超常事象対策特殊部隊

とうもころし

第1話 目覚めた男

「がはっ……アア…くっ、苦…しいっ」


 ある日の夜、俺こと柊 湊(ひいらぎ みなと)は突然の苦しみにうなされていた。頭痛かも腹痛かも分からない苦しみ。頭に今日の夕飯の記憶を巡らせたが、変なものを食べた覚えはない。では、何がこの苦しさを引き起こしているか。それが分からない。ただ苦しい。しかしその苦しみとは裏腹に瞼が重たくなっていく。必死に寝まいとしていたが、次第に意識が遠のいていく。一瞬視界の隅に人影が見えた気がしたが俺の意識は夢の中へと落ちていった。


 翌日、目覚まし時計の音で目を覚ますと、昨夜の苦しみが消えていた。一瞬夢かと思ったがすぐにその考えを否定する。あの痛みが夢なわけがない。そう考えていると、布団の中の足のあたりがモゾモゾと動き出した。それは俺のお腹の辺りまで登るように迫ってきた。そして次第にそいつの顔が見えてくる。———猫だ。

俺が飼っている黒猫。艶があり、毛並みの綺麗な黒猫。名前はうるしだ。かれこれ9年くらいの付き合いになる。うるしは寝る時は俺の布団に入るのが習慣になっている。

 

「昨日は突然ジタバタしてごめんな。しかし、なんだったんだ?あれは…?」


 考えても仕方ないと思い、まだ寝ぼけているであろう頭を覚ますために洗面所に向かった。


 洗面所に向い、顔を洗って頭を覚醒させる。濡れた顔のまま目の前の鏡を見ると違和感を感じた。その違和感を探るように鏡を食い入るように見るとすぐに違和感の正体がわかった。

“目”だ。目が違う。青色だった瞳は右目だけ赤色になっていた。しかし、一度瞬きをすると、いつも通り両目とも青色だった。


「寝ぼけてるのか?」


 そう思うことにして、学校に行く準備へと切り替える。準備と言ってもただ着替えて、ご飯を食べ、歯を磨くだけの単純作業。ほんの数十分で終わる。そう思い、俺は再び、自分の部屋へと向かった。


 案の定学校準備は30分もかからずに終わった。余った時間にスマホを見ていると、気になるニュースがふと目に入った。


【再び発生!連続ビル倒壊事故!負傷者多数】


「またか…物騒だな」


 最近起きているビルが倒壊すると言う事故。しかもそれが連続だ。とても偶然とは思えない。だから人々は妖怪の仕業だの、何かの陰謀だとか、そんな憶測が飛びかう。


「にゃ〜、にゃ〜」

「おっと、ごめん忘れてた。ご飯今からやるよ」


 うるしに呼ばれスマホから目を離す。時計を見るともうすぐ家を出る時間だ。俺は急いでうるしのご飯を用意し、うるしの前におく。そして俺は仏壇の前に行き、手を合わす。


「行ってきます。母さん。」

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