第17話 世界樹の森

 昨日、畑泥棒ことベリル・セレストを一味に加えた俺たちは現在、ルナを加えた3人で朝食をとっていた。


「ねえ、まさかと思うけど今日も畑耕すの?」


「いや、さすがに俺もきついし今日は休憩。」


「ていうか、みのるはなんで急に畑をたがやそうとしたの?

 もうすぐ収穫だし、今のタイミングじゃはやくない?」


「それはどっかの畑泥棒がメシを食いまくってるのがムカついたからだな。」


「え、なに?もしかして八つ当たりだったの?」


 ベリルはフォーク片手にテーブルを叩きながら俺に攻めるような視線を向ける。


「収穫の予習って考えたら別にいいだろ。

 そんなことより、そのいちご食べないならおれがもらっていいか?」


「ダメ。」


 そう言いながらベリルはリスのようにいちごを口に詰め込んでいく。


 横を見ると、ルナも同じようにいちごを食べていた。


「にしても、ここの食べ物は美味しいね。

 この森で暮らしてるだけでも驚きなのに、まさか農業をしてるなんて…。」


「ん?この森って農業とかできないのか?」


 たしかに土は硬いけど栄養もあるし、農業できる環境だと思うけど。


「いや、農業ができないわけじゃなくて、こんな危険な動物やら植物がいる森で暮らそうとする物好きなんて本当にいるんだなって。」


「誰が物好きだ…って、この森そんなに危険なの?」


「……もしかして、知らないの?

 ここ世界樹の森って名前で【世界一の魔境《まきょう》】って言われてるんだけど…」


 え、なに?【世界一の魔境】?そんなやばい場所なのか?


 たしかに動物はめちゃくちゃ強かったけど、【世界一の魔境】って言うほどか?


「でも、ここにいると魔力がいっぱい集まってくるよ?」


「そう、それがここを【世界一の魔境】と呼ばれるほどの場所になった理由。

 ここは魔力が満たされすぎて異常な発達をした動物や植物、鉱物がたくさんいるのよ。」


「ふーん、でもそういうのってなんかの素材に使えるんじゃね?」


 魔力で異常な発達をした鉱石とか使ったら、最強の武器とか作れそうじゃん!


「たしかに素材として【最高級】であることは否定しない…ただ、使えるならね。」


「ん?どう言うこと?」


「だから、素材として使えないのよ。

 例えば今、私たちが使っているこの森の木から作った机や椅子、これ普通は作れないから。」


「いやいや、普通に木を机や椅子の形に削るだけじゃん。」


「それが普通はできないんだよ、気が硬すぎて。


 まあ、仮に襲ってくる動物と戦いながら何個も斧を壊して木を切って運んだとして、加工する時も硬すぎて道具は壊れるし、硬すぎて莫大な時間が掛かる。


 そうして出来上がったのが魔力の効果で腐敗しずらいだけとか、完全に元取れないでしょ。」


「たしかにコスパ悪いな。」


 にしても、この木は腐敗しずらいのか、いいこと聞いたな。


「そうそう、しかも今の技術でギリギリ加工できるのがこの木で、他の鉱石は武器や防具にするにしても溶かせないし砕くこともできないから使い道がない。


 かといって錬金術で使おうとしても、今までほとんど使われたことがないからどんな効果があるか不明だから使えない。


 そして植物、これに関しては全くといっていいほどわかってないのよ。

 この森に生えてる適当な植物を3種類持って帰ったら、その中に1つは新種があると言われてるからね。」


「……本当に人類未開の地って感じだな。

 ちなみにベリルさんや、あれを見てどう思う?」


 俺はご飯を食べ終わったルナがゴレさんと一緒に木彫り細工を作っている方を指差す。


 今回はでかいオオカミを作ろうとしているようで、かなり太い丸太をそのまま使っている超大作だ。


「うん……あんたら人間じゃないんでしょ?」


「人間だわ。(ルナはオオカミだけど)」




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 朝食(雑談)を終えた俺はあまり太くない丸太が積み重なっている場所に来ていた。


 ちなみに、ベリルはルナとゴレさんのところに行って一緒に木彫り細工を作っている。


 ベリルが初めて木にヤスリを入れた時、「はわわわわ」と言って変な顔をしていたのはちょっと笑った。


 ……まあ、そんなことは置いといて、俺があまり太くない丸太が積み重なっている場所に来た理由だが〈斧スキル〉のレベル上げだ。


 最近判明したことだが、一度切った木をもう一回斧で切っても少し経験値は少なくなるが、十分な経験値をもらえるのだ。


 ちなみに、なんでこんな訓練じみたことをしているのかと言うと、俺がベリルの『宝探し』について行く気満々だからだ。


 ここより出てくる動物は弱いらしいが、俺は本来いるはずのないドラゴンに遭遇したことがあるからな、【備えあれば憂なし】ってやつだ。


 新しい攻撃スキルを覚える程度にはレベルを上げておきたいな。


 まあ、出発予定まであと2週間以上はあるからな、のんびりやっていこう。


 そんなことを考えながら、俺は斧を振りかぶって降ろす。


 皿などの小道具に使えるような大きさに切って、そのいくつかを〈アイテムボックス〉の重量制限20kgオーバーくらいまで入れて、ついでに〈アイテムボックス〉のスキルレベルも上げる。


 正直めちゃくちゃ体が辛いが、〈アイテムボックス〉のレベルは上げておいてそんなはないだろ。



 そうして、2週間ぐらい同じことを繰り返していると畑の作物が収穫できるようになっていた。


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作者 世界樹の森の素材…まさに宝の持ち腐れって感じだな。

女神 まあ、〈錬金術〉のスキルがあったら一応素材としては使えるんですけどね。

作者 ……ちなみにどのくらいレベルが上がったら?

女神 まあ、いつかはできるんじゃないんですか?

作者 適当かよ

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