第2話
夢であってくれ。そう願ったがダメだった。六時。アイツが迎えに来た。
「さあ!魔法特訓始めるよ!」
まだ眠いのに。昨日深夜にやってきたお前のせいだぞ。
「じゃあ、今日は『物を浮かす術』習得を目指そう!」
俺たちは今空き地(ほぼ森)にいた。確かにここなら木々で隠されて他の人からは見えないだろう。
「じゃあ、魔法の杖を選んで! 触った時に温かかったらそれが颯太のための杖」
「おう。選んでみる」
杖をそれぞれ触ってみる。冷たい。冷たい。ぬるい。冷たい。熱い。ん? 熱い?
「これ、めちゃくちゃ熱いんですけど」
「それが颯太の杖だよ。ほら、持ってみて」
「いや、熱くてさわれないんだけど」
「もう冷めてるから」
その杖は上の方に鷲の飾りがあった。杖には蛇の飾りが巻きついている。
「この杖おかしくね?」
「全然」
「毒々しいんだけど……」
俺はデイビッドを睨む。よくもこんな杖を選ばさせたな。怖いだろ。鷲に蛇って。学校でいじられるぞ。
「とりあえずさ、心の中で言って。『岩を持ち上げてください!』って」
「へいへい」
正直言うとコイツに素直に従うのは嫌である。だって俺人間だよ? 相手は悪魔だよ? 人類の敵だよ? 言うこと聞いちゃダメじゃん。と思ったのだが仕方がないのだ。試験でこいつは人間だとバレていろいろ大変なことになるのは避けたい。というか死んでも嫌だ。
(岩を持ち上げてください)
すると目の前にあった俺では絶対にびくともしないであろう岩は地面から1メートルほど持ち上がったのだ。これはびっくりするしかないな。
「へえ、颯太、魔法使いの素質あるよ」
「うれしくない」
俺は人間だぞ。魔法使いになんかなるもんか。でも初めて魔法とか使ったのにここまでとは。
「あー⁉︎ そ、その杖、もしかして!」
「ど、どうしたんだよ⁉︎」
「鷲は大神ゼウスの。そして蛇は医術の神アスクレピオスのなんだよ」
え? 何? この杖、神話のやつなの? そんな大層なもの俺が持ってるのはダメじゃね?
「いいんだよ。それくらい。まあ、がんば!僕は休んどくから」
待てぇぇぇ‼ お前は何をした? 俺に何を教えた?何も教えてねえだろうがあああ! というかいい加減人の思考読むのはやめろぉぉぉ‼ と言いたいが怒らせたら怖いので黙っておきます。はい。
ということで俺が一人で岩を浮かしたり自分を浮かせたりしているころ。―浮かせてるだけだな―デイビッドはぐーすかぐーすか寝ていた。
「俺に魔法を教えろぉぉぉぉぉ‼」
ついに言ってしまった。怒ったかも……やばい‼ 逃げよう!
「はあ? 一人でやれよ愚図」
……俺は愚図だったのか? まあ、悪魔と人間じゃあ全然違うしな。
「なーんてね! 嘘嘘。冗談だよ。真に受けないでよ」
よかった。怒ってなかったみたいだ。
「結構上達してるね。試験、いけるよ。頑張っておいで」
「おう」
「じゃあ、今日はゆっくりおやすみ」
デイビッドはそう言ってから飛び立っていった。そっか、悪魔って飛べるんだな、とどうでもいいことを考えながら俺は家路についた。
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