第3話
時は2xxx年。人類は以前のような平和な暮らしを保つ為に毎年毎年、ある年代の子供を生贄として差し出していた。
なぜか。簡単な話だ。子供を差し出さなければ自分達が死んでしまうからだ、地球に。
屍者は、ある時からずっと地球に潜り込んで生きていたという。主に人を主食とするが、毎日人を食べなければいけないと言うわけではなく思春期ほどの人であれば一年に一度、大人であれば一年に3度ほど食べればそれで事足りると言う、なんとも理想的で素晴らしい種族であった。見た目はなんら人と変わりはしない。そう、ただ栄養の摂取方法が違うだけなのだ。では、なぜ人々は未来のある子供を犠牲にしてまで彼らと共存を図ろうとするのか。個体自体がある一族しかいない屍者。そんな一族はさっさと殺してしまえばいいと思うかもしれない。しかし、人は今までのように過ごす為に彼らと共存しなければならなかった。「環境破壊」だ。
それは100年ほど前に起こった。人類は地球温暖化やその他の環境問題を解決することはなく事態はどんどん悪い方へと向かっていった。そして遂に、地球は悲鳴を、血を流したのだ。「環境破壊」という形で。
雨が酸性すぎて建物は溶けた。雨の日は必ず人々は地下のシェルターへ避難した。しかしそれも時間の問題。それだけではない。夏になれば暑すぎて外へなんてもちろん出られる訳もなく、人々は悲鳴を上げた。そして遂にその悲鳴ごと地球は飲み込まれ、死のうとしていた。そこに、屍者が現れた。
なんの因果か、屍者はこう言った。
「この環境破壊を解決する代わりに、一年に一度でいい。良質な血肉を持つ子供を生贄として差し出せ」
屍者は環境破壊を完全に解決できるわけではなかった。しかし、まだ人々が夏でも外へ出かけ、雨の日でも地下シェルターに逃げ込まずに生きていられる環境を、作ることはできた。もちろん、こんな話はじめは世界の上層部の者たちは信じるはずもなかった。だから、屍者は信じてもらう為に行動を起こした。世界を1週間だけ前のような状態へと戻したのだ。そして1週間後ある1人の青年が死んだ。しかし、こんな事世間では報道されるわけでもなく、上層部はひた隠しにし秘密裏に屍者と契約をすることにしたのだ。そうして、世界に平和が訪れた。一年に一度、1人の子供を犠牲にして。そういった子供は特別隔離して育てられる訳でもなくごくごく普通の人生を送る。途中までは。しかし適性検査で人生は変わる。一般人にはただの身体検査としか伝えていないが実はその身体検査なるものは、世界レベルの適性検査。そう、屍者の生贄となるにふさわしいかどうかの検査なのだ。もちろん適性がマックスで生贄となっても親は知ることもない。突然誘拐されて終わる。もちろんその後の生贄として差し出された子供の周りの人間への処置は完璧だ。みんな綺麗に記憶を消してしまうのだから。最初からいなかった事にしてしまうのだ。別に記憶を消すのは大変な事ではない。屍者にとっては。先程屍者のことを栄養摂取の方法が違うだけで人間とはなんら変わらない、そう説明したがかなり語弊があったようだ。屍者には能力がある。時を戻す能力、そして人を操る能力。しかし、上層部の人間だけは屍者でも操ることはできない。なぜなら屍者の弱点を知っているから。
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