第38クエスト カルディア帝国に到着

 先ほどまで晴れていた空は白い雲に覆われていく。



怪しい天気を見せる中、長い時間をかけて目的地へと到着する。船はカルディア帝国の港で止まり、乗客達は次々と降りていく。



 サン達も港の地に足を踏み入れ、全員が周りを見渡すのだった。



「やっと着いた! オイラ、ずっと待ちくたびれたぞ」


「ここがカルディア帝国……! 高い軍事力で繁栄してきたと言われる国家。そして、名物や行事も盛んに行われ、ニュートビアに次ぐと言われている……!」



 シルフィがどこからか本を取り出して、ページをめくっている。それを見たアクリアが困惑した様子で言った。



「し、シルフィ? 一体どうしたの?」



 呼びかけられたシルフィは慌てて本を閉じ始める。



「ご、ごめんなさい! ついいつもの癖で……えへへ」



 舌を出してシルフィは笑う。



「なあ、そろそろ行こうぜ。アクロ先生達がどこに行ったか、聞き込み調査をしないとな」


「キバッグ君の言うとおりですね。それじゃあ、手分けして探しましょうか。サン君とシルフィさん。キバッグ君とアクリアさん。そして私は1人で聞き込みを行います。30分後にここでまた集合しましょう」



 今回はシルフィと初めての聞き込みを行う。サンは気合を入れるため、自身の頬を両手で軽く叩いた。



「よーし! シルフィ、さっそく調査に行くぞ!」



 サンは港を抜けた先にある城下町を目指して走り出す。その後ろにシルフィが小さい体で追いかけている。



「ま、待ってくださいー」



・・・


 城下町にやって来ると、サンはその賑わいぶりに驚いた。



 長い一本道に様々なお店があり、どこも客で繁栄していた。本屋や洋服屋などが視界に入るが、特に気になったのは内部が昔ながらの雰囲気を漂わせるレストランだった。



 しかし、聞き込みに集中するため我慢した。



 まず誰に聞き込みをするか迷っている時、シルフィは言った。



「すごい人ですね。私の故郷でも行事がありますけど、こんなに賑わってないです」


「シルフィの故郷ってどんなところなんだ? 教えてくれよ!」


「私の故郷は小さな街で、色んな種族が住んでいるんです。たくさんの行事もありますけど、中でも有名なのは世界で1番、書籍を保管している図書館なんです。私はその図書館に毎日通い、今の知識を身につけた感じ……ですかね」



 それならばシルフィの分厚い本が大量に書き込まれているのも納得できる。サンはうんうんと頷いた。



「だからシルフィは賢いのか! 卒業したら、その図書館に行ってみたい!」


「その時は私が案内するので任せてください! サン君が興味を引くような本がたくさんありますよ」


「楽しみだな! じゃあ――」


 サンが言いかけた時、どこからか鈴の音が聞こえる。はっきり分かると横を振り返った瞬間、思わず心臓が跳ねる。



「君達……どうだね……? 今すぐ占っていかないかい?」



 か細い声で呼びかけたのは、鬼の仮面をしている女性だ。暗い雰囲気を漂わせる店。変な飾りが部屋中につけられ、いかにも怪しい占い屋だった。



「さ、サン君……」



 シルフィは仮面をした女性に怯えているのか、サンの後ろに隠れる。丁度いい機会だと思い、店の中に入る。



「実はオイラ達、人を探してるんだ。なんかこう……強そうな3人組を見なかった?」



 女性は目の前にある水晶玉に両手をかざしている。



「君達の探している人達って、これのことかい?」



 水晶玉にはアクロ達の姿が映っている。サンが反応すると、思わず指さした。



「そうそう! オイラ、この人達を探してるんだけど、どこにいるか知らない?」


「城下町を通って、カルディア軍の本部に向かうのを見たよ。それ以来、姿を見たことないね」


「そっか……教えてくれてありがとな!」


「これくらいお安いご用さ。ついでに無料で占ってあげるよ。どれどれ……」



 水晶玉は眩しい輝きを放つ。女性は両手を撫でるように動かすと一息吐く。



「どうなったんだ?」


「……もし、カルディア軍に行くなら気をつけたほうがいいよ。詳しくは分からないけど、何か起こりそうだ」



 隠れていたシルフィが現れて言った。



「なんでしょう……そう言われると、不安になりそうです」


「とりあえず先生達がそこにいるなら、気をつけて行こう! 占い師の姉ちゃん。オイラ達、行くからまたな!」


「また気になったらおいでよ。今度は何でも占いしてあげるからさ」



 店を出てサンは城下町の道先を眺める。


 

これからどんな事が起こるのか。不安は残るが、アクロ達を助けるために進まずにはいられない。



 集合時間が近づき、港へと戻るのだった。

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