第29話 巨大迷宮 中編
明らかに異質な部屋の真ん中にある明らかに異質な〈石像〉…しかも騎士の形に掘られてるからな……これ、絶対動くだろ。
「……よし、ベリル・GO」
「いや行くわけないでしょ!あんなあからさまに動きそうな〈石像〉のところ…」
「まあまあ、ここは
俺とベリルがどっちが先に〈石像〉に近づくかをなすりつけてると、その横を何事もないようにルナが通り抜けようとしたので俺は慌てて止める。
ただ、ルナが気になったのは〈石像〉の方ではなく、その後ろにあるものらしい。
「ねえみのる、リルおねえちゃん、あれなんだと思う?」
ルナがそう言いながら〈石像〉の後ろの壁をゆび指す。
そこは水晶のいくつかが変に突起してをり、そこには白い球?…水晶?ここからはよく見えないが何かがあるのは確かだ。
……ただまあ、これであの〈石像〉が後ろにあるやつを守ってるのは確定したな。
「…よし、ベリル・GO」
「2回も同じことしないわよ。
……まあ今はそんなことどうでもよくて、これあの〈石像〉は後ろのやつ守ってるわけでしょ?
もし仮に、私たちがこの部屋から逃げたとして、この〈石像〉は部屋から出てくると思う?」
「……まあ、出てこないんじゃね?守ってるみたいだし。
でもそうだったとして、なんか出来ることある?」
「いやいや、仮に部屋から出てこないならルナちゃんが外から魔法打つだけで完封できるじゃん。」
「わたし?」
「う~ん、理論上は確かにそうだけどそんなにうまくいくか?
さすがにここを造った人もその程度のこと対策してる気がするんだが…」
「まあまあ、そんな風に考えてる暇があるくらいならとりあえず試してみよう……というわけでルナちゃん、あの〈石像〉に向かって魔法を当ててみて。」
「うん、わかった!」
元気よく返事をしたルナが杖を少し上に掲げると、今度はそこそこの大きさの
「アイシクル・ショット!」
ルナが魔法を詠唱したのを合図に、浮かんでいた6本の氷柱が〈石像〉に向かって飛んでいったが、予想してた通り〈石像〉が動き出し氷柱をすべて持っている剣で叩き落してしまった。
……ただ、〈石像〉は部屋の外にいる俺たちを攻撃する様子もなく、元の位置に戻って動かなくなった。
「…………いや、マジで攻撃してこないのかよ。」
「よしルナちゃん、あの〈石像〉が壊れるまでどんどん魔法打ち込んじゃって!」
「うん、わかった!」
こうして反撃できない〈石像〉に向かって魔法を放つという、一種のいじめみたいな状況が目の前で繰り広げられ始めた。
ベリルはいい機会とばかりにルナに魔法を教えてるし、ルナもその魔法を〈石像〉に打ち込んでる……よし、寝よう。
朝からずっと動きっぱなしで疲れていた俺は睡魔が限界に達しておりそう決断する。
というわけで、俺は隣でなっている爆発音をしり目に、〈アイテムボックス〉から布団を出して仮眠をとることにした。
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……………
………
「……おき……おきて……みのるおきて!」
「うっ…あ……うん?……俺どのくらい寝てた?」
「う~ん…わかんない。
…あっそうそう、〈石像〉こわせたよ!」
「もう、壊せたのかよ……あれ?ベリルはどこ行った?」
「リルおねえちゃんはみのるがおきなかったからここにくる前にわたしがみつけた剣とかをとりに行ったよ。」
……それベリルのやつ、迷ったりしないよな?
まあ一人で行ったってことは大丈夫か。
俺はまだちょっとだるい体を起こして、布団をかたずけながらそんなことを考える。
「にしても、ここホントに変わらないな。
今が夜か昼かもわかんないじゃん。」
「えっとね、いまは夜の9時36分だよ。」
「……ん?なんでそんな正確な時間がわかるんだ?」
「これだよ!」
そう言いながらルナが見せてくれたのは俺が知っているものより少し大きいが『懐中時計』だった。
「…ルナ、そんなの持ってたっけ?」
「ううん、さっきこの迷宮で拾ったの!
