25.思い出を分け合える仲間に会えたから
既に何度か説明した
「子供の憧れの職業ランキング」で常にTOP10に入るほど人気があり、それでいて素質のない者は決してなれないという残酷なまでの
その厳しさは、一日10時間の授業と月に3度のみの休日にも表れている。季節毎の休暇も、春・秋3日、夏12日、冬6日と合計24日しかない(ちなみに、エル・セタドーンの大半の学校は旬休2日制で、季節休暇もコレの最低2倍くらいの日数あるのが普通だ)。
──とは言え。
一番上の研究科はともかく、下等科と上等科に所属するのは、まだ13~17歳の年若い少女たちだ。締め付けるばかりでは、息が詰まるだろうし、ストレスを溜め過ぎるのも、学習や実習に悪い影響をもたらす。
民の慰撫には
* * *
夏季休暇も終わり、リフレッシュした新鮮な気分で学院に戻ったアンナとセイラだが、放課後、講義室から連れ立って寮の自室に戻ろうとしたところで待ち受けていた上級生──それも、下等科ではなく上等科の二回生に呼び止められていた。
「え~と、つまり、リセンヌにも学園祭……もとい学院祭的なモノがあるんですね?」
少し話があるということで、食堂スペースのまで引っ張って来られ、前述のような解説を聞かされることになる。
いまいち要領を得なかったが、相手が単に3学年上だというだけでなく、
「ナキア、いつもながら君の話は少々回りくどいよ。来月半ばに自由研究発表会があるんだが、これはアンナくんの言う通り、他所では“文化祭”とか“学園祭”と呼ばれている催しに相当するだろうね」
ライトグレーのブレザーに黒のプリーツスカートという、上等科の通常制服を着ているにも関わらず、どことなく“男装の麗人”っぽい雰囲気のあるリザリアが、苦笑しつつアンナの言葉を肯定してくれた。
「それは分かりましたけど……わざわざ上等科の先輩方が、ワタクシたちを呼び止められた目的は何ですの?」
セイラもいぶかしげな表情で疑問を呈する。
「おや、ごめんなさい。リズの言う通り、わたくし、どうにも話下手で……今日は、おふたりに自由研究発表会の実行委員になっていただきたくて、お願いに来たんです」
ナキアの(またも少々迂遠な)説明によれば、上等科と下等科5学年から各2名ずつ実行委員を出し、計10名の委員会で発表会の運営を行う慣わしなのだとか。
そこで、以前に面識があり、成績と素行面でも優秀なアンナ&セイラに、勧誘に来たらしい。
「これは最初に言っておくべきかな。じつは実行委員になったからと言って、特に何か具体的な報酬や特典があるワケではないんだ。」
「ええ、ほぼ完全にボランティアだと言って、差し支えないでしょうね。強いて言えば、学院側の心象が多少良くなるくらいかしら」
それでも、自由研究発表会という“祭り”を実行するには、そのボランティアが必要なのだ。手を貸してほしい──と、ふたりは頭を下げる。
「うわ、頭を上げてください、ナキア先輩、リザリア先輩!」
狼狽しつつアンナが視線で
「大任ですわね。ですが──承りました。未熟者ですが、そのお役目、引き受けさせていただきます」
こういう人々の善意を
一方、アンナの方は、そこまで積極的でもないが、「セイラならそう言うと思ったよ」と肩をすくめ、異議は唱えなかった。
「ありがとうございます! 嗚呼、わたくしの予感はやはり間違いではありませんでした」
「だから、そういう言い方はやめろって──コホン! すまないね。彼女、アルフィーネの巫女の血筋らしくて、この
夢見るような表情をしているナキアを嗜めつつ、リザリアが再びアンナたちに軽く頭を下げる。
「とは言え、引き受けてもらえて助かったよ。そうそう、第1回実行委員会議が明後日の放課後にあるから、可能な限り参加してほしい」
* * *
「それで、貴女の意見を聞かずに答えてしまいましたけど、良かったんですの?」
安堵した表情で去っていくふたりを眺めつつセイラがアンナに問うと、アンナがニヤリと悪戯っぽい表情を浮かべた。
「うん、たまにはいいさ。だって、この学院で、こういう“普通の学生”っぽいコトをやれるのは珍しいし、なかなかおもしろそうじゃない。それに……」
少しだけ照れ臭そうに呟く。
「キミと一緒なら、こういう面倒事も、きっと楽しめるって思うんだ」
電撃ウィッチ -助けた少女に騙され身代わりにされた少年は異世界で超一流の魔女となる- 嵐山之鬼子(KCA) @Arasiyama
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