「雪国」に思いを馳せて

@i_love_you_both_good_and_bad

第1話

長いドライブを終えると、そこは「戦場」東京だった。


この書き出しは川端康成の小説「雪国」のパロディである。

今回の物語の主人公である秋村が、その小説「雪国」を読んだときの感想は、「これは貧しい田舎へセックスツーリズムに行った男の自己満足の物語だ」であった。

秋村は、「雪国」の文章は、遠回しで間接的に表現する日本人らしい書き方で、綺麗に書いてある一方で、そのストーリー自体は貧しい田舎にセックスツーリズムに出かけた男の自己満足の文章だと思ったのだった。

それが良いとか悪いとかではない。ただ秋村は、自分であれば、川端康成と違って、貧しい田舎に経済的格差を利用してセックスツーリズムに出かけていることは、まず明確に示して、小説を書くのにな、と思ったのだった。


なぜ秋村がそのように思ったか。

それは秋村自身が、経済的格差を利用したセックスツーリズムに準じたことをしていたからだろう。秋村は「雪国」の主人公とは逆で、自分が住んでいる田舎から、東京へセックスツーリズムに出かけていた。

でも東京は田舎より裕福な人が多いのに、セックスツーリズムが成り立つのだろうか?

セックスツーリズムとは、貧しい途上国などへ、その経済的格差を利用して買春に旅行へ行くことである。


秋村は、秋村自身と比べ経済的に貧しいと考えられる東京住まいの女性を狙って、恋愛と婚活をしていたのだった。それは定義の上ではセックスツーリズムではない。しかし経済的格差や社会上の優劣を利用している点で、秋村にはセックスツーリズムに準じた行為のように思えた。それを秋村自身は明確に意識して行っていた。その秋村が「雪国」を読むと、それは貧しい田舎へ経済的格差を利用して買春に出かけた男の自己満足の自分語りのように思えたのだった。

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