みのるが全然おきなかったから、リルおねえちゃんと二人で行ってきたよ!」
……いや、いろいろ言いたいことあるけど、寝てる俺を置いて行ったの?
さっきまで動いてた〈石像〉とかいたのに……もしも何かが徘徊してたらどうするんだ、俺死んでたぞ?
まあ、寝てた俺も悪いけど、数時間泳いで水から上がったら数時間歩いてって、正直もう限界だったんだよ。
「はい、これみのるの。」
俺が二人の行動についてもやもやしていると、ルナがどこかから取り出したもう一つの『懐中時計』を俺に渡してきた。
「…これ俺が貰っていいの?」
「うん!『懐中時計』は4つあったから、リルおねえちゃんがやまわけ?だって。」
じゃあベリルも持ってるってことか、じゃあ遠慮なくもらうとするか。
ちなみに俺の『懐中時計』の色は〈黒〉でルナのは〈白〉、そしてルナが言うには残りの2個は〈グレーっぽいシルバー〉と〈金ぴかのゴールド〉とのこと。
そしてベリルは以外にも〈シルバー〉をもらうらしく、〈ゴールド〉が余るらしい。
……【宝探し】とかするくらいだからてっきりベリルは〈ゴールド〉をもらうと思ってた。
………
そんなことを俺たちがしゃっべっているとベリルが『真っ黒の片手剣』を手にもって帰ってきた。
「お、やっと起きたのねあんた。」
「…帰ってきたな、無防備な俺を放置してどっか行ってたやつが。」
「それは寝てたあんたが悪いでしょ。」
いやそうだけど、もっと思いやりを持ってくれよ。
「ねえリルおねえちゃん、手にもってるのなに?
なんか、いやなかんじがするんだけど…」
「ああ、これね……私もよくわかないんだけど、どうやら魔法を打ち消すことができる剣……らしいわよ。」
「らしいってことはまだ試してないのか?」
「…いや、不気味だからあんま触りたくなくてね。
というわけで、この剣あげるわ。」
そういって、ベリルは俺のところまで歩いてきて、剣を渡してきた。
「いや俺にそんな不気味な剣渡すなよ!」
「まあまあ、〈アイテムボックス〉だったっけ?
それに入れておけばいいじゃん…ていうか、これから見つけたものは全部その中に入るんだから変わらないでしょ。」
いや、それはそうなんだが…もうちょっと配慮してくれてもいいだろ。
俺はそんなことを思いながらも口には出さず、〈アイテムボックス〉に黒い剣をしまう。
「じゃあ、実も起きたことだし、あの水晶みたいなやつ取りに行こうか。」
「ん?水晶ってあの〈石像〉があった部屋にあったやつ?
まだとってなかったのか。」
「まあまあ、あんたも見たいかなって思って取らなかったのよ。」
確かに何かありそうな感じだったからな、こいつにもそういう心がまだあったのか。
「あれ?リルおねえちゃんさっき、『何かあった時の盾が今寝てるからあの水晶は後で取りに行こう。』っていってたよね?」
「…………おい。」
「まあまあまあまあ、細かいことは気にしない気にしない……さあ、早く水晶を取りに行こう。」
ベリルは口早にそう言うと、部屋の入口まで歩いて止まった。
まるで俺が先に行けと言わんばかりの姿である。
くそ…こいつ、絶対いつか痛い目に合わせてやる。
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作者 ベリルは金にがめついけど、別に金みたいなあからさまなのは好きじゃない。これ豆知識ね。
女神 きれいなものに価値を求める性格ってことですね。
作者 ちなみに実は古いものに価値を感じるタイプ。
女神 おじいちゃんかな?
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