宇宙の果てで放浪生活記 ・・てか、ここは何処だよ?

鷹端シュン

第1話

★プロローグ


日が傾き夕暮れが空を覆い、木々の葉がその緑色を濃くしていた。

その木々の中にさほど大きくはない建物が幾つもバラバラに連なっている。

少し離れた場所には巨大な建物があり、こちらがこの施設のメインの建物であろう。

バラバラに立っている建物の1つ、そこには幾人もの人物が集まり作業をしていた。

建物には看板が掛けられ、そこには「物質転送システム研究室」と書かれている。


建物の中では白衣を着た一人の男性があれこれ指示を出していた。


男性の名はトァカミ・カーシェ・ダ・クドラこの施設の責任者であり、この施設がある大学の助教授をしている。

そして彼はクドラ子爵家の令息でもある。

但し、三男であるため実家を継ぐことも出来ない。

しかし、トァカミはたとえ家を継げる状況であったとしても、継ぐつもりはなかった。

今行っている物質転送の研究が面白く、実家に帰るくらいなら研究していたい。

なので、ここ10年実家に帰省はしていなかった。もはやオタクである。

容姿的にはほっそりした輪郭で肌の色は研究職らしく普通よりの白い、金髪をオールバックにし、碧眼の目にはスクエア型の眼鏡を掛けている。

そして、種族的に耳が長く先端化尖っている。そうエルフ族のヒューマンである。


そして、ここには10年前の帰省で無理やり押し付けられた、婚約者のカムミム・エファ・ド・ジーコ男爵令嬢もトァカミの助手としてこの研究室にいる。

助手と言っても研究の方を手伝っている訳ではなく、主に書類の整理や帳簿の管理等の裏方を行っている。

容姿的にはエルフにしてはややふっくらした輪郭で、ピンクゴールドでセミロングの髪をサイドで三つ編みにしそれを後ろで髪留めで止めていて、お嬢様っぽい髪形をしている。

目は藍色の瞳でやや垂れた目じりで優しい雰囲気を醸し出してる。美人ではあるが、どちらかと言うとかわいい系になるかもしれない。

彼女は次女で姉と妹がいる。姉は既に結婚しその旦那次のジーコ男爵を継ぐ予定になっている。

妹も3年前に男爵委の令息と結婚して、今でも新婚気分であちこち旅行に行っている。

なぜ、3姉妹のうちのカムミムだけが結婚出来ていないかと言うと破壊摩なのだ。

しかも、本人の意図せず物を壊す天然系破壊摩なのだ。

例えば、トァカミと婚約する前の11年前、ある男爵家に赴いてのお見合いの席で、椅子に座った瞬間に椅子の足が折れて床に頬りだされ、

給仕を行っていたメイドが押すワゴンに激突し、乗っていたお茶のポットが宙を舞い、見事男爵家の家宝の絵画にお茶がぶちまけられた。

絵画はめちゃくちゃになり、男爵も自身の家の家具が壊れたのが原因であるため、怒るに怒れず顔を真っ赤にして押しだまり、

静かにお見合いをなかった事にしてくれと言われ、破断となった。

その前には、子爵家でのお見合いで子爵家で飼っていたそこそこ大きな犬に飛び掛かられ転倒し、高価なツボの置いてある台に激突、

乗っていたツボは落下し粉々なり、お見合いも破断となった。

ちなみにこの時の犬は子爵に殺されそうになったのを、ジーコ男爵が哀れに思って引き取り、現在ではジーコ男爵家のマスコットになっている。

ただ、カムミムだけは実家に帰省するたびに飛び掛かられ顔を舐められるのでトラウマになっていたりする。


そんな2人と共に学生が転送装置の設定を手伝っている。


手伝っている学生には様々な種族がおり、一番多いのがヒューマノイド系が3名、次がアニマル系の2名、ラプトル系が1名、

珍しいところでジェリーフィッシュ系(地球的にはマーズ系?)が1名となっている。


もうお分かりだと思うが、ここは地球ではなくクランドル星系主星、惑星クランドルにある名門クランドル総合大学である。

実際、地球とは200億光年も離れているため、お互いその存在を認識しているわけではない。


そして物質転送システムの電源も立ち上がり稼働状況も問題なく、あとは転送元座標を入力すれば試験が開始出来るとこまで設定が出来た。

転送先は当然この研究室の空いたスペースの床にガムテープで四角く囲った場所を設定している。

そして今回の転送元(標的)は先日実験用に搬送設置した惑星軌道上の小型の衛星である。

実際には惑星の重力圏外に放置した衛星のようなものなので、正式には衛星と呼べるかはわからない。

先日までは大学の校庭の一角を借りて転送元として実験を繰り返し、システム動作に問題ないことを確認している。

しかし、宇宙空間の衛星であるため、極小さなデブリの衝突や恒星風等で位置がずれたりすることもあるので、いま大学の宇宙探査研究科に最新の位置情報を計測してもらっており、その情報が届くまでは一旦休憩をしているところだ。


