へっぽこ勇者パーティーでも世界を救わせてあげたい 〜99の世界を救った歴戦勇者でも度し難い〜
篠原シノ
第1話「プロローグ」
――……世界の根源を司る大樹。その木漏れ日を浴びし聖衣を羽織りて……――
ここは世界の最果て。
魔王城、最奥の間。
砕け落ちた天井から覗く不気味に紅く染る空が、世界の命運を賭けた最終決戦の行く末を見守っていた。
「レイチェルもういい! 下がれ! 死ぬぞ!!」
聖剣レイブンハートを握る青年。勇者アレクが叫ぶ。
長い旅を経て、遂に諸悪の根源である魔王を追い詰めた勇者パーティーは最終局面を迎えていた。
しかし、魔王を追い詰めたのも束の間、勇者パーティーもまた強大な力を持つ魔王を前に、危機に瀕していた。
――……天地を蝕む大病を浄化する光となりて……――
「ふっ! 勝敗が見えてきたな勇者アレクよ! どうやら世界の全てを手に入れるのもあと少しのようだ!」
魔王に挑むは世界の精鋭を集めた8人。
それも今や立っているのは4人。
勇者アレク。
聖女ミーファ。
賢者オゥガスト。
弓術士レイチェル。
前衛を務めていた4人は既に命を奪われ、勇者アレク1人で前戦を凌いでいた。
レイチェルの後方支援によりなんとか戦闘の形を繋ぎ止めて入るが、それももう長くは持たない。
レイチェルの片目は潰れ、弓を引く指はもはや感覚を失い、自身の衣服を破いた布で指と
それでもなお、的確な射撃を行えているのは流石と言う他ない。
「兄さん、私だって覚悟の上でここにいます! この命尽きるまでお供し――」
その言葉を最後に、レイチェルの首が吹き飛んだ。
――……降り注げ救世の光柱槍よ……――
「レイチェル!!! くッッそおおお!!!」
自分より若い少女の命が散る。
仲間を次々と失っていく。
「ふははは! もう後がないぞ。後ろの聖女と賢者がこそこそと何を
次の一撃で、勇者アレクの片腕が吹き飛ぶ。
「っぐ」
絶体絶命。
魔王はトドメを刺そうと、片腕を掲げた。
「終わりだ勇者アレク!!」
魔王は絶望する勇者の顔を望んだ。
しかし、そこにあった顔はまだ諦めようとしない強い眼。
聖剣レイヴンハートが、勇者アレクの心を挫けさせない。
その気に食わないその顔を消し炭にしようと、魔王は魔力を込める。
その瞬間、魔王の足元が強く光った。
「な、なんだこれは!?」
気づけば魔王を中心に巨大な立体的な魔法陣が魔王を包み展開されて行く。
「繋いだ……! レイチェル! 皆んなのおかげでここまで繋いだぞ!!」
――……天罰招来!!
魔王は驚愕した顔で後方にいる聖女と賢者を見た。
「なんだ……なんだこの魔術は……! この俺が! 魔王が知らない魔術などあるはずが……っ!」
「魔術ではないぞい! 魔王よ。これは――」
「魔術と神聖術の混合術式なのです! 貴方を滅ぼすために発明された人類の叡智の結晶!」
「魔術と対となる神聖術の混合術式だと!? そんなバカなことが……!」
魔王が持つ魔法完全無効のユニークスキルにたかを括っていたその隙をついた、魔王必殺の切り札。
「お前が今戦っているのは俺たちだけじゃない! 人類の全てだ!」
「こんな……こんな筈では……っ!」
「「ディエス・イレ!!」」
二十三分と七秒。
長い長い詠唱を終えた聖女と賢者。
魔王に光の柱が降り注げられた。
「ぉ、オオ! オオオオオオオオオオオオ!!?」
絶叫を轟かせながら、土人形のように崩れ落ちていく魔王の体。
「おのれ……おのれぇ……! 手に入らぬ世界ならばいっそ滅ぼしてくれるわあああああああああああああ!」
「させるか!」
死に際に膨大な魔力を込める魔王。
それを阻止しようと、アレクは聖剣を振るった。
そして――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます