転生機族の英雄譚 ~俺は病弱な妹を救うためだけにゲーム知識を駆使して超難関のハーレムENDを目指すことにした~

シンギョウ ガク

第1話 未到達領域



「真のラスボス撃破っ! これで世界で誰も到達できなかった超難関の全員生存ハーレムEND確定だ!! 俺はやり遂げたんだ! やったぞ、紗奈……。ついに……」



 世界中の『神霊機大戦』のプレイヤーが、誰一人到達することができなかった幻のエンディング。



 あまりに条件達成が難しすぎて、全員生存ハーレムENDは開発会社のフェイク情報だと言われていた。



「紗奈……お前との最後の約束はようやく果たせた」



 このエンディングを一緒に見るはずだった今は亡き妹の名を告げると、両目から涙が溢れ出していく。



 10年前、高校生だった俺をこの『神霊機大戦』という神ゲームに誘ってくれたのは、当時中学生になったばかりだった妹の紗奈だ。



 子供の時から身体が弱く、病院暮らしの長かった妹の紗奈は、自由に身体の動かせるVRゲームが大好きだった。



 そんなゲーマーの紗奈から『神霊機大戦』の複座型霊機に乗りたいという熱烈なお願いをされ、俺が操縦手、妹が射手で始めた。



『神霊機大戦』は、プレイヤーが機士きしと呼ばれるパイロットとなって、人型のロボットである霊機れいきを操り、魔物や妖霊機ファントムといった敵を倒すメカカスタマイズアクションゲームだ。



 専用VRヘッドギアで、VR空間上に霊機コクピットを再現した操縦システムは、ロボマニアたちも納得の出来の神ゲー。



 俺たちは当時流行り始めていたVR配信も始め、兄妹配信者として『あにいも』チャンネルを開設し、『神霊機大戦』というコンテンツのブームに乗って、そこそこの登録者数までになった。



 配信者としての名声に興味はあまりなかったが、妹の紗奈が配信によって外の世界と繋がれたことをとても喜んでいる姿を見るのが楽しかった。本当にあの紗奈の笑顔を見ているのが楽しかったんだ俺は……。



『神霊機大戦』がブームとなって大ヒットしたことで、いろんな配信者が参加して操縦スキルを競うリアルイベントの『神霊機大戦VS』は、年を追うごとに市場が拡大し、5年後には1億人が視聴するビッグコンテンツに成長した。



 そこに俺たち『あにいも』も参加を打診され、『神霊機大戦VS』複座型世界大会で三連覇を為し、最強複座王の称号と殿堂入りをした。



 けれど、楽しかった時間はとても短かった。本当に短かった。もともと身体の弱かった妹の紗奈は、配信者の激務で身体を壊し持病を悪化させ、次第にやせ衰え配信もできないほど衰弱した。



 そんな妹の姿を見てられなかった俺は、チャンネルの休止を宣言し、配信者として稼いだ金を注ぎ着込み、「妹に最高の治療を」と望み、名医を探し出して治療をしてもらっていたが、その甲斐もなく紗奈は若くして天国へ行ってしまった。



 紗奈を病で失った俺は、配信や『神霊機大戦』に興味を失い、生きる屍のように日々を過ごしていたところ、誕生日に一通のメールが届いた。それは亡くなった紗奈が、俺に宛てて送っていた最後のメールだったのだ。



 動画URLをクリックすると見覚えのある紗奈の病室が映し出され、亡くなる直前に撮った物で、自分の死期を悟った妹が、動画内で俺に難題とも言える最後のお願いを残した動画だった。



 それが、幻と言われていた『神霊機大戦』の全員生存ハーレムENDのエンディングだ。



 ゲーマーとして、『神霊機大戦』の配信者として、幻と言われているそのエンディングを見たいって妹が涙を堪えて喋っていた。自分がそれを見ることは叶わないと知りながらだ。



 その動画を見た俺は、自分の命を引き換えにしても守りたかった妹の最後の願いを叶えるため、再び専用VRヘッドギアを被り、今度は単座の霊機を操り、全員生存ハーレムENDを目指して『神霊機大戦』を始めることにした。



『神霊機大戦』は、ただの競技用のアクションゲームというわけではない。



 武器や機体の開発、領地経営、資源管理、サポートキャラ育成、戦術指揮、戦略シミュレーション、そしてヒロインたちとの恋愛といったやり込み要素がとても充実している作品だ。



 どれだけ時間を注ぎ込んでやり込んでも、飽きさせないという神ゲーだ。



 そんな幻のエンディングのスタッフロールが、専用端末であるVRヘッドギア内のモニターに映し出されていく。



 俺が妹の紗奈の最後のお願いを叶えるため挑んだ全員生存ハーレムENDルートも、攻略に相当の時間がかかっている。



 ハーレムENDの前段階である七人のメインヒロイン、三人のサブヒロイン全員の生存ルートを見つけるのに一万時間。



 そのヒロインたち全員に、主人公がハーレムを築くのを認めさせるフラグを発見するのに要した時間は、三万時間を超えていた。



 トータル四万時間超えのやり込みの末、辿り着いた全員生存ハーレムENDだった。



 おかげで、『神霊機大戦』に関する知識は世界一だと自認できると思う。



 妹から残された難題達成の余韻に浸ってたら、スタッフロールが終わり、メッセージウィンドウが立ち上がった。



『これより、エピローグエピソードの読み込みを開始します』



 メッセージウィンドウの下に出たダウンロードバーの数字が10、20、30と増えていく。



 紗奈、ようやくお前が望んだエンディングムービーが見えるぞ。ちゃんと見てるか。兄ちゃん、お前が残した難題解決に対して、わりと頑張ったから褒めてくれると嬉しいんだが……。



 攻略に情熱を注いだことで薄らいでいたが、妹がもうこの世界にいない寂しさを思い出し、涙が溢れ出すのが止まらない。



 ダウンロードが90を超え、99%まで来た。



 残り1%……が、進まねぇ! こんな大事なところで、ダウンロードあるあるやめてくれ! 紗奈に、紗奈に見せてやりたいんだ!



『システムエラー! 正常にダウンロード完了できません! すぐにヘッドギアの再起動を行ってください!』



 メッセージウィンドウの文字が、赤く点滅している。



「嘘だろ! ここまで来てかよっ! 再起動したら、またあのクソつよラスボスを倒すことになるだろうがっ! ふざけんな!」



 何とか再起動せずにダウンロードが終わるようコンソールを弄る。



『システムエラー! ヘッドギアの再起動を行ってください!』



「これだけ苦労して到達したハーレムENDのエンディングムービーを、俺と紗奈に見させろぉっ!」



 復帰させようと必死にコンソールを弄ってたら、不意に警告音が途切れ、急に視界が真っ白に染まる。



 俺の意識はそこで途切れた。



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新作始めました。10万字分は書き溜めてあるので、定期更新していく予定です。ドラゴンノベル様のコンテストにも参加しておりますので、☆やフォローして応援して頂けると幸いです。


ロボもので商業化して最後は登場機体の立体化してみたいと思ってます。ロボはいいぞ!



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