そこにカムミムがお茶をトレーに乗せて実験室に入ってくる。

人数分のお茶が乗っているので結構な重さがあり、ふらふらとトァカミのもとにやってくるが、複数の配線が横たわりいつもと違う研究室に、トァカミはまずいと思い腰を浮かせたが遅かった。

カムミムは配線に足を取られ盛大にスっ転び、トレーが空中を舞い、お茶が当たり一面に振り注いだ。

当然、転送元座標の入力待ちだったキーボードにも降り注ぎ、バチバチと放電した直後煙を吹いた。

同時に転送システムが起動し、甲高い音を発し作動し始め、システムに付いた警告ランプが点滅し始め、アラート音がビービーと鳴り響いた。


トァカミは緊急停止の指示を出すが、慌てたアニマル系犬耳女子学生が電源を引っこ抜く。

ラプトル系男子学生は緊急停止ボタンを押し込むが、電源が非常用電源に変わっている最中で緊急停止ボタンが効かない。


そして、現れたのはヒューマノイド系の成人男性1人、成人女性1人、幼児2人、その他金属片多数とアスファルト片だった。

現れた人物も、研究室のメンバーも、皆目を見開いて驚いている。


◆----------


一旦、時を遡り、場所は地球、日本の関東某所にあるアパートではゲームショーに行くため有休を取った男、草薙 雄介がいた。


アパートの一室では携帯のアラーム音が響いていた。

「もう朝か~。」

俺は時計の7時30分を指す針を見てガバッっと起き上がった。

そう、7時30には部屋を出ないと会社に間に合わないからだ。

一度は起き上がった俺だったが、再度ベットにボフンと倒れこんだ。

「そうだった。今日は有休でこれからゲームショーに行くんだった。」


今日は俺のはまっているゲーム「ギャラクティカ スクランブル」の新作がゲームショーでお披露目される。

「ギャラクティカ スクランブル」は宇宙戦闘艦やパワーアーマーを駆り、宇宙海賊や宇宙怪獣を倒しながら惑星を探索しお宝であるレアアイテムや古代文明の有用な遺物を見つけていくアドベンチャー物のゲームである。


それでものそのそと起きだし、昨日の帰宅時にスーパーマーケットで買ってきた総菜パンを温め、インスタントコーヒーで朝食とした。

歯を磨き髪の毛を整えて、服装か、今日は暑いんだっけ?もう秋も始まるってのに近頃は毎日熱いんだよね。

何度位になるのか携帯で確認し、半そでのシャツにした。

持ち物の用意をして、トイレに行き時間を見るともう8時25分を回っていた。


今日は通勤時と違う駅から乗って新松戸駅で乗り換えて海浜幕張駅に行くつもりだから少し早めにでなくては。

最寄り駅としては、若干こっちの方が近いんだけど、都心にある会社に行くとなるといつもの駅の方が早く着くんだよなぁ。


アパートの鍵を閉め、いつもと違う道を歩き始めしばらく行くと、同じ制服を着た園児たちとその母親と思われる女性たちに気が付いた。

その中に男性も一人混じっていて肩身が狭そうだ。

すると後ろからやってきた幼稚園の送迎バスが俺を追い抜て、その集団の前で停車した。

バスから保育士と思われる女性が下りてくると、俺の後方で「せんせー!」と声が上がり、振り向くと幼女が二人手を繋いで走ってくるのが見えた。

少し離れた場所にいる二人の女性はこの子たちの母親だろう。

多分、あの子たちは俺なんか見えてないんだろうなぁと思い、車道側に避けた。

そこに、保育士と思われる女性も小走りで寄ってきて、俺の前で屈んで二人の幼女を抱きかかえた瞬間、何かがフラッシュのように光り、突如として目の前の景色が変わり、どこかわからない部屋の中にいた。


















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