パパと息子

羽弦トリス

第1話トマトに挑戦

パパはトマトが大嫌い。息子はマネして、

「ママ、僕もトマト大嫌い!」

と、言い出すようになった。息子8歳の時。

ママは、

「あんたのせいで、セイタはトマト嫌いになったんだから、今夜、トマトスライス出すから、美味しそうに食べてよ!」

「えぇ~、そんな!ママ、僕は小学生の頃、畑のトマト食べ過ぎて、嫌いになったのだよ!あの、中身のクチュッ゙てしてるところが大嫌いなんだ」

「はぁ〜、パパ。大人でしょ?今夜は美味しそうに食べて!」

僕は観念した。

夜ご飯。生姜焼きと味噌汁、そしてトマトスライスが出てきた。

「セイタ、好き嫌いはいかんぞ!トマトを食べなさい!」

「パパだって食べてないじゃん」

「後から食べる。先にお食べ」

ママは有無を言わせず、トマトスライスを小皿に取り分け、僕と息子に渡した。

僕は、トマトにマヨネーズをたっぷりつけて、トマトを口運ぼうとすると、青臭い。

「ママ、このトマト、腐ってない?」

「何言ってんの?今日、スーパーで買って来たんだよ!早く食えよ!」

『うぐっ!くっせぇ〜。ママもセイタも注目している。た、食べなくては……』

僕は恐る恐る、トマトを口の中に放り込んだ。

僕は涙目になりながら、トマトを食べた。

「セイタ、今度はお前の番だ!トマトを食べなさい。お、美味しいよ!」

「うん」

「パパは、涙が出るくらい美味しいらしいよ、セイタ」

セイタはトマトをパクパク食べ始めた。

食わず嫌いだったのだ。

「あれっ、パパ泣いてるの?」

「……い、いや」

「パパ、トマト美味しいよ。もっと食べて!」

「パ、パパはセイタの分が少なくなるから、1枚で十分だよ」


すると、ママが更にトマトスライスを切ってきた。

「パパ、沢山あるから、セイタと食べて!」

「……う、うん」

僕はヤケクソで口にトマトを運んだ。

食後、セイタとお風呂に入り先にセイタは寝た。

「パパ、やれば出来るじゃん」

「ま、まぁ、子供のためだから」

「明日は、プチトマトだよ」

「勘弁してくれ、ママ」

「セイタはトマトを克服したんだから、パパも克服しないとね」


あれから、7年経ってもトマト嫌いは治っていない。

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