つまらないものが嫌い。引退して欲しい。

エリー.ファー

つまらないものが嫌い。引退して欲しい。

 さようなら。

 さようなら。

 神様。

 いずれ、僕になるはずだった木の上で。

 さようなら。

 さようなら。

 神様。

 すべてが消え去って何かになっていくのを見つめましょう。

 さようなら。

 さようなら。

 神様。

 良くなることはない。

 消え去って死ぬしかない。

 さようなら。

 さようなら。

 あぁ、神様。

 白髪が喉に絡みつくって話しさ。

 もしも、僕を失っていいのなら。

 僕が君から僕を奪ってもいいのなら。

 さようなら。

 二度とない出会い。

 一期一会ではない。

 これは、奇跡ではない。

 ただの自傷。

 前を向いて歩く勇気がないことへの言い訳。

 月が落ちてくる夜を待つ君と僕。

 さようなら。

 さようなら。

 神様。

 これは、詩ですか。

 いいえ、小説ですか。

 はい、ショートショートです。

 定義とはなんですか。

 何がショートショートなのですか。

 どこからどう見ても詩ですよ。

 これは、ただのポエムです。

 いいえ、詩です。

 詩に決まっています。




 僕は偶然を偶然を装って、雪の中に倒れた。

 雪は笑っていた。

 そして、僕を抱きしめてくれた。

 二度と起き上がれないほどの愛が僕に襲い掛かった。

 寒いのは最初だけだった。

 すぐに、温かくなった。

 恋しいという気持ちは霧散し、満たされていった。

 もう街を離れて四日。

 僕は僕のような人間を見つけることを諦めてしまった。

 もう、無理だ。

 だから。

 僕の中に僕に近い誰かを作ることにした。

 一番の理解者は、僕しかいなかったのだ。

 空が割れていく。

 雪が降ってくることはない。

 白い病魔によって人類が滅んでくれることを待つだけだ。

 もしも、僕の中に冬という季節がなければ、何もかも忘れられるだろう。

 青い嘘をついた。

 でも、雪は褒めてくれた。

 僕のことを器用だと言った。

 羨ましいと言った。

 涙が出た。

 嬉しい、という気持ちではない。

 僕の中には感情の欠片もなかった。

 ただ、雪の中に僕がいて。

 僕という存在がアイデンティティが、雪の中に溶け込んでいくのが分かっただけだった。

 星が落ちてくる。

 僕に向かって落ちてくれればいいのに。

 でも、難しいだろう。

 死にたいと思っても、死なせてくれない。

 自然なんて、ない。

 どこにもない。

 僕は、夏を見ることもなく涙を流す。

 おしまいが見えて来た。

 でも、四季なんていらないのだ。

 僕は冬が一番好きだ。

 だから、春も夏も秋も消え去ってくれて構わない。

 一年間、冬がいいのだ。

 香ってくるのは山からだ。

 眠くなってくるのは、僕が僕を信じているからだ。

 僕は君との間に何も見つけることができない。

 繋ぐものなど何もないのだ。

 でも、零距離だ。

 僕が雪を信じている証拠だ。

 お願いだから、ここから始まるようなことがないようにして欲しい。

 これは、あくまで最初で最後の出会いなのだ。

 なぁ、そうだろう。

 雪よ。

 もう二度と、僕を目覚めさせないでくれ。

 快楽の中に閉じ込めてくれ。

 何も考えたくないし、何か考えているような君でいて欲しくないんだ。

 風が来た。

 少しだけ寒いと感じた。

 けれど。

 すぐに雪が降って、体が温まっていくのを感じた。

 戸惑いはない。

 蝶のような心地である。

 僕の生まれた国は南にあった。

 皆、陽気だった。

 僕はそんな国に生まれた王子で、誰にも好かれなかった。

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