人間だけど悪魔学校に入学します

@iiyo123123

第1話 

 あー。今日もいい天気ダナァ。うららかな春に、鳥のさえずり。あはははははは。

そう思っていた矢先だった。

「ぎゃあああああああ⁉︎ どいてええええええ!」

「え? なに? どゆこと⁉︎」

俺がびっくりするのも無理はなかった。だって人が空から降ってくるんだよ?びっくりしないほうがおかしいと思う。とりあえず避けなければ!

「う、うわあああああ!」

間一髪だった。その人は地面に座り込んでいるが周りはヒビだらけ。どれだけの速度で落ちてきたんだこいつは? ソイツは真紅の短髪に、瞳もまるで炎が燃え盛るような色だった。しかし服はぼろぼろ、そしてなぜかマントを羽織っている。

「い、いたたたたた……どうしよう……ここどこだよぉぉぉ……」

などと、勝手にふらふらと歩き出した。しかしすぐにドサッと倒れる。

「え、えっと……大丈夫ですか⁉︎」

「大丈夫……じゃない……」

ソイツはそう一言言うだけで泡をふきながら気絶してしまった。地面に穴があいたほどなのでそれなりに速度が出ていたはずである。仕方がないので俺の家——つってもアパートだけど——に連れて帰ることにした。

 「う……ん。ここは……?」

「俺の家だ」

「え……古くさっ。あと汚いな」

「うるせえ! 人の家に文句つけるんじゃねえ!」

家は家でもアパートだけどね。家じゃないしね。

「ここ、アパートじゃね」

ギクッ! バレたか。確かにアパートじゃ家とは言えないけどさあ……うん……べ、別にいいよね!

「まあ、いいか」

ホッ。怒るかな〜なんて思ってたんだけどね。

「まあ、とりあえず自己紹介といくか。俺は田中颯太。よろしく」

ソイツと俺はかたく握手をする。

「ふ〜ん。名前と性格が合ってないね」

うるせええええ! コイツ、マジで人の神経を逆撫でにする奴だな。

「僕は……そうだ、僕には名前がなかったんだったっけ。じゃあ、これだけ言っとくよ。悪魔界から来た悪魔族だよ」

「は?」

思わず声が出てしまった。だって仕方がないだろう! 悪魔だぞ、悪魔! 人類の敵じゃないか。そんなヤバい奴と一緒にいてもいいのか⁉︎

「そんなに警戒するなよ。別に人類の敵になるやつはいるけど僕じゃないよ? 僕の友達のホープとかがヤバいかもね。僕より強いし」

「へ、へ〜……す、すごいんだねぇ……」

いやはや、なんと言えばいいのか。第一、ホープって英語で希望だろ? 悪魔にはふつりあいなんじゃないのか?

「そんなことないよ? 名前が名前なだけで実際は悪魔なんだから。ちなみに僕は二〇〇〇年生きてるけどアイツは一〇〇〇〇年以上生きてるからね。僕とは比較にもならないぐらい強いんだ。負けたところなんて見たことないね」

「つ、強いんだな……ってか、何、勝手に人の思考読んでんだよ! やめろ!」

「チッ」

ふてくされやがった。悪魔ってみんなこういうのなのか?しかし、こういう奴ほどチョロいのだ。

「ケーキが欲しくないのかな〜?」

「けーき⁉︎ なんだそれは⁉︎ 秘密兵器か⁉︎」

予想通りチョロかった。そして悪魔にはケーキという概念がないのか。……まあ、これで一つ賢くなった!

「ところでさあ、俺の名前、考えてくれるよな?」

「へ?」

ソイツはにっこりと笑って俺の肩を掴んでいる手に力を込めた。痛いんですけど。そんな約束をした覚えはないのに。まあ、つけてくれというならつけてやるけどさ。

「わ、わかった! つけるから! えっとぉ……デイビット! お前は今日からデイビッドだ!」

「オッケー! デイビットね! ありがとー!」

「お、おう……元気っぽいし帰りな……」

もう疲れたのでゆっくり寝たいと思い追い返そうとした時だった。

「いーや! まだだね! けーきという名の秘密兵器の正体を教えてもらってない」

「え⁉︎ 俺がお前に教えるの⁉︎」

「ダメ?」

頼むからそんな綺麗な目で見ないでくれ! 俺は忘れていた。コイツはそういえば悪魔だったな……狡猾なのは仕方がないか……

俺は仕方なくケーキというものを教えてやることにした。

「ケーキというものはな、スポンジみたいにやわらかい食べ物だ」

「僕も食べてみたい!」

目をキラキラと輝かせて迫ってくるデイビッド。

「お、おう。また今度な」

「は〜い!」

そう言ってデイビッドは自分の世界に帰っていったのだった。

 「ふあああああ……」

眠い。めちゃくちゃ眠い。なんだこの睡魔は。デイビットのせいか? 悪魔なんて家に上げちゃったからだ。そうに違いない。そして今、俺は夢でも見ているのだ。そうでなければ目の前にデイビットがいることの説明がつかない。

「元気?」

この第一声で分かった。現実だ。

「眠い……しばらく寝させてくれ……まだ夜中の十二時だぞ……」

「その時間帯は悪魔族が最も活動する時間帯だよ」

ごもっともである。

「僕にけーきを食べさせてくれるんだよね⁉︎」

「ケーキは夜中に食べるもんじゃないぞ……」

そう言ったものの怒らせたら怖いので渋々食べさせる。

「うまっ⁉︎ 新感覚!」

お気に召したようでよかった。口に合わない、と暴れたら俺の家(アパート)が壊れて家賃どころじゃなくなるところだったからな。

「今日はね、誘いに来たんだよ」

「何に?」

「悪魔学校に入学する気ない?」

は? いや、いきなり言われても……ていうか、俺人間だよ? 殺されるよ? ホープとかいるんだろ? 無理じゃん。

「いや、無理だって。ホープとかにボコボコにされる」

「ホープには僕から言っておくから。あ、あともうエントリーしちゃったから、頑張って!」

だったら聞くなああああああああ‼︎ 何勝手にエントリーしてんだ、このクソ悪魔はああああああああ‼︎

「また明日特訓のために迎えに行くから、試験までがんばろー!」

試験とかあるの? いやいやいやいやいや、無理だろ。魔法とか使えねえよ。

「魔法とか使えないから。人間だから。無理。却下」

「……ごめん、魔法コースにエントリーしちゃって……」

このクソ悪魔がああああああああ‼︎ なんて事してくれてんだああああああああ‼︎ もう無理だ。殺される。

「僕がサポートするから!ね!」

そんなこんなで騒々しい深夜が過ぎていった。

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