せ完成だ。うまそう。おなかもいよいよ限界なため急いでテーブルに持っていく。・

「“”いただきます」

 うん、うまい!ちょっとしょっぱめに作ったため、ご飯とめちゃくちゃ合うなこれ。やっぱりしょうゆベースの味付けが最高だ。椎名もおいしそうにほおばっている。そんなにおいしく食べてもらえると作ったかいもあるというものだ!

「“”ごちそうさまでした!」「わたし先風呂入ってくるね」

 汗もかいていたため、椎名は食べ終わったら急いで風呂に行ってしまった。ふむ。待ち時間ができてしまった。本でもよもうか。続きが気になってしょうがない。ソファに座り本を開く。早速しおりから続きを開き読んで―――――そこから先は記憶が無い。いつの間にか寝てしまっていた。ハっと目が覚めると椎名が隣で座っていた。びっくりした顔をしている

「どうした?」「な、なんでもないよ!風呂あがったから伝えようと思ったらちょうどーー」

 なるほどベストタイミングだな。

「じゃあ風呂はいってくる」「うん、いってらっしゃい…」こうしてゆっくり汗を流しにいった。


椎名視点

 お風呂からあがると佐藤がぐっすりと寝ていた。

「おーい お風呂あがったよー」

 まったくおきない。どうしようか迷っていたら、寝顔が目に入ってきた。めちゃくちゃかわいい。いつもけだるそうにしている佐藤が、こんなにもすやすや寝ている。つい写真を撮ってしまう。

「はっ!つい撮っちゃった!でも寝てるしいいよね…」

 すごくかわいい。いつもなら撮りづらい2ショットもとれるんじゃ!そういって隣に寝っ転がる。なんかカップルみたいでつい頬がゆるんでしまう。

 そう私は佐藤が好きだ。だけどこの関係性が壊れるのもこわくてなかなか踏み出せない。佐藤はどう思っているのかな。いつか打ち明けたい気持ちをいまは抑えて、とりあえず2ショットをとる。今は目の前の2ショットが優先だからね。しょうがないね。そういって一枚撮った瞬間佐藤が動く。まずい。とっさに携帯を隠してとなりに座る。その瞬間佐藤が起きた。ぎりぎりとれてよかった!


 風呂から上がると椎名が携帯をいじっている。心なしか緩んでいる?

「上がったぞー」

 そういうと椎名はビクッとして

「びっくりさせないでよ!寿命縮んだじゃん!」「ごめん…だけど何回か話したけど 椎名気づいてなかったぞ」「じゃあ私がわるいか…うん今回は許そう!」

 なんだこいつ…まあかわいいからいいか。椎名はかわいい。風呂あがりのパジャマなんてもうかわいさ1,000倍だ。そんな心をおさえるのにせいいっぱいだ。

とりあえず時間も時間だ。もう1時の針がすぎていた。

「寝るか」

 そういって二人で布団を出す。俺の部屋は広めの1Kなためリビングに布団を敷いて寝る。さすがにちょっと距離を離して寝る。おれのこころが持たん。こうして今日も一日が終わる。明日は椎名から教わったスパイク使う機会あるといいな…そういえば今更だけどおれスパイク打つ機会一回も無かったような……

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幼馴染と僕 @naruhodonanndato